相続と売却に影響?2026年開始の不動産登記新制度とは

2026年1月15日 |  コラム

横浜市港南区の三共住販株式会社です。

2026年、不動産の登記制度に関して、利便性を高める新しい制度が相次いでスタートします。全国の不動産の所有状況をまとめて確認できる仕組みや、住所・氏名の変更が登記に自動で反映される仕組みなど、これまで手間や負担がかかっていた手続きが見直され、より分かりやすく、スムーズになる内容となっています。

こうした動きの背景にあるのは、全国で深刻化している「所有者不明土地」や「相続登記未了不動産」の現状です。国としても不動産の所有状況をより正確に、かつ一元的に把握・管理できる仕組みづくりを進めており、その流れの中で2026年の新制度が位置づけられています。

本記事では、この流れを受けて新たに始まる「所有不動産記録証明制度」と「スマート変更登記制度」について、不動産の売却・相続・管理にどのような影響があるのかを、不動産会社の視点から整理してお伝えします。

なお、政府広報オンラインでも2025年12月に「不動産の相続登記義務化!過去の相続分は?所有不動産を一覧的にリスト化する新制度も開始!」という記事で、今回の制度改正の背景や概要が紹介されています。制度全体の流れを知りたい方はこちらをクリックしてお読みください。

所有不動産記録証明制度

まず2026年2月2日から始まるのが、「所有不動産記録証明制度」です。

これは、特定の人が全国で所有している不動産を一覧で証明できる仕組みです。これまでの登記制度では、不動産の情報は「土地・建物ごと」に管理されており、「その人が全国でどんな不動産を所有しているか」を網羅的に把握する仕組みはありませんでした。

そのため相続の場面では、「相続人が被相続人の不動産をすべて把握できず、後になって思いもよらない不動産が見つかる」といったケースも少なくありませんでした。また、所有不動産を調べようとすると、これまでは「名寄帳を市町村ごとに取得する」「固定資産税の課税明細を手がかりに探す」など、手間と時間のかかる方法に頼らざるを得ませんでした。

「所有不動産記録証明制度」では、

・不動産の所有者(所有権の登記名義人)本人
・不動産の所有権の登記名義人の相続人

が、法務局(オンライン請求も可)で、全国の所有不動産を一覧化した「所有不動産記録証明書」を取得できるようになります。手数料は1通あたり1,600円とされています。

これにより、「複数の不動産を所有している方の資産管理」や「相続の際の不動産の洗い出し(財産調査)」といった場面で、所有状況を漏れなくかつ効率的に把握することが可能になります。相続や資産管理での確認作業を大きく効率化してくれる制度だと言えるでしょう。

スマート変更登記制度

2026年4月1日から始まるのが、「スマート変更登記制度」です。

これは、不動産の所有者の住所や氏名(法人の場合は本店所在地や商号)に変更があった場合、その情報を法務局が職権で登記に反映する仕組みです。

これまで、住所や氏名が変わっても、「登記の変更をしていない」「変更が必要だと知らなかった」「売却や相続の直前まで手続きをしていなかった」というケースは少なくありませんでした。

その結果、「登記簿の住所が何十年も前のままになっている」「連絡が取れず、売却や相続手続きがスムーズに進まない」「いざ登記を動かそうとすると、住民票や戸籍の追跡が大変になる」といった問題が、よく起きています。

スマート変更登記制度では、あらかじめ「検索用情報(氏名・住所・生年月日など)」を法務局に提供しておくことで、法務局が定期的に住基ネットに情報照会を行い、住所や氏名の変更があった際は、本人の確認・了承を得たうえで登記情報を更新します。所有者自身がその都度変更登記を申請しなくても、登記簿上の情報が最新の状態に保たれる仕組みです。

また、2026年4月からは住所や氏名の変更登記は原則として義務化され、正当な理由なく放置すると過料の対象となる可能性もあります。なお、2026年4月1日より前に住所等を変更した場合も、2028年3月31日までに変更登記を行う必要があります。

スマート変更登記制度により、相続時に「登記名義人の住所が古く、戸籍や住民票の追跡が煩雑になる」といった事態を防ぎやすくなり、売却時にも「住所変更登記が未了で手続きが止まる」といったリスクを減らすことが可能になります。登記情報を、負担なく確実に最新の状態を維持する仕組みとして用意された制度だと言えるでしょう。

不動産の売却・相続・管理では何が変わるのか

ここまで見てきたとおり、「所有不動産記録証明制度」と「スマート変更登記制度」は、いずれも登記情報をより正確に、かつ効率的に管理するための仕組みです。一部説明が重複する部分もありますが、改めてこれらの制度が不動産の売却や相続、管理にどのような影響があるかを整理します。

