知らないでは済まされない通行地役権が絡む土地売却のポイント

2025年10月3日 |  コラム

土地の売却を考えたとき、価格や売却のしやすさに直結する要素の1つが「隣地との関係」です。

境界線や越境物のように目に見える問題だけでなく、見過ごされがちなのが「通行地役権」です。通行地役権が関わる土地は、通行される側(承役地)でも通行する側(要役地)でも、権利内容が不明確なままだとトラブルや価格下落につながるリスクがあります。

「そもそも通行地役権って何?」「相続した土地で設定されているか分からない」

そんな不安や疑問をもつ方のために、この記事では、通行地役権の基礎知識から、なぜそれが売却の足かせになるのか、そしてトラブルを未然に防ぎ、できる限り良い条件で売却するための具体的な対策までお伝えします。この記事を読めば、安心して売却を進めることができるでしょう。

この記事を読むと次のことがわかります。

  • 通行地役権とは何か?囲繞地通行権との違い
  • 通行地役権がある土地が売却しにくい理由
  • 通行地役権がトラブルになりやすい背景
  • 通行地役権が設定されているか確認する方法 ・トラブルを避けつつ、できる限り高く売却するための解決策

通行地役権とは?

通行地役権の基本的な意味

通行地役権とは、「自分の土地の利便性を高めるために、他人の土地を通行できる権利」です。

例えば、自分の土地が公道に面しているが、駅に行くには隣の土地を通った方が近道だとします。このとき隣地の所有者と話し合い、隣地を「通行できる権利」として設定するのが通行地役権です。

この権利は、当事者同士の合意により成立するのが大きな特徴です。権利を持つ側は、取り決められた範囲や方法に従って通行が認められます。一方、通行される側の土地は、その部分を自由に利用できなくなり、土地の価値に影響が出てしまうこともあります。

囲繞地通行権との違い

通行地役権とよく似ていて混同されやすいのが、囲繞地(いにょうち)通行権です。どちらも「他人の土地を通行できる権利」ですが、決定的な違いは成立根拠にあります。

囲繞地通行権:袋地(公道に接していない土地)の所有者が公道に出るために、法律によって当然に認められる権利。合意や登記は不要。ただし通行範囲や方法は必要最小限に限られる。

通行地役権:利便性向上のために、当事者間の合意によって発生する権利。合意内容に応じて通行範囲や方法を柔軟に設定できる。

売却時に問題となりやすいのは、通行地役権です。

自分の土地が通行される側の場合は利用や建築の制限が生じ、通行する側の場合は契約や登記で明確になっていなければ、買主は「将来も安心して通行できるのか」と不安を抱きます。
いずれの場合も、権利関係があいまいだと売却の妨げになってしまいます。

通行地役権付きの土地が売却しにくい理由

買主にとってどのようなデメリットが生じる可能性があるため、通行地役権付きの土地の売却が難しくなるのか3つ理由を挙げます。

1.土地の利用や建築に制限がある

通行地役権が設定されている土地の場合、その部分を自由に使うことができません。通路として取り決めた場所の通行を妨げてはいけないため、例えば物置を置けなかったり、新しく駐車場をつくれなかったり、将来の増改築で建築面積が確保できなくなることがあります。土地の形状や接道状況によっては、再建築不可に近い扱いを受けるケースもあるため注意が必要です。

一方で、自分が他人の土地を通行する側の場合でも問題がないとは言い切れません。権利の内容が契約や登記で明確になっていなければ、「将来も本当に通行できるのか」という不安が買主に生じます。慣習として通行できているだけでは、隣地所有者から通行を拒否されるリスクがあるため、売却時にマイナス要因となり得ます。

2.金融機関の評価が下がる

土地の購入では、ほとんどの買主は住宅ローンを利用しますが、通行地役権付きの土地は金融機関からの評価が下がる可能性があります。

通行される側の場合は通行部分を自由に使えないため、土地の利用価値が低く評価されます。また、通行地役権の内容が不明確だったり登記がされていなかったりすると、将来的にトラブルが発生する可能性があると見なされ、担保価値がさらに下がってしまいます。

一方、通行する側の場合も通行地役権の内容が契約や登記で明確になっていなければ、金融機関は「本当にその土地を通行できるのか」と疑問を持ちます。権利の裏付けが弱ければ担保価値は低く評価され、融資額が減らされることもあります。

