2025年12月25日 | コラム
「実家を相続したけれど、今のところ使う予定がない」
「たまに様子は見に行っているから、うちは大丈夫だろう」
このように考えて、空き家をそのままにしていませんか?今、そんな「まだ具体的な実害が出ていない空き家」を所有している方々を取り巻く環境が、変化しています。
これまで空き家問題といえば、倒壊寸前のボロボロの家、いわゆる「特定空家」を主な対象として考えられていました。しかし、法改正や自治体の条例強化により、その基準は厳しくなっているのが現状です。「まだ綺麗だから」「とりあえず今は困っていないから」という理由で先送りにできる時代は、終わりつつあります。
本記事では、空き家対策が強化される中で、「今後、どのような人が空き家問題で困ることになるのか」、そして、空き家問題に伴うリスクを回避するために知っておくべきことを解説します。
特に、当社がある「横浜市」の現状を例に挙げながら、問題が表面化してからでは遅い理由や今から取れる戦略的な選択肢について見ていきましょう。
この記事を読むことで以下のことが分かります。
以前の空き家対策は、いわば「本当に危ない家」だけを対象にしたものでした。しかし、2023年12月に施行された改正法(空家等対策特別措置法)によって、ルールが厳格化されました。
現在、日本の空き家数は、2023年住宅・土地統計調査によると過去最多の約900万戸、総住宅数の約13.8%に達しています。この20年で約1.5倍に増加していますが、今後も「団塊の世代」が相続のタイミングを迎えることで、さらに加速すると予想されています。
放置された空き家は、火災や倒壊のリスクだけでなく、地域の防犯性や景観を著しく損ないます。国はこの問題を「個人の自由」ではなく「地域の存続に関わる問題」と捉え、所有者の責任をより明確にする方向へ舵を切ったのです。
以前は、倒壊寸前のボロボロな状態(特定空家)にならない限り、行政が強く介入することはありませんでした。しかし、2023年の法改正で「今はまだ大丈夫だが、このまま放置すれば将来的に危険になる」と判断された予備軍の物件が「管理不全空家」として区分されるようになりました。
こうした、これまで「まだ綺麗だから大丈夫」と思われていたレベルの空き家に対しても、行政が指導や勧告を行えるようになったのです。
さらに、自治体からの改善勧告に従わない場合、これまでは受けられていた「住宅用地の特例(固定資産税の優遇)」が解除されます。その結果、土地の固定資産税が実質的に最大6倍に跳ね上がるという金銭面での重いペナルティが課される仕組みが整いました。
「いつか考えればいい」と放置していても、税金や維持コストだけが膨らんでいく。まさに、「何もしないこと」が最大のリスクになる時代が到来したのです。
横浜市の空き家率は約9%前後と、全国平均(約14%)に比べれば低く抑えられています。しかし、総務省の2023年住宅・土地統計調査によると、利用目的のない一戸建ての空き家は約1.9万戸になっています。これは、政令指定都市の中でも上位にランクインする数字です。
そして、近年では年間40~50件ペースで特定空家を認定しており、2024年度末まで累計447件となっています。認定された特定空家のうち、半数以上が助言・指導により改善されたものの、登記がない等所有者が不明の空き家への対応は課題となっています。
これは言い換えれば、「相続登記を放置し、所有者が曖昧なまま年月が経つほど、行政も手助けが難しくなり、解決が困難になる」というリスクを示唆しています。
横浜市では、空き家問題に対して「問題が深刻化してから対応する」のではなく、早い段階で把握し、所有者に働きかけることを重視した対策が進められています。
その象徴的な取り組みの一つが、空き家に関する相談体制の強化です。
横浜市では、令和元年に「空家の総合案内窓口」を開設して年間200件程度、空き家所有者からの相談に対応していました。
しかし、複合的な問題への対応や継続的な支援が十分にできていないという課題に対して、相談体制を強化するため、今年度(令和7年度)に「ワンストップ伴走支援型空家の相談窓口」を開設するべく、動き出しています(令和8年1月以降に開設予定)。
これは、空家や今後空家化が見込まれる住宅の所有者等を対象に、ワンストップで最適な処分方法や活用プランの提案、業者等とのマッチング等、相談者の悩みを解決まで伴走支援する相談窓口となります。
さらに、空き家所有者だけでなく、空き家の近隣住民からの相談窓口として、令和7年8月4日から令和7年12月26日までの間、「空家相談受付コールセンター」を開設して、空き家情報の正確な把握をしようとしています。
