2025年3月11日 | コラム
2024年12月6日にミポリンこと女優の中山美穂さんが亡くなられました。世代的に悲しいニュースでした。死因は入浴中に起きた不慮の事故によるもので詳細は報道されていませんが、ヒートショックによるものではないかという話がありました。
ヒートショックが死因なのか本当のところは分かりませんが、中山美穂さんは享年54歳ということで、もっと高齢の人がなるイメージでびっくりされた方が多いのではないでしょうか?
少し古いデータですが、東京都健康長寿医療センター研究所によると2011年の1年間で、約17,000人がヒートショックに関連した入浴中の急死をしていて、これは交通事故による死亡者の3倍を超えるそうです。
そのうち高齢者が約14,000人を占めているようなので、やはり高齢者に起こりやすいのは間違いありません。しかし3,000人、つまり、約18%は高齢者以外になるので高齢者以外も注意するに越したことはありません。
ヒートショックはお風呂やトイレで起きやすく、検索するとたくさんのサイトでヒートショックを起こさないための入浴時の注意点が紹介されていますが、ヒートショックのリスクを防ぐために住まいの環境を整えることも大切です。
この記事では、入浴時に起こるヒートショックに関して、ヒートショックが起こりやすい浴室環境の特徴やリフォーム方法などを解説していきます。安心して入浴できる住まいを実現するために、参考にしてください。
ヒートショックとは、暖かい部屋から寒い部屋への移動などによる急激な温度変化によって血圧が上がったり下がったり大きく変動することで、心臓や血管に大きな負担がかかって起こる健康被害のことです。
失神や心筋梗塞、不整脈、脳卒中、脳梗塞などを引き起こし、急死に至る危険があります。
たとえば冬場に、「あ~寒い、寒い・・・」と震えながら脱衣所で服を脱いだり、浴室に入ったことがあるという方は結構多くいるのではないでしょうか?実はこれは危険です。
暖房で温められたリビングから寒い脱衣所に移動すると血管が収縮して血圧が上昇します。その状態で冷えた浴室に入ることで、さらに血圧が上昇します。血圧が上昇したところで温かい湯船に浸かると、今度は血圧が急激に下がります。
このように急激に血圧が上下すると、身体に大きな負担がかかってヒートショックが起こるリスクが高まることになります。専門的なことが分からなくても、なんとなくイメージできますよね?
もちろん、すべての住宅の脱衣所や浴室でヒートショックが起こりやすいというわけではありません。ヒートショックが発生しやすい浴室環境は次のとおりです。一つだけではなく、複数の環境が組み合わさることもあります。
築年数が古い住宅では、壁・天井・床に断熱材がほとんど入っていなかったり、使われている断熱材の性能が低かったり、気密性が低く隙間風が入りやすくなります。そのため、室内でも温度差が生じやすくなり、特に脱衣所や浴室が寒く、入浴前の温度差が大きくなります。
窓は家の中でもっとも熱の出入りが多い部分です。特に、浴室に大きな窓があると開放感がありますが、その分外気の影響を受けやすくなります。脱衣所や浴室の窓の断熱性能が低い場合、冬は暖気が逃げだし、冷気が侵入することで冷え込みが厳しくなります。
浴室がユニットバスではなく在来工法の場合、断熱材が不十分だったり、床・壁・天井がタイル張りなど冷えやすかったり、気密性が低いことから冷え込みやすく、冬場の温度変化が大きくなりがちです。タイル張り場合、特に、足元から体温が奪われて冷えてしまいます。
リビングや長く過ごす居室には暖房設備をつけても、脱衣所や浴室に暖房設備がないと部屋間の温度差が大きくなります。暖房がないと、暖かい部屋から寒い脱衣所に移動して服を脱ぐと体が冷えたり、温かい浴室から寒い脱衣所に移動すると急激に体が冷えてしまいます。
ヒートショックのリスクを軽減するためには、住宅内の温度差をできるだけ小さくすることが重要です。そのため、温度差を小さくすることはもちろんですが、ヒートショック対策としてどのようにリフォームを考えれば良いのかご説明します。
ヒートショックが起こりやすい浴室環境で書いたとおり、築年数が古い住宅や窓がある脱衣所や浴室、在来工法の浴室は断熱性能が低いため、冬場に住宅内の温度差が大きくなります。そのため、温度差をなくす、できるだけ小さくするためには断熱性能を高める必要があります。
つまり、「外の冷気が室内に入りにくくすること」「室内の暖気が外に逃げにくくすること」を同時に実現し、室内の温度を安定させて一定に保つようにします。
ややもすると断熱性能を高めることだけに目が行きがちですが、ヒートショック対策としては入浴中の事故のリスクを低くし、安全に入浴できる環境を整えることも大切になります。
急激な血圧の変化によってめまいや意識障害が起こると、転倒や溺水のリスクが高まります。そのため、特に高齢者がいる場合は、手すりの設置や滑りにくい床材に変更することで、安全を確保することも検討すると良いです。
では、具体的に、「断熱性能を高めるリフォーム」、「安全を確保するリフォーム」にはどのようなものがあるか説明していきます。
