2024年12月16日 | コラム
「本当に売れるのか」「土地を売りに出したけれど、見学希望者がほとんどいない」「問い合わせはあるけれど、具体的な話に進まない」「不動産会社からこの土地は特殊だから値下げをしないと厳しいと言われた」「権利関係や境界が曖昧で売却するには明確にしないといけないけど気が重い」
旗竿地の売却に関して、このようなご相談をいただくことがあります。
旗竿地は特殊な形状をしているため他の物件とは異なる独特の課題があり、仲介での売却が困難なケースがあります。そのような場合は不動産買取がおススメです。すべての旗竿地が仲介での売却が困難なわけでありません。どのような場合に困難なのか、買取の方がおススメになるのかご説明します。
本記事を読むと、主に次の内容を理解することができます。
旗竿地は売却が難しいと言われる理由を理解するには、旗竿地の特性を知る必要があります。そのため、まず旗竿地とは何かの説明から始めます。
旗竿地とは文字どおり、形状が旗と竿に似ている特殊な形状の土地です。下記の図のとおり、道路に接する細長い部分を「竿」、その奥にある家を建てる広い四角形や正方形の部分を「旗」と見立てています。
そもそも旗竿地のような特殊な形状の土地ができる理由は、
などが挙げられます。
たとえば、広い土地を相続した場合、そのまま売却するのは難しいため、複数の区画に分割して売却することがあります。また、新規の住宅地を造成する際に、開発業者が土地を最大限利用するために土地を細かく分割することがあります。いずれの場合でも、土地をそのまま分割すると下の図のように、道路に接しない土地ができてしまうことがあります。
都市部と比べて需要が少ない地方では道路に接しない土地ができないよう土地を整形しやすいですが、需要が多く建物が密集する都市部では土地がより細かく分割されるため、都市部には旗竿地が生まれやすくなります。
しかし、建築基準法では、建物を建てる土地は「幅員4m以上の公道に2m以上接している必要がある」という接道義務が定められています。道路に接していない土地について接道義務を満たすため、結果として旗竿地ができてしまうのです。
※地方公共団体の条例によって竿(路地状)部分が道路と接していなければいけない幅員が変わりますので、以降の説明の2mの部分を読み替えてください。必要な幅員は、自治体の担当部署に問い合わせる、条例を調べる、不動産会社に相談するなどして、ご自身のお住まいの地域で確認してください。
参考までに、当社がある横浜市と東京都の場合をご紹介します。
横浜市は横浜市建築基準条例により、
・路地状部分の長さが15m以下のものは幅員2m以上、
・15mを超え25m以下のものは3m以上、
・25mを超えるものは4m以上、
と規定されています。
東京都は東京都建築安全条例により、
・路地状部分の長さが20m以下のものは幅員2m、
・20mを超えるものは幅員3m、
と規定されています。
ちなみに、形状の整った土地を「整形地」、旗竿地のような特殊な形状の土地を「不整形地」と言います。
さきほど出てきた、「接道義務」というのが旗竿地の売却に大きく関わってきます。
建物を建てる土地には接道義務があると書きましたが、どこでも接道義務が課されるわけではありません。都市計画法という法律があって、都市の秩序ある発展や良好な生活環境の確保などを目的に、都市計画法で定める「都市計画区域」と「準都市計画区域」では接道義務が課されます。
法律で課されている義務であれば、義務を満たしているはずで問題ないのでは?と思った方もいらっしゃるでしょう。
しかし、現実的には、接道義務を満たしていない旗竿地が存在します。
どのような場合に、接道義務を満たしていない旗竿地が存在するかというと、
などが挙げられます。
では接道義務を満たしていないとどうなるか?
都市計画法の例外規定で接道義務が免除される、各自治体の条例で接道義務が緩和されるケースもありますが、基本的には再建築不可物件になります。
再建築不可物件は、現在建っている建物を解体して新しく建物を建てることができません。建物が老朽化して倒壊の危険があっても建て替えられませんし、台風などの自然災害で建物が倒壊・損壊しても立て替えられません。リフォームはできますが、建築申請が不要な簡単なリフォームしかできません。
これは、すごく大きなことだと思いませんか?
