2026年1月29日 | コラム
「相続した実家に住む予定はないけど思い入れがあってすぐに売る気にならない」
「共有名義で相続して兄弟で意見が合わず実家の扱いが決まらない」
「親が長期で入院することになり、しばらくの間、誰もいない状態になっている」
「親が高齢者施設に入居したけど、家はそのままになっている」
など、「所有者はいるけれど、誰も住んでいない、つまり空き家」はいろいろな事情で生まれます。
所有者やその家族としては、
「しばらくしたら、家をどうするかちゃんと決めようと思っている」
「どうするか方向性が決まるまでは、とりあえずそのままにしておくしかない」
「親はいずれ戻るかもしれないので、そのままにしておこう」
という感じで空き家を保有し続けていて、中には、放置状態にしてしまっている方もいます。
所有者にとっては住んでいない放置状態の家程度の認識でも、近隣の方にとってはまったく違う認識になってしまうことがあります。
たとえば、
といったような問題が起きたとき、近隣の方が一番困るのは、「誰に連絡すればいいのか分からない」ということです。苦情を伝えようにも連絡先が分からないと、当然、不満が溜まります。空き家は、管理を何もしていないと、「連絡の取れない迷惑な家」という印象を持たれてしまう可能性があるので注意が必要です。
近隣の空き家でトラブルが起きて対応してもらおうと思っても、そもそも所有者が誰だか分からない場合、まず土地の所有者を調べることになると思います。法務局で登記簿を取得すれば、所有者の氏名や住所は分かります(電話番号は分かりません)。
しかし、実際には、
という事態が起きることがあります。
つまり、「所有者はいるけど連絡の取りようがない状況」が生まれる可能性があります。
その結果、近隣の方は、
苦情を誰に言えばいいか分からない
・なぜ連絡が取れない状態で放置しているのかと憤りを覚える
・仕方がないので役所に相談してみる
ということになります。
本来であれば、「越境している枝を切ってほしい」「実のなる木に鳥が集まり、フン被害がひどいので何とかしてほしい」「雑草が伸び放題で、虫が発生して困っているので刈ってほしい」といった困りごとを伝えて話し合えば済む話が、連絡が取れないために“空き家問題化”してしまうのです。
近隣の方に必要なのは、「責任をもって話を聞いてもらえる窓口」です。
空き家になっている事情はさまざまですので、必ずしも所有者本人の連絡先が必要なわけではなく、所有者でなくても何かトラブルがあったときの窓口が明らかになっていて、責任をもって話を聞いてもらえることが大切なのです。
仮に今は誰が所有しているか分からない、連絡先が分からない状態であっても、以前はご近所さんとして付き合いがあった人の親族かもしれないので、いきなり裁判をしたり、行政に訴えたいわけではないのが普通です。
トラブルを解決するために、ただ困っていることを伝えられる相手が欲しいのです。
そのために有効なのが、敷地内に設置する管理看板です。
管理看板に、
・管理している不動産会社名
・不動産会社の連絡先(電話番号)
が明記されていれば、そこに連絡することができます。また、連絡先が分かることだけでなく、この空き家は管理されている(放置されていない)という安心感を与えることができます。
さらに、苦情の一次窓口を不動産会社が受けることで、
という効果も期待できます。
管理看板は、単に連絡先を明らかにするだけでなく、「この空き家は放置していない」というメッセージであり、未然に近隣とのトラブルを防ぐための、簡単で現実的にできる対策なのです。
空き家の管理状態は、将来その不動産を売却するときにも影響する可能性があります。
特に問題になりやすいのが、境界確定測量の際の隣地所有者の立会いです。
土地を売却する場合、隣地との境界を確定するために、原則として隣地所有者に現地に立ち会ってもらい、境界について確認・署名をしてもらう必要があります。
このとき、隣地の方がその空き家の所有者に対してどんな印象を持っているかで、協力的かどうかが変わってきます。
もし隣地の方が、放置され続けている状況に対して、連絡先も分からず不満を抱え続けていたところに、「家を売却するので測量の立会いをお願いします」と言われたらどう思うでしょうか?「自分のことしか考えない都合の良い人間には協力したくない」と思われても仕方がありません。
親世代同士は顔見知りだったとしても、相続や世代交代によって、立ち会うのはまったく面識のない子ども世代になるケースも多くありますので、
という印象があれば、面識がなくても「空き家を放置していた人」という悪い印象をもたれずに、協力的な対応をしてもらえる可能性が高くなります。
空き家をどう扱ってきたかは、建物だけでなく、近隣の方との人間関係にも影響していくのです。見落とされがちなポイントですが、とても重要なことです。
空き家はきちんと管理した方がいいと頭では分かっていても、すぐに不動産会社へ管理を委託する人ばかりではありません。
たとえば、
・毎月の管理費というランニングコストをかけたくない
・長期入院や施設入居で空き家になったが、戻る可能性もあり、しばらく様子をみたい
・兄弟姉妹との共有名義なので、自分一人の判断で管理契約を結べない
・遠方に住んでいて管理は必要と感じるが、毎月費用を払って委託するほどのことか判断に悩む
このように、空き家の管理が必要なことは理解していても、
・コストの問題
・家族間・共有者間の合意の問題
・将来の方針が固まっていないため一旦様子見
といった理由から、適切な管理ができない状態になるケースは少なくありません。
その結果、本当はトラブルを避けたいと思っているにもかかわらず、管理されていない状態が続き、近隣から見ると“迷惑な放置された空き家”に見えてしまうのです。
ここまで見てきたとおり、空き家を放置すると近隣トラブルや将来の売却時に影響しかねません。
一方で、管理委託には費用や合意形成といったハードルがあり、「すぐに契約するのは難しい」という方も多いのが現実です。
そこで一つの選択肢になるのが、管理委託まではせず、まずは“管理されている状態”だけを作るという考え方です。
具体的には、敷地内に管理看板を設置し、
・管理している不動産会社名
・連絡先の電話番号
を明示します。
これにより、
という効果が得られます。
管理委託をするから管理看板が設置されると思うかもしれませんが、管理看板の設置だけであれば、管理委託をせず、毎月の管理費といったランニングコストをかけずに対応可能な不動産会社もあります。
実際に、
・越境している枝の伐採
・雑草の除去
・鳥害や害虫への対応
・近隣からの苦情対応
といった作業や対応が必要になった場合に、その都度、実費ベースで費用を負担する形にすれば、「何も起きなければ費用はかからない」ということになります。
これが、毎月のランニングコストをかけずにできる空き家の最低限の管理対策です。
空き家を放置するリスクは、建物の老朽化や防犯面だけではありません。
・近隣から「連絡先の分からない迷惑な家」と思われる
・将来売却するとき、境界確定などで協力を得にくくなる
といった、人間関係や手続き面での見えないコストが積み重なっていきます。
一方で、
・毎月の管理費をかけたくない
・共有名義で勝手に契約できない
・まだ方針が決まっておらず様子を見たい
という事情から、すぐに管理委託に踏み切れない方が多いのも現実です。
そのような場合は、
・管理看板を設置し
・連絡窓口を明確にし
・何かあったときだけ実費で対応する
という形で、「放置されていない状態」だけを先につくっておくことです。それだけでも、空き家をめぐる多くの問題は、未然に防ぐことができます。
当社では、空き家を所有していて、なんらかの事情により、売却・解体・賃貸などが難しい場合、管理看板の設置を行っています。看板を設置しつつ、その間に売却・リフォーム・賃貸など将来的な対応を検討していただくのも良いと思います。空き家の管理にお困りの方は、一度ご相談ください。
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