断熱材を追加して断熱性を高めます。断熱材は熱が伝わるのを遅くするため、浴室や脱衣所の壁・天井・床に断熱材を施工することで外気の影響を受けにくく、室内の暖気が外に逃げにくくなります。断熱材を追加することで、浴室や脱衣所の温度を一定に保ちやすくなり、入浴前後と入浴時の温度差を減らすことができます。
熱の出入りが激しい窓の断熱性を高めます。二重窓にすることで内窓と外窓の間に、ペアガラス(複層ガラス)にすることでガラスとガラスの間に空気層が生まれ、外気の侵入を防ぎ、室内の暖気を外に逃げにくくするができます。また、アルミサッシを気密性・断熱性に優れた樹脂サッシに交換するのも効果的です。窓の断熱性を高めることで、浴室や脱衣所の温度を一定に保つことができます。
ユニットバスで断熱性を高めます。ユニットバスは浴槽・壁・床・天井のすべてに断熱処理が施されているため、浴室内の暖気が外に逃げにくく、またお湯が冷めにくくなります。また、壁・床・天井が一体成型されているため隙間がなく気密性が高いので、快適な状態を長く維持できます。浴室暖房乾燥機との相性が良く、短時間で効率的に浴室全体を温められます。
暖房設備を設置して、他の部屋と脱衣所や浴室の温度差をなくします。脱衣所には壁掛け式暖房機やセラミックヒーター、オイルヒーター、床暖房などの暖房設備を設置したり、浴室には浴室暖房乾燥機を設置すると効果的です。浴室暖房乾燥機は浴室乾燥機能を併用することで、カビの発生を防いだり、冬場の衣類乾燥にも役立てられます。
湯船から立ち上がるときに血圧低下による立ちくらみやふらつきが起こり、転倒するリスクを軽減するため、手すりを設置すると安全です。また、濡れた床は滑りやすく転倒の危険があるため、滑りにくい加工がされた床材に変更するのも有効です。その他、急激な温度変化を防ぐために、サーモスタット機能付きのシャワーや設定温度を一定に保てる給湯器を導入すると、より安全に入浴できます。
必要なリフォーム内容は現在お住いの住宅の浴室環境によって変わります。現在の浴室環境と問題に感じていることから、リフォーム内容を検討してください。
いざリフォームの検討を始めると、「リフォームにどのくらいの費用がかかるのか?」が気になりますよね。住宅の詳細が分からないと正確な費用は分かりませんので、ここではざっくりリフォーム費用の相場観と活用できる補助金制度を説明します。
ざっくりの費用相場感は次のとおりです。参考程度に見てください。
浴室の壁・床・天井の断熱工事 | 5000円~3万円/㎡(種類による) |
二重窓の設置 | 1箇所あたり5~15万円(窓の大きさによる) |
(在来工法の浴室から)ユニットバスへの交換 | 50万円~200万円(製品やサイズによる) |
脱衣所の暖房設備設置 | 5万~20万円 |
浴室暖房乾燥機の設置 | 10~30万円 |
手すりの設置 | 2~5万円 |
滑りにくい床材への変更 | 5万円~(床材の種類と広さによる) |
ヒートショック対策のリフォームは、国や自治体の補助金を活用できる場合があります。
■住宅省エネ2025キャンペーン(国の補助金)
子育てグリーン住宅支援事業で断熱改修が対象になっています。
先進的窓リノベ事業で断熱窓改修が対象になっています。断熱窓への改修は両事業で対象になっていますが、条件によって先進的窓リノベ事業の方が高い補助を受けられる可能性があります。
申請条件や補助内容などの詳細はここでは説明しません。興味がある場合は、以下のURLからご確認ください。
https://jutaku-shoene2025.mlit.go.jp
■各自治体が実施する補助金
お住いの自治体で断熱リフォームで使える補助金がある場合があります。以下のURLから検索してみてください。
https://www.j-reform.com/reform-support
■補助金を活用する際の注意点
補助金には申請期間があり、予算がなくなると受付終了となります。補助金を活用することでリフォーム費用を軽減できるため、気になる補助金があれば早めに業者に相談して申請をするようにしましょう。
ヒートショックは高齢者が多いものの、家の中で温度差が大きいと高齢者でなくても起こり得るものですが、浴室まわりのリフォームを行うことでヒートショックのリスクを大幅に軽減し、安心して入浴できる環境を整えることが可能です。
「自宅の浴室が寒くてヒートショックが心配」「脱衣所と浴室の温度差が大きいと感じる」「家族の安全のために早めに対策したい」といった不安がある方は、一度リフォームを検討してみることをおススメします。
国や自治体の補助金を活用できれば、コストを抑えてリフォームを実施することも可能です。自分も補助金を活用できるのか知りたい方は、専門知識がないと判断できないと思いますので、業者に早めに相談してください(当社も住宅省エネ2025キャンペーンの登録事業者になっていますのでお気軽にお問い合わせください)。
寒い冬がやってくる前に断熱リフォームなどで対策をすることで、安心して入浴できる浴室環境を実現しませんか?
お見積りは無料ですので、気になる方はお気軽にお問い合わせください。