建て替えられないとなると、買いたいと思う人がいなくても不思議ではありません。
つまり、所有する旗竿地が「再建築不可か否か」。
これが、仲介で売却できるかどうかにクリティカルな影響を及ぼします。
接道義務を満たしていない再建築不可物件の旗竿地であれば、仲介で売却できる見込みは極めて低くなります。一方で、接道義務を満たしている旗竿地であれば、他の条件も関係してきますが、仲介で売却できる可能性があります。
接道義務を満たしておらず、再建築不可物件になっているなら、不動産会社に買い取ってもらうのがおススメです。買取一択と言っても良いかもしれません(買取のメリットはあとで説明します)。
買取以外にも以下の方法がありますが、正直、実現可能性は低いです。
隣地を購入できれば旗竿地が解消され、接道義務を満たせるようになります。そうすれば、再建築不可物件ではなくなります。整形地になれば仲介で売却できます。
ただし、当然隣地を購入するには先行してそれなりの費用がかかるため、資金的な余裕がなければ難しいです。また、隣地の所有者との関係性にもよりますが、売却してもらえないか打診するのは意外とハードルが高いです。打診の仕方を誤ると関係が悪化してしまう可能性があります。
なお、整形地になって売却しやすくなっても、隣地を購入して土地面積が広くなるので、その分購入価格も高くなることから、買い手は資金的余裕がある人に限られる可能性があります。立地など他の要素も関係しますが、簡単に買い手が見つからないかもしれません。
接道義務を満たして再建築不可物件に該当しないようにするために、竿部分を2m以上に拡張します。再建築不可でなくなれば、仲介での売却はしやすくなります。
隣地全体を購入するのと違って費用負担は小さくなります。ただし、隣地を購入するのと同様に、隣地の所有者に打診するのはハードルが高く、関係悪化のリスクがあります。しかも、単純に間口が2m以上になれば売却しやすくなるわけではありません。あとで説明しますが、安全な駐車スペースが確保できないなど竿部分が有効活用できなければ、仲介での売却は難しくなります。
なお、隣地を購入するのではなく隣地所有者との間で、土地を等価交換して竿部分を拡張する方法もあります。購入するのか等価交換するのかの違いだけですので、説明は省きます。
ここまでとは逆に、隣地の所有者に自分が所有する旗竿地を購入してもらう方法もあります。
隣地の所有者にとって明確なメリットがあれば別ですが、購入するのにそれなりの費用もかかりますので、基本的には購入してもらうのは難しいです。隣地を購入する打診をするのと同様に、売却の打診をするのも慎重にやらないとトラブルになりかねないので注意が必要です。
「良かった」、自分が所有しているのは旗竿地でも、接道義務を満たしているので再建築不可物件に該当しない。ということは、仲介で売却できそうだと思った方もいるでしょう。
しかしちょっと待ってください。再建築不可物件か否かが最大の問題ですが、再建築不可物件でなくても旗竿地の特殊な形状に起因して仲介での売却が難しい場合があります。代表的なものを5つ紹介します。
なお、以下の特徴の1つだけではなく、複数当てはまる場合は仲介での売却は相当難しくなります。その場合は、再建築不可物件と同じく、不動産会社に買い取ってもらうのが一番です。
竿(間口)部分が狭く、接道義務を満たすために間口を2mにしているだけだと、大きく2つの問題があります。
まず、土地が有効活用できないという問題です。旗竿地は、竿部分を有効活用できるかがポイントです。駐車スペースとして安全に使用するためには、車種にもよりますが、普通自動車なら2.5~3mは欲しいところです。もし、十分な幅がある駐車スペースを確保できない場合、旗部分に確保することになり、そうすると建物を建てる面積が小さくなってしまいます。
もう1つが、大型車両や重機が通れず工事費用が高くなるという問題です。旗竿地は、購入後に解体して新しく建物を建てたり、リフォームをする前提で購入する人が多いです。解体や建築などで使用する大型車両や重機はたいてい幅2~2.5mはあります。間口が狭くて通れない場合は手壊し解体になる、資材を小分けにして搬入するなど、工事にかかる時間と労力が増えてしまい、結果、工事費用が高くなります。
このように土地を有効活用できないと希望する間取りにできなかったり、工事費用が高くなって整形地と比べて割安であるメリットが薄れてしまうため、整形地を探す人が多くなってしまいます。
イメージしにくいかもしれませんが、竿部分が隣地が所有する私道の場合があります。