法律や条例は空き家対策の厳格化に向かっていますが、一方で、行政としてはただ締め付けるのではなく、空き家の現状を出来る限り正確に把握し、また、空き家を所有していてどうすれば良いか悩んでいる人に対して、積極的にサポートをしていこうとしています。
それでは、現在の法律(空家法)や市の条例にもとづいて、横浜市の空き家対策がどのような対応フローになっているか、確認しておきましょう。
空き家対策は突然、罰則や強制措置が取られる仕組みではありません。
行政の対応は、まずは「実態調査(現場調査・所有者調査)」から始まります。職員や委託業者が現地を確認し、登記簿で所有者を特定します。その後、まずは「このまま放置すると問題になる可能性があります。適切な管理をお願いします。」という趣旨の「助言・指導」の文書で改善を促します。
この段階ではまだペナルティはありません。
これまでは放置してもなかなか次の段階へ進みませんでしたが、現在は「放置すれば将来危険になる(管理不全空家)」と認定されるスピードが上がっています。
改善勧告が出されると、前述の通り固定資産税の優遇措置が解除されます。この勧告は、毎年の固定資産税の賦課期日(1月1日)よりも前に行われるため、ある日突然、次年度の納税通知書を見て驚くことになりかねません。
さらに放置し、倒壊の危険などがあると判断され「特定空家」になると、行政代執行(強制解体・費用は所有者請求)という最悪のシナリオが現実味を帯びてきます。
「指導」→「勧告」→「命令」と進むにつれ、所有者側の自由度は極端に低くなります。「自分のペースで対応を考えよう」と思っても、行政が定めた期限に追われることになり、精神的な負担は計り知れません。
行政から最初の「助言・指導」の通知が届いたときが、「有利な条件で出口を探せる最後のチャンス」です。勧告を受けて税金が上がる前、あるいは近隣住民との関係が完全にこじれる前に動くことが、結果として最もコストを抑える方法になります。
空き家を放置している人には、「今は特に困っていないし、何か起きたらその時に考えればいい」と考えている人が多いと思います。しかし、空き家問題では、「何かが起きたとき」に動き出すのでは遅いと言わざるをえません。
前述の通り、行政から「勧告」を受けると、固定資産税の優遇措置がなくなります。しかし、本当の恐ろしさは税金だけではありません。
一度「問題物件」として行政のリストに載ってしまうと、売却しようにも買い手から敬遠されたり、買い叩かれたりする原因になります。行政からの督促状が届く状況で、冷静に有利な売却戦略を立てることは極めて困難です。
問題が起きてからの対応は、「行政との書面のやり取り」「現地確認や立ち会い」「修繕・解体・管理方法の検討」など、想像以上に多くの時間と労力を要します。
特に相続した空き家の場合は、「仕事や家庭と並行して対応する必要がある」「遠方に住んでいて、現地に行くのが大変」「共有名義で、関係者の同意が必要」などの事情が重なり、精神的な負担が一気に大きくなるケースも少なくありません。
空き家の問題は、行政対応だけで終わるとは限りません。「空き家」が近隣住民に与えるストレスは、所有者が想像している以上に大きいため、近隣トラブルに発展することもあります。
「庭木が伸びてうちの壁を傷つけている」「害虫が発生した」「不審者が入り込んでいるのではないか」など、これまでは我慢してくれていた近隣の方も、行政が動き出したことを知ると不満を噴出させることがあります。一度こじれた人間関係は、売却時の境界確認や工事の協力など、スムーズな解決を妨げる大きな壁となります。
空き家問題で「次に困る人」には、ある共通点があります。それは、悪意があるわけではなく、むしろ真面目に「いつかはどうにかしなければ」と考えつつ、「今はまだ決断しなくても大丈夫」という状況に置かれている人です。
ここでは、今は困っていなくても、将来的にリスクが発生しやすい人の特徴を整理します。
最も多いのがこのケースです。
「親が亡くなってから、とりあえず片付けもせずに数年経ってしまった」というケースです。実家には思い出も多く、手放すことに心理的な抵抗があるかもしれません。
しかし、空き家は住んでいないと驚くほどのスピードで傷みます。通気がないことでカビが発生し、配管が錆び、庭木は好き放題に成長します。「まだ使える」と思っていた実家が、気づかないうちに「修繕が困難な状態」へと変わってしまうのです。
兄弟姉妹など、複数人で家を共有している場合は特に注意が必要です。
「みんなで話し合ってから」と思っているうちに、共有者の誰かが認知症を発症したり、さらなる相続が発生したりすると、売却や解体のための同意を得ることが非常に困難になります。「関係者全員が健康で、合意ができる状態」は永遠ではありません。
判断を先送りにした結果、法的に身動きが取れなくならないよう注意が必要です。