このようにどちらの立場でも、通行地役権が不明確な土地は金融機関から慎重に扱われ、結果として買主のローンが通りにくくなり、売却のハードルが高くなってしまうのです。

3.買主が将来的なトラブルを避けたい

買主にとって最大の不安は、購入後に予期せぬトラブルに巻き込まれることです。特に、通行地役権の内容が契約や登記で明確になっていない場合、隣地所有者との間で将来的に争いになるリスクが高まります。

通行される側の場合、たとえば、「歩行のみと思っていたのに車も通ると主張され、騒音やプライバシーの問題が発生する。」「通行の時間帯を巡って対立し、隣人関係が悪化する。」といったトラブルが考えられます。

一方、通行する側の場合は、たとえば「駐車場に出入りするために隣地を通行する」ケースで、登記や契約の裏付けがなければ、隣地所有者から「通行を認めない」と言われる可能性があります。

こうした不安を避けたい買主は、権利関係が不明確な土地を選びにくくなります。契約内容が書面化され登記もされていれば、買主はその条件を理解した上で購入できるため、トラブルの懸念は大幅に減ります。売却前に権利関係を整理しておくことが、安心して取引を進めるための大前提となるのです。

通行地役権はどこで確認できる?売却前の事前調査

通行地役権は、登記がされていないケースも少なくありません。

売却時にトラブルを避けるために、売主自身が事前にしっかりと調査し、その内容を正確に把握しておくことが不可欠です。ここでは、通行される側と通行する側それぞれの立場で、確認すべき具体的な方法を3つご紹介します。

登記簿(登記事項証明書)の確認

通行地役権が正式に設定されている場合、登記簿(登記事項証明書)に記録されています。最寄りの法務局で登記事項証明書を取得して確認しましょう。

乙区欄に、通行される側の場合は「地役権を負担する」、通行する側の場合は「地役権を取得している」旨の記載があるはずです。両方を照らし合わせることで、どの土地にどのような権利が設定されているかを確認できます。

ただし、実際には口約束や昔からの慣習だけで通行しているケースも多く、その場合は登記されていません。登記簿に記載がないからといって、必ずしも通行地役権が存在しないとは言えない点には注意が必要です。

地役権図面と測量図の確認

登記されている場合には、地役権図面が添付されていることがあります。地役権図面には、通行部分の位置や範囲が明示されており、通行される側の場合は「どこを通られるのか」、通行する側の場合は「どこを通れるのか」を把握する手がかりになります。文章だけでは分かりにくい内容を可視化して確認できるため、買主や金融機関にとっても大きな安心材料となります。

もし地役権図面が添付されていない場合でも、土地家屋調査士に依頼して測量を行い、通行部分を明確化しておくことが望ましいです。通行される側であれば利用制限の範囲を正しく示せますし、通行する側であれば「この範囲で確実に通行できる」という裏付けになります。

現地調査の重要性

書類だけでは分からない部分も多いため、現地調査が欠かせません。通行される側の場合は実際にどのように通行されているか、道幅や位置が書面と合致しているかを確認することが重要です。通行する側の場合は実際に通行できているのか、通行経路に支障がないかを確認しておく必要があります。

また、契約や登記の内容と現状が食い違っている場合もあります。「書面ではここを通れることになっているが、実際には別の場所を通っている」といったケースでは、売却後に「話が違う」とトラブルにつながる可能性があります。現地調査を行い、隣地所有者と認識をすり合わせておくことで、将来の不安を大きく減らすことができます。

通行地役権の有無や内容は、登記簿・図面・現地調査の三つを組み合わせて確認するのが鉄則です。この事前準備を徹底することで、買主や金融機関に安心感を与え、売却をスムーズに進めるための下準備ができます

なぜ通行地役権はトラブルになりやすいのか?

通行地役権は、当事者同士の合意によって成立する権利です。契約書や登記によって内容が明確になっていれば大きな問題は起こりにくいのですが、実務上は「口約束だけ」「昔からの慣習で通っているだけ」というケースも少なくありません。こうした場合、権利の範囲や利用条件が曖昧なままになり、トラブルが発生しやすくなります。

通行範囲や使用方法を巡る争い

通行される側の場合は契約や登記がなければ、「徒歩だけだと思っていたのに車も通された」「通行の時間帯を巡って口論になった」といったトラブルが生じやすくなります。通行する側の場合は通行できる範囲が曖昧だと「駐車場に入るために車で通りたいが認められない」といったトラブルにつながる可能性があります。