私道の通行権が明記されていないと自由に通行できず、私道所有者と交渉して通行権を得る必要があります。また、私道部分にある水道管やガス管などを工事するときには、私道所有者の許可が必要になります。場合によっては、通行料や承諾料を求められることもあります。他にも、維持管理でトラブルになることもあります。
こうした権利関係に起因するトラブルを懸念して購入を躊躇する可能性があります。
これはイメージしやすいと思います。
特に都市部の旗竿地は、周りの建物が高く、土地面積が狭い傾向があります。そのため、日当たりや風通しが悪いことが多くなります。建て替えやリノベーションで、吹き抜け・天窓・高窓・地窓などを取り入れるなどの工夫である程度カバーはできますが、その分建築費がかさみます。
「洗濯物が乾きにくそう」「湿気がたまりそう」などのイメージが払しょくできず、整形地で日当たりの良い物件の方が好まれやすくなります。
旗竿地は整形地と比べて一般的に市場性が低いと見なされますが、旗の形状や面積、竿の幅や長さなど旗竿地の形状や構成によっては、銀行の担保評価額が低くなります。
住宅ローンの借入可能額は物件の担保評価額を基準に決定されることが多いため、「住宅ローン審査に通りにくい」、「借入可能額が少なくなる」、「自己資金の負担が増える」ことになります。
自己資金が不足する場合は購入できませんし、自己資金の負担の大きさから購入を断念する可能性があります。
仲介で売却する場合に、売却価格のアップや買い手の興味を引くためにすることが、かえって売却活動に悪影響を与えることが2つあります。不動産会社の買取の場合にも、買取後の再販のノウハウがある不動産会社や買取会社に相談なしにやらないようにしましょう。
買い手はリフォームや建て替えを前提に購入を検討することが多いため、リフォーム済みだと買い手が自分たち好みにリフォームする自由度が下がってしまいます。また、高額なリフォームを行っても売却価格に反映するのが難しいことがあり、結果的に、売主の負担が増加してしまうだけの可能性もあります。
解体しなければ、買い手は解体して新しく建てるか、リフォームするか選択できます。解体することで、購入後にリフォームを考えている買い手の場合、建築費の方が高くなるため敬遠される可能性があります。また、解体費用を売却価格に反映するのが難しく、解体費用を回収できず売主の負担が増えるだけになってしまう可能性もあります。
旗竿地を仲介で売却する場合、売却が難しい旗竿地の特徴で記載したような旗竿地だと、売却までに長期間かかります。買取であれば、不動産会社や買取業者が直接買い取るため、迅速に売却手続きを進められます。現金での購入が可能なため、すばやく現金化できます。
仲介の場合、売却活動にあたって建物の掃除や不用品の処理をしたり、内覧の対応が必要になります。買取は不動産会社や買取業者が買主のため、内覧対応が必要ありません。また、買取後のリフォームを前提に買い取ってくれるため、売却前のリフォームなども必要ありません。時間的にもコスト的にも売却の負担が軽くなります。
不動産会社や買取業者が買主のため、宅建業法40条の規定により、売買契約書に明記しない限り、売主は建物に欠陥などの瑕疵があっても責任を負わない契約不適合責任を免責されます。しかし、故意または重大な過失で瑕疵を隠蔽している場合などは、契約不適合責任を負う可能性がありますので注意が必要です。
仲介で売却する場合、建物に残置物があることでさらに買い手を探すのが難しくなったり、売却価格が下がる可能性があります。売り手で処分するにしても、処分する物によって処分方法が異なるなど、労力が意外と大きくなります。すべての不動産会社や買取会社ではありませんが、残置物の処分を含めて買い取ってくれることがあり、処分の手間が減る可能性があります。
買取のメリットをお伝えしましたが、買取にもデメリットはあります。
旗竿地に限った話ではなく買取一般の話として、買取の場合、売却価格が相場より低くなりがちです。これは、不動産会社がリフォームや解体して新しく建物を建てるなどして、買取後に再販する際の費用やリスクを見越して価格設定するためです。
どのような業界にも存在しますが、買取に関しても悪質な業者が存在します。不当に低い価格で買い叩こうとする、高価買取を謳って高い査定額を提示した後にさまざまな費用を差し引いて買取価格を低くする、契約解除したいと思っても高額な違約金を請求する、といったような会社もあります。
