2026年3月16日 | コラム
港南台駅前で進めているビル建替えプロジェクトの続編です。前回の記事「港南台駅前の当社管理物件のビル建替え工事プロジェクト」では、物件管理を担当する当社が計画段階からどのように関わっているかをお伝えしました。現在は基礎工事の要である「杭工事」が進行しています。
建設に関する専門的な工程は、一般の方にとっては分かりにくい部分も多いかもしれません。ただ、完成後の物件管理や運用に関わっていく立場としては、こうした見えない工程がどのように進められているのかは、とても大切なポイントです。
今回は、杭工事そのものの内容とあわせて、当社がどのような点を重要だと考えながら現場を見ているのかも整理してお伝えします。
建設現場は高い仮囲いに覆われているので、外からはどのような工事が行われているか分からない方がほとんどではないでしょうか。
現在行われているのは基礎工事で、その中でも「杭工事」は、“最初の、そして、最も重要な工事”になります。
今回のような大きなビルの場合は、建物の重量をしっかり支えるため、地中深くにある支持層(支持地盤)まで杭を施工し、建物の荷重を安定して地盤に伝える必要があります。これが杭工事の大きな役割です。
杭は、建物が完成すれば地上から見ることはできませんし、簡単にやり直せるものでもありません。だからこそ、建設会社にとって重要なのはもちろん、完成後の管理や運用に関わる当社としても、この「見えない杭」がどのように施工されているかは非常に大切だと考えています。


図面で定められた位置に、必要な太さと深さの杭を確実に打ち込むため、「アースドリル機」と呼ばれる巨大な重機を使って、地中数十メートルの深さまで孔(あな)を掘削していきます。
孔を深く掘り進める際、怖いのは地中の土が崩れてしまうことです。そこで、掘削の入り口付近の孔の上部に「ケーシング」と呼ばれる鉄製の筒を立て込み、孔が崩れないようにガードしながら慎重に作業を進めます。
一見すると大きな重機を使うダイナミックな工事に見えますが、実際には、設計図通りの位置・深さ・形状で進めるための繊細な管理が求められる工程です。
当社としても、こうした正確さは単なる施工上の問題ではなく、完成後に長く安定して運用できる建物になるかどうかに関わるものとして見ています。見えない部分だからこそ、設計通りに着実に進んでいることが安心材料になります。
現場では、アースドリル機、バックホウ、クレーン、そして水槽タンクなど、さまざまな重機や機材がひしめき合っています。これらを敷地内のどこに、どう配置するか。実はこの「機材配置」こそが、杭工事の作業効率に大きく影響します。

杭工事では、重機以外にも多くの機械や資材が必要となるため、ひとつひとつの配置が作業効率に大きく影響します。特に、水槽タンクのように簡単には動かせない設備の設置場所や、アースドリル機やクレーン車のサイズによっては、敷地の条件次第で搬入できなかったり、大きな材料が吊り込めないといった事態も起こり得ます。
建設会社によれば、こうした施工上の制約は、最終的な建物の大きさや計画そのものに影響を及ぼすこともあるそうです。そのため、法規上の制限(建ぺい率や容積率など)だけでなく、設計の初期段階から「どうやって作るか」という施工性の観点も含めて検証できることが、設計施工一貫の強みということです。
当社としても、計画段階から現場での施工まで無理なくつながっていることは、大きな安心材料だと感じています。完成後の建物品質は、こうした初期段階の丁寧な検討にも支えられているからです。


今回のプロジェクトでは、地中深くでビルを支える柱として「場所打ちコンクリート杭」を採用しています。コンクリートは垂直方向の圧縮力に対して非常に強く、内部に配置された鉄筋が引張力を負担することで、重いビルを長期にわたって安定して支えるために非常に有効な素材です。
工法については、杭の先端部を広げる「拡底杭(かくていぐい)」が用いられています。建設会社の説明によれば、杭の底を広げることで、支持層(支持地盤)との接触面積を増やし、より大きな支持力を得られるのが特徴とのことです。

また、掘削後には「孔壁測定(こうへきそくてい)」が実施されます。これは超音波測定機器などを用いて、掘った孔の直径、深さ、傾き(鉛直性)、孔壁の状態など設計通りの寸法になっているかを立体的に把握するものです。これにより、設置深度や周囲の土壌の状態、異物の有無、さらには空洞の有無まで確認することができます。
こうした測定や確認は、専門的な話に見えるかもしれませんが、当社の立場から見ると非常に意味のあるものです。見えない部分が、きちんと確認され、記録として残ること。それ自体が、将来にわたる安心につながると考えています。
2015年には横浜市のマンションで杭工事に関する施工データの流用等が問題となり、杭工事における品質確認や記録の重要性が広く意識されるきっかけにもなりました。国土交通省もこの事案を受けて、施工体制の確認や立会い、工事監理上の留意点を整理しています。
完成後の管理や、将来の修繕・売却といった場面を考えても、「見えない基礎がどう施工され、その記録がどう残っているか」は、決して小さな話ではないと感じています。
掘削中の孔は、地中の水圧や土圧の影響で非常に崩れやすくなっています。建設現場において、孔の壁を内側から守るために欠かせないのが「安定液」です。
安定液はただ孔を満たすだけでなく、孔の壁に浸透して「マッドケーキ」と呼ばれる薄い不透水性の膜を形成します。さらに、この液体の水位を地下水位よりも高く保つことで内側から圧力をかけ、土が崩落するのを防いでくれます。
安定液にはもう一つ、掘削時に混じった土砂を沈降させる働きもあります。これにより、後から流し込むコンクリートがきれいに置き換わるようになり、杭の品質が大きく向上するそうです。