相続の場面

相続では、まず「被相続人がどんな不動産を持っていたのか」を正確に把握することが出発点になります。

所有不動産記録証明制度により、

  • 全国に散在する不動産を一括で把握できる
  • 相続財産の漏れや調査不足を防げる

ようになり、遺産分割協議や相続登記の前提となる財産調査が格段にしやすくなります。

また、スマート変更登記制度によって、登記名義人の住所が最新の状態に保たれていれば、

  • 戸籍や住民票の追跡がスムーズになる
  • 相続人の調査や連絡が取りやすくなる

といった効果も期待できます。

不動産売却の場面

売却時には、登記簿の内容が現状と一致していることが前提となります。住所変更登記が未了のままだと、売買契約や決済の直前で手続きが止まることもあります。

スマート変更登記制度により、住所・氏名の変更が自動的に反映される仕組みが整えば、

  • 売却直前に慌てて変更登記をする
  • 書類収集に時間がかかり、引渡しが遅れる

といったトラブルを未然に防ぎやすくなります。

複数不動産の管理・資産整理

複数の土地や建物を所有している方にとっては、

  • 今どこに、どんな不動産を持っているのか
  • 名義や住所情報は最新か

を定期的に確認することが重要です。所有不動産記録証明制度は、こうした資産全体の棚卸しや整理を行う際の基礎資料としても活用できます。

新しい制度に関する確認ポイント

1)所有不動産記録証明制度で「すべての不動産」が必ず分かるか?

原則として、登記されている不動産については全国分を一覧で把握することができますが、「未登記の建物(古い建物や増築部分など)」や「登記簿上の氏名や住所が現在の情報と大きく異なっている場合」には、証明書に正しく反映されない可能性があります。

例えば、

・何度も転居しているが、住所変更登記をしていない
・結婚や離婚で姓が変わっているが、登記は旧姓のまま
・表記ゆれ(旧字体・新字体、カタカナ表記など)がある

といったケースでは、検索用情報との照合がうまくいかず、同一人物の不動産であっても、一覧に含まれないことがあります。

そのため、相続や資産調査の際には、

・登記簿上の氏名・住所と現在の情報の一致の確認
・所有不動産記録証明制度による一覧確認
・固定資産税の課税明細や名寄帳の確認

を組み合わせて行うことが重要です。「一覧で出るからすべて安心」ではなく、「網羅性を高める強力な補助ツール」として活用するのが実務上の正しい位置づけになります。

2)相続人であれば誰でも所有不動産記録証明書を請求できるか?

請求できるのは、原則として

・不動産の所有者(所有権の登記名義人)本人
・不動産の所有権の登記名義人の相続人

に限られます。相続人であることを証明する戸籍等の提出が必要になります。

3)過去に引っ越して住所変更登記をしていない場合はどうなるか?

2026年4月1日以前に住所等を変更している場合であっても、2028年3月31日までに変更登記を行う必要があります。スマート変更登記制度を利用することで、将来の変更については自動反映の対象になりますが、過去分については期限内に整理しておく必要があります。

4)売却や相続の直前に慌てないために今からできることは?

次の点を事前に確認しておくことが有効です。

・現在の登記簿上の住所・氏名が最新か
・名義人が所有している不動産を一覧で把握できているか
・将来相続人になる人が、どの不動産を所有しているか把握できる状態か

これらを早めに整理しておくことで、売却や相続の際の手続きが格段にスムーズになります。

まとめ

2026年から始まる「所有不動産記録証明制度」および「スマート変更登記制度」は、いずれも「登記をより正確に、分かりやすく、管理しやすくする」ための仕組みです。

相続の際に不動産の全体像が把握できずに苦労したり、売却直前になって住所変更登記が未了で手続きが止まったりといったトラブルは、決して珍しいものではありません。

今回の制度改正は、そうした問題を未然に防ぎ、不動産の売却・相続・資産管理をよりスムーズに進めるための土台を整えるものと言えます。

大切なのは、

・自分(または家族)がどんな不動産を所有しているのか
・登記簿上の住所や氏名は最新の状態か
・将来の相続や売却の際に支障が出ない状態になっているか

を一度、整理して確認しておくことです。

不動産は、相続や売却といった「いざという時」になってから慌てて調べ始めると、思わぬ時間や手間がかかることがあります。新しい制度は、その準備をより簡単に、確実に行うためのツールでもあります。

なお、これらの新制度を活用する前提として、2024年4月1日から相続登記が義務化されています。まだ相続登記が済んでいない不動産がある場合は、将来の売却や相続手続きを円滑に進めるためにも、できるだけ早めに登記申請を行っておくことが重要です。

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