悪質業者を避け、少しでも高く買い取ってもらえる、安心・信頼できる不動産会社や買取業者を選ぶためのポイントとして、次のことを意識すると良いです。
これは必須ですが、査定は複数の会社に依頼しましょう。買取価格のおおよその相場観が分かるので、適正価格を見極めやすくなります。査定価格が一番高いという理由だけで選ぶと、悪質業者にあたる可能性があるため、他のポイントもあわせて選ぶようにしましょう。なお、一括査定は一度に多くの会社に査定をしてもらえて便利ですが、一括査定サイトに登録していない会社の方が多いので、できる限り自分で選んで査定依頼することをおススメします。
買取に限らず、やはり担当者の対応は重要です。不安や悩みに寄り添って、親身になって相談に乗ってくれる、要望をじっくり聞いてくれる、疑問に思ったことは何でも聞ける、顧客目線での提案をしてくれるなど、信頼性や誠実さを感じられるかがポイントです。旗竿地が整形地と比べて売却価格が安くなるといえども高額な取引です。あとになって後悔することがないよう、担当者をしっかり見極めましょう。
査定価格の根拠が明確で、内訳などを具体的に説明してくれる会社は信頼性が高いです。特に、高い査定価格を提示された場合は、根拠までしっかり確認してください。根拠が不明確、あいまいな説明の場合は、後から追加費用を請求されて売却価格が大きく変わる場合があります。自分自身が説明を聞いて納得できる会社を選びましょう。
旗竿地の買取実績が豊富で評判が良ければ安心ですが、実績や評判(クチコミ)は何をもって信用して良いか判断が難しいものです。実績はネット上に公開できないことが多いため、参考程度に見るのが良いです。
旗竿地の買取の流れは、大きく次のような流れで進みます。
①不動産会社を探す
旗竿地の買取を相談する不動産会社を探します。
②不動産会社に買取査定を依頼する
不動産会社に旗竿地の買取の査定を依頼します。
査定には、机上査定と訪問査定があります。机上査定は形状の確認、建物の情報、過去の取引事例などを基に、おおよその査定額を算出します。訪問査定は、実際の形状の確認、建物の調査、周囲の建物の状況、日当たりや風通し、周辺環境など詳細に調査した上で、査定額を算出します。
何社かに机上査定を依頼して概算の査定額を把握した後、気になる会社に訪問査定を依頼すると安心です。
③買取金額を交渉する
買取金額が提示されたら、実際の買取金額を交渉します。他社の査定金額などを参考にして、納得して依頼できるよう交渉します。
④売買契約を締結する
買取を依頼する不動産会社を決定して、売買契約を締結します。買取金額や決済日、引き渡し日など、売買条件を具体的に定めた契約書を作成します。売買契約が成立すると、不動産会社から買取金額の5~10%が手付金として支払われます。
⑤不動産を引き渡して代金を受け取る
不動産を引き渡して、不動産会社から残金が支払われます。
売却時に一般的に売主が負担する費用は次のものがあります。
①印紙税
売買契約書の作成にあたり、売買代金に応じて収入印紙を貼付する必要があります。
②登記費用
所有権移転登記を行うために、登録免許税が必要になります。
③譲渡所得税・住民税
売却益が出たときは、譲渡所得税と住民税を支払う必要があります。ただし、譲渡所得が特別控除の範囲内であれば税金がかからない場合もあります。
その他、売却する崖地や傾斜地に住宅ローンなどの抵当権が設定されている場合、売却前に抵当権を抹消する必要があるため抵当権抹消費用がかかります。また、土地の境界が不明確な場合や正確な面積を確認するために測量が必要な場合は、測量費がかかります。
旗竿地は、接道義務を満たしておらず再建築不可物件の場合はもちろんのこと、接道義務を満たしていても竿部分の幅などに起因して仲介での売却が難しいことがあり、その場合は買取がおススメとお伝えしました。
都市部では旗竿地は珍しくありませんし、少し奥まっていて静か、プライバシーが確保できるなどのメリットを感じる買い手もいます。売主様にとって少しでも高く売却できる可能性がありますので、売却しにくい特徴に当てはまらなければ、まずは仲介での売却を検討していただくのが良いと思います。
あらかじめた定めた期間、仲介での売却活動を行い、期間までに売却できなければ不動産会社が買取るという、買取保証という方法もあります。もし、「思ったように仲介での売却が進まない」、「時間をかけずに迅速に売却して現金化したい」といったことがあれば、不動産会社に一度買取の相談をしてみることをおススメします。
高価買取を納得の根拠で実現する三共住販の買取のご案内はこちらから