「水槽タンク」は、この安定液を管理するために必要な設備です。良質な安定液をストックし、掘削で混ざった汚泥を分離するため、杭のサイズや必要な液量に応じて適切な容量と台数が設置されています。
こうした工程は、一般の方には見えにくく、細かな技術の話に感じられるかもしれません。ただ、こうした一つひとつの積み重ねが、最終的には建物全体の安全性を支えることになります。当社としても、完成した建物だけでなく、その土台となる工程が丁寧に進められているかを大切に見ています。
一本目の杭を施工する際には、設計通りの品質が確保されているかを確認するため、現場に「工事監理者(こうじかんりしゃ)[設計者]」が立ち会っています。工事管理者は設計者側の立場で、施工が設計図面通りに行われているかを第三者的にチェックする役割を担っています。
建設会社によると、工事監理者は主に以下のポイントを厳格にチェックしています。
安全管理:現場作業が正しい手順で行われているかを確認し、安全に作業が進むよう見守る。
品質の確認:各種試験が設計通りの方法で実施されているかをチェックし、杭の品質を確実に担保する。
トラブルの早期発見と対応:不具合や異常があればその場で発見し、迅速に対応・指示を行うことで、後続の杭工事がスムーズに進むよう調整する。
こうした節目できちんと確認が行われていることは、将来この建物を管理していくうえでの安心につながると感じています。施工そのものを行う立場ではありませんが、完成後の運用を見据えるからこそ、どのような確認を重ねながら進めているのかは、しっかり把握しておきたいポイントです。
杭工事が進む現場では、土壌の搬出や巨大なクレーンの設置など、周辺環境や安全性に直結する重要な工程も並行して行われています。
工事で地中を掘削する際に出る土は「建設発生土」と呼ばれます。今回の杭工事で発生する土は、水分を多く含んだ泥状のもの(泥土)であるため、そのままでは搬出することができません。そのため、現場で石灰などを用いて「安定処理」を行い、土の性状を改善したうえで適切に搬出・処理されています。
建設会社によれば、重要なのは土の仕分けです。廃棄物が混ざっていない土は資源として再利用されますが、万が一廃棄物が混ざっている場合は「産業廃棄物」として扱われます。その際は法律に基づいた厳格な管理と処理が必要になります。
環境負荷の低減と法令遵守を両立するため、一つひとつの工程が丁寧に進められています。
また、現場でひときわ目を引く「タワークレーン」は、高所作業や重量物の運搬に欠かせない機械です。今回使用されているのは固定式タワークレーンで、敷地の端部まで荷を届けられる長いリーチを持つタイプになっています。

この大きなタワークレーンを安全に支えるため、地面に専用の基礎「H鋼基礎杭」がしっかりと構築され、強固に固定されることで、遠くまで重い資材を安全に吊り上げたり、運搬することができます。
タワークレーンのサイズや設置方法は、工期やコストにも影響するため、建物の計画段階から現場の条件に最適なクレーンが慎重に検討され選定されたそうです。
こうした法令やルール通りの適切な処理や、重機を支えるための基礎杭の施工といった「基本の徹底」こそが、何よりの安心材料です。地道に見える作業の積み重ねが、結果として工事をスムーズに進め、最終的に私たちが自信を持って運営できる確かな建物へと繋がっていくのだと感じています。

現場で実際に働く職人の方々にとって、「詰所(つめしょ)」は作業の合間に体を休め、気持ちを整えるための大切なスペースです。
建設会社によれば、これから気温が上がる季節を迎えるにあたり、現場ではエアコンや冷蔵庫を設置し、暑さによる体力消耗をできるだけ抑えられる環境づくりが進められています。
「しっかり涼める場所がある」「冷たい飲み物がすぐに取れる」といった基本的な設備が、職人さんの体調管理だけでなく、現場全体の安全性や作業効率に直結する重要な要素であるとのことです。
また、現場ごとに必要なスペースや仕様は異なるため、状況に合わせて詰所のサイズや設備を柔軟に調整しながら、より快適で使いやすい環境を整えていく予定だそうです。
こうした働く環境への配慮は非常に重要だと感じています。過酷な環境下での集中力の維持は、細かなミスを防ぐだけでなく、最終的な仕上げの丁寧さにも繋がります。職人の方々が安心して作業に集中できる環境があること。現場の健全さが、私たちがこれから長くお預かりし、運営していく建物の確かな品質を支える土台になると考えています。
杭工事が完了すると、いよいよ工事は地上へと進み、建物の姿が少しずつ現れてきます。
今回お伝えした地中の杭一本一本には、設計上の意図や、施工現場での緻密な段取り、そして将来の安全を守るための徹底した管理が込められています。私たちは、設計・施工を行う立場ではありませんが、この「見えない場所」で積み上げられた確かなプロセスを誰よりも理解し、大切に受け継いでいかなければならないと考えています。
今後も節目ごとに、このプロジェクトの進捗をお伝えしていきます。