2025年4月18日 | コラム
横浜市港南区の三共住販株式会社です。
先日、給湯器交換の見積り依頼をいただき、現地調査に伺いました。
既設の給湯器は屋外壁掛けタイプで、設置可能な場所は同じ場所だけでした。しかし、そこは向かって左に浴室の窓、向かって右に玄関ドアがありました。給湯器には設置基準がありますが、建物開口部とは側方150mm以上離して設置しなければなりません。
設置基準を満たしていないとメーカー保証が効かない場合があるため、確実に設置基準を満たすために、少し価格が高くなってしまいますがスリムタイプの機種で提案しました。
提案から1ヶ月近く経過しますが受注できておらず、おそらく他社に依頼されたのではないかと思います。どのような給湯器に交換することになったか(したか)は分かりませんが、標準タイプの機種であれば設置基準を満たせていない可能性があります。
今回に限った話ではなく、実は、明らかに設置基準を満たしていない給湯器を見かけることが、ちょこちょこあります。おそらくお客さま自身は設置基準を満たしていないことを知らず、業者の提案どおりに設置してもらっただけ、ということが多いのではないかと思います。
給湯器は、ただ取り付ければいいというものではありません。守るべき基準があります。
この機会に、設置基準の内容や基準を満たさないことによるリスクをお伝えしたいと思います。
まず、具体的な設置基準です。細かな数字は業者が知っていれば良いものですので覚える必要はありません。知っておいて欲しいのは、細かく決まっているという事実です。
排気口からは高温の排気が出るため、近くに燃えやすい物があると発火の危険があります。洗濯物や木材などが熱にさらされることで、火災につながるリスクを防ぐための距離です。
給湯器本体も運転時には熱を持つため、周囲の可燃物が熱の影響で炭化・発火する危険があります。本体周囲にスペースを取ることで、周辺に熱がこもらず安全性を保つことができます。
排気ガスが窓や換気口などから室内に逆流すると、一酸化炭素中毒など健康被害の危険があります。開口部から十分な距離を取ることで、排気の逆流や滞留を防ぎ、室内の安全を守ります。なお、開口部とは、窓やドアなど可動して開口するものを指します。
つづいて、給湯器の設置基準を満たしていないことで、どのようなリスクがあるかお伝えします。
設置基準を満たしていなくても問題なく使えているように思えますが、重大なトラブルに発展するリスクがあります。
・火災の発生
排気の熱で周囲の可燃物が発火する恐れがあります。
・一酸化炭素中毒
排気ガスが窓や吸気口から屋内に逆流することで健康被害が出る可能性があります。
・近隣トラブル
排気熱や稼働音が隣家に影響することでクレームやトラブルになる可能性があります。
・メーカー保証の対象外
設置基準を守っていないと、「設置不良」とみなされて保証が受けられないことがあります。
・事故発生時の責任問題
設置基準違反が原因による事故の場合、損害賠償の対象になるケースもあります。
ニュースや公的機関の発表などで明らかになっている、実際に発生した設置不良によるトラブル事例には以下のようなものがあります。
事例1:排気が外壁に直撃し、外壁が劣化 → 火災寸前に
ある住宅では、給湯器の排気口が外壁のすぐ近くに向けて設置されており、長年にわたって排気熱が外壁材を劣化させ、焦げ跡が発生。内部まで熱が伝わって火災寸前の状態になっていたと報道されました。熱に強くない外壁材や塗装が使われていた場合、数年でも深刻な劣化につながるリスクがあります。
事例2:ベランダに排気がこもり、一酸化炭素中毒の危険
集合住宅で、狭いベランダに給湯器が設置されていた事例では、洗濯物や仕切り板などで排気の逃げ道がふさがれた状態に。その結果、排気ガスが滞留し、近くの窓や換気口から屋内に逆流。入居者が体調不良を訴え、一酸化炭素中毒の疑いで緊急搬送されたという事例あります。
事例3:隣家との距離不足で苦情・トラブルに
都市部の戸建て住宅では、隣家との距離が非常に近く、給湯器の排気が直接隣家の壁や窓に当たってしまうケースもあります。熱風による塗装の変色、騒音、排気臭などをめぐって、ご近所トラブルに発展したというケースも複数報道されています。
こうした事例はいずれも、「設置当初は特に問題なかった」ものの、時間の経過や環境の変化によってリスクが表面化したという共通点があります。だからこそ、設置時点でしっかりと基準を守ることが、長期的な安心・安全に直結します。
お客様としては、「この場所で大丈夫ですよ」と言われたら、信じてしまうのが普通です。
基準を満たさずに給湯器が設置されてしまうのは、残念ながら、基準を正しく理解していなかったり、バレなければ問題ないと考えている業者が存在するためだと思います。また、価格を少しでも抑えたいというお客様のニーズを優先するために設置してしまうこともあるかもしれません。
理由は何であれ、消防法で定められている基準を守らないのはダメです。
当社では、すべての現場でしっかりと調査を行い、設置基準を確実に満たせる給湯器をご提案しています。その結果、価格が少し高くなるスリム型の給湯器をご提案することもありますが、遵法意識もさることながら、やはりお客様の安全を最優先に考えているからです。
「安ければいい」ではなく、「長く、安心して使えること」が本当にお客様のためになると当社は考えています。
給湯器の設置基準は、普段の生活では意識しにくい「見えない部分」かもしれません。
しかし、そこを軽視してしまうと、火災や一酸化炭素中毒といった取り返しのつかないトラブルに発展したり、メーカーの保証対象外になる可能性があります。
ガス給湯器は標準使用年数が10年と長く使用する設備です。そのため、価格はもちろん大切な要素ではありますが、価格だけで選ぶのではなく、きちんとした調査・説明・施工をしてくれる業者かどうかを見極めることが、長く安全に使うための大切なポイントです。
この記事を参考に、安全安心に使えるよう給湯器を設置していただけると嬉しいです。
給湯器の設置・交換に関するお見積り・ご相談は無料です。
お気軽にお問い合わせください。