維持・修繕費用の負担を巡る争い

通行される側の場合は「舗装や草刈りを誰が負担するか」で対立が生じやすく、通行する側の場合は「通行路の管理をしてもらえない」と不満を抱くことがあります。契約で明確化していなければ、双方の思惑が食い違い、感情的な対立に発展するリスクがあります。

騒音やプライバシーの問題

通行される側の場合は、人や車が頻繁に出入りすることで「車の音がうるさい」「窓の前を通られて落ち着かない」といった不満に繋がります。通行する側の場合は、通行を拒否されれば「生活に支障が出る」といったトラブルになり、関係悪化につながります。

このように、契約や登記が不十分なままでは、通行される側する側のどちらの立場でもトラブルは起こりやすくなります。裏を返せば、売却をスムーズに進めるためには、通行範囲や利用方法をきちんと書面化し、可能であれば登記まで行って明確にしておくことが不可欠だと言えます。

通行地役権付きの土地をできる限り高く売るための対策

通行地役権がある土地は、一般の土地に比べれば価格面でどうしても不利になることがあります。しかし、事前に不確定要素を取り除き、権利関係を整理しておけば、不当に安く買い叩かれるのを防ぎ、できる限り高い条件で売却することが可能です。

ここでは、そのための3つの具体的な対策を紹介します。

確定測量で範囲と権利を明確化

通行範囲や位置が曖昧なままでは、買主も金融機関も安心できません。確定測量を行い、図面で通行部分を明示しておくことが重要です。

通行される側の場合は、どの部分を通行されるのかを明確に示すことで、利用制限の範囲をはっきりさせられます。通行する側の場合は、通行範囲を可視化することで、「この範囲で確実に通れる」という根拠となり、担保評価の低下を防ぎやすくなります。

隣地との協議と覚書の整備

通行地役権は、当事者同士の合意で成り立つ権利です。売却後に、買主と隣地所有者とがトラブルにならないよう、売却前に隣地所有者との取り決めをきちんと整えることが不可欠です。

通行される側の場合は、通行範囲・方法・維持管理費用の分担を覚書や契約書にまとめておきましょう。通行する側の場合は、これまで慣習的に通行していただけなら、改めて契約や覚書を取り交わしておくことで、買主や金融機関に「権利が整理されている」と安心してもらえます。

理想は地役権設定契約を交わし登記をすることですが、最低限「覚書」を取り交わしておくことで、少しでも条件良く売却できることになります。

不動産会社や専門家への相談

通行地役権が絡む土地は、一般的な土地よりも売却の難易度が高くなります。そのため、専門家の力を借りることが売却成功への一番の近道です。

通行地役権の取り扱いに慣れた不動産会社に相談すれば、買主への適切な説明や交渉をサポートしてもらえます。また、登記や測量、契約書類の整備などは司法書士や土地家屋調査士に相談することで、法的な手続きをスムーズに進めてもらえます。

専門家のサポートを受けることで、売却価格をできる限り高く維持しつつ、トラブルの芽を摘んで取引を進めることができます

通行地役権がある土地は、一般の土地より価格が下がりやすいのは事実です。しかし、「範囲を明確にする」「合意を整備する」「専門家に相談する」という3つの対策を講じれば、不当に安く評価されるのを防ぎ、できる限り高い条件で売却することが可能になります。

まとめ

通行地役権は、土地の利便性を高めるために設けられる仕組みですが、売却時には大きなハードルになることがあります。通行される側では土地の利用制限がかかり、通行する側でも権利が曖昧だと「将来も通行できるのか」という不安が生じ、買主や金融機関から敬遠されやすいのです。

その結果、一般の土地と比べれば価格が下がる可能性は避けられません。しかし、事前に登記簿や図面で権利関係を確認し、隣地との合意を契約や覚書で整え、必要に応じて確定測量を行っておけば、不当に安く買い叩かれるリスクを減らすことができます。

さらに、不動産会社や司法書士、土地家屋調査士などの専門家に相談することで、買主に安心感を与え、できる限り良い条件で売却を進めることが可能です。

「早めの調査」と「専門家への相談」は、通行地役権付きの土地を不利なく売却するための最大のポイントです。正しい知識と準備があれば、条件面でのハンデを最小限に抑え、納得のいく売却を実現できるでしょう。

当社では通行地役権付きの土地の売却を行っています。司法書士や土地家屋調査士などの専門家との体制も整っていますので、少しでも売却に当たって不安なことがあればお気軽にご相談ください。ご相談は無料です。

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