「築年数が古いから」「立地が悪いから」などの理由で売れないと思って、最初から諦めて放置しているケースです。
横浜市でも古い住宅街では、こうした条件の物件は珍しくありません。しかし、不動産会社に相談すれば、最適な売却方法や売却以外の土地活用の方法など、選択肢が見つかることもあります。
「売れない」という自己判断での放置は、行政からのペナルティを招く可能性を高めるだけです。そしてなにより、問題なのは思い込みによって検討そのものが行われないことです。
ここまで挙げたケースに共通しているのは、
・目立ったトラブルが起きていない
・まだ急ぐ必要はなさそう
・そのうち考えればいい
という状況です。
しかし、行政の「管理不全空家」には、まさにこうした「静かに放置されている空き家」が徐々に状態が悪化して認定されていくものです。そのため、「今は困っていない」という考えこそが、実は最も大きなリスクと言えるのです。
空き家対策において「早い段階での対処」が重要なのは、単にトラブルを防ぐためだけではありません。「建物の状態」と「土地の出し方」を冷静に天秤にかけ、手残りの多い選択ができるからです。
問題が表面化する前だからこそ検討できる、戦略的な出口の見つけ方を整理しましょう。
「築古だから売れない」と決めつける必要はありませんが、一方で建物に執着しすぎるのも禁物です。
内装が比較的きれい、あるいはDIY需要がある物件なら、そのまま売却することで解体費用を浮かせることができます。ただし、これには「まだ住める」という清潔感と、行政からの指摘を受けていないという「安心感」が不可欠です。
建物が古すぎて買い手がつかない場合でも、解体して更地にすることで、注文住宅を建てたい層や駐車場需要など、ターゲットが一気に広がります。古い街並みで道路が狭いエリアでは、「更地になっている」こと自体が大きな付加価値になることもあります。
時間をかけてでも高く売りたいのか、それともコストを抑えて早く手放したいのかによって、戦略は変わります。
相場に近い価格での売却を目指せますが、内覧対応や契約不適合責任(売った後の不具合への責任)のリスクがあります。余裕がある時期なら、まずは仲介で様子を見る戦略が取れます。
「仲介で数ヶ月待っても売れなかった」「解体費用を捻出できない」という場合、不動産会社や買取業者に直接買取ってもらう方法があります。価格は仲介より下がることが一般的ですが、契約不適合責任が免除されたり、短期間で現金化できるメリットがあります。
売却だけがゴールではありません。解体して更地にした後、あえて売らずに駐車場として運用し、固定資産税分を稼ぎながら「将来の地価上昇」や「適切な売り時」を待つというのも、余裕があるからこそ選べる戦略です。
重要なのは、「建物付き」「更地」「買取」「収益化」という複数のカードをテーブルに並べ、比較検討することです。
行政からの改善勧告が出て期限に追われるようになると、こうした比較検討をする余裕はなくなり、最悪の場合は「高い解体費を払った直後に、焦って安く売る」といった二重の損失を招きかねません。
「自分の家はいくらで売れるのか」「解体費用はどのくらいか」「駐車場としての需要はあるか」。
「まだ困っていない今」こそ、これら複数の出口から最適なものを選び取る、最大のチャンスなのです。
「空き家対策強化」の流れは、もはや一時的なものではなく、国と自治体が一体となって進める重要な施策となっています。
前述のとおり、横浜市では「ワンストップ伴走型相談窓口」の準備や、近隣住民からの通報を受け付ける「コールセンター」の開設など、空き家が放置されることを未然に防ぐこと、空き家の実態を正確に把握することを、今まで以上に具体的な動きとして行っています。
しかし、こうした行政の動きは、決して所有者を追い詰めるためだけのものではありません。むしろ、「手遅れになる(資産価値がマイナスになる)前に、決断を促すためのアラート」だと捉えるべきです。
特に、「実家を相続してから数年以上、手付かずになっている」「親族間で共有名義のままになっている」方は、「今は困っていないから」という理由で先延ばしにせず、先延ばしのリスクを理解するとともに、物件の価値を知ることから始めてください。
「建物付きで売れるのか」「解体して更地にするのが得策か」「不動産会社に買い取ってもらうか」といった選択肢を冷静に比較検討できるのは、心身ともに余裕がある「今」です。
「あのとき動いておけばよかった」と後悔する前に、まずは専門家へ相談しましょう。
当社では、お客様のご希望を伺ったうえで、これまでの経験を活かした売却戦略や収益物件化のご提案をさせていただきます。ご相談は無料ですので、空き家を所有していてお困りでしたら、是非一度ご相談ください。