2026年5月1日 | コラム
今回で3回目となる、港南台駅前で進めているビル建替えプロジェクトの続編です。前回の記事「港南台駅前のビル建替えプロジェクト~杭工事~」では、基礎工事の要となる杭工事について、物件管理を担当する当社がどのような視点で現場を見ているのかをお伝えしました。現在は、その後の工程に向けて、現場の安全性や施工品質を支えるための準備や確認が進んでいます。
今回取り上げるのは、「敷き鉄板」「山留」「コンクリートの試験練り」です。言葉だけ聞くと、建設会社の専門的な工程に思えるかもしれません。しかし、物件管理を任されている立場から見ると、これらは単なる現場作業ではなく、工事を安全に進めること、近隣環境に配慮すること、そして完成後も安心して運用できる建物につなげることに関わる大切なポイントだと考えています。
今回は、それぞれの工程がどのような役割を持ち、当社としてどのような点を大切に見ているのかを整理してお伝えします。
工事現場では、建物そのものをつくる前に、重機やトラックなどの車両が安全に動ける環境を整備することが重要になります。その役割を担うのが、工事現場の地面に敷かれる厚い鉄板である「敷き鉄板」です。

現場の地面は、掘削や雨によるぬかるみの影響で、非常に不安定となります。そのため、敷き鉄板により、重いクレーン車やトラックが通行する際の荷重を分散することで、タイヤが沈み込んだり、最悪の場合、スタックして動けなくなるリスクを防止します。
また、現場内の段差や凹凸をならして地面を平らな道にすることも、敷き鉄板の大切な役割です。段差や凹凸がないよう足元を整備することで、車両の横転事故や作業員のつまずきによる転倒事故の防止にもつながるとともに、資材搬入をスムーズに行えるようになります。
さらに、近隣や周辺環境への配慮の面でも重要です。重機が鉄板の上を走行することで、タイヤに付着する泥を最小限に抑え、道路が泥で汚れないようにします。現場周辺の道路が泥で汚れれば、近隣の方に迷惑になるだけでなく、スリップ事故の原因にもなりかねません。
加えて、上からかかる局所的な圧力を分散し、地下に直接伝わらないようにすることで、地盤への負担を抑え、周辺の地盤沈下を防ぎます。地盤沈下は、周辺地域のインフラ停止という重大事故につながりかねないため、現場管理において非常に重要な視点の一つです。
物件管理を担当する当社としても、敷き鉄板の設置は、単なる現場の下準備ではなく、工事を安全かつ効率的に進めるために重要であり、また、近隣環境への配慮を形にする大切な工程だと考えています。完成後の建物の品質だけでなく、完成までのプロセスとして、どれだけ丁寧に現場が管理されているかも、オーナー様にとって大事な安心材料の一つになると考えるからです。
地面を深く掘り下げる工事では、地表の安全だけでなく、掘削した地下空間の安全をどう確保するかも重要になります。その役割を担うのが「山留(やまどめ)」です。

地下空間をつくるために土を掘ると、周囲の土壁は自重や水圧の影響で崩れようとします。土の圧力は数メートル掘るだけでも凄まじく、山留はその土の圧力を食い止め、掘削した壁面が崩れないように支えるためのものです。
山留が不十分なまま掘削を進めると、現場の崩壊事故につながるおそれがあります。それだけでなく、周囲の地下水が流れ出すことで、近隣の道路や建物が沈下したりひび割れするリスクもあります。そのため山留は、作業員の安全を守り、土砂に埋まる崩壊事故を防止するだけでなく、周辺環境を守るためにも欠かせないものになります。
また、山留により掘削した地下空間の壁を垂直に保つことで、設計図通りの正確な構造物を作ることができます。
山留の工法はひとつではなく、現場の地質、掘削する深さ、近隣との距離などによって最適な工法が選ばれます。たとえば、一般的なものとしては、H鋼の親杭を打ち込み、掘り進めながらその間に横矢板を挟んでいく「親杭横矢板工法」があります。今回はこの工法を採用しています。
他にも、現場条件に応じて鋼矢板工法やSMV工法/ソイルセメント柱列壁工法、地中連続壁工法などの工法があります。
なお、地下掘削が深くなる場合には、山留の壁を内側から支える「支保工(しほこう)」が必要になることもあります。切梁で内側から突っ張る方法や、地盤アンカーで背後の地盤から引っ張る方法などがあり、現場の条件に応じて選定されます。
物件管理を担当する当社としても、山留は完成後には見えなくなる一時的なものですが、地下工事の安全と周辺への配慮を支える非常に重要な工程だと考えています。オーナー様にとっても、「大きな事故なく無事に工事が進むこと」「周辺の地盤沈下といった街のインフラに万が一にも影響を与えずに進めること」は大きな関心事だと思います。だからこそ、こうした目に見えにくい安全対策が、どのような考え方で進められているかをきちんと把握しておくことは、管理会社として大切な役割の一つだと考えています。
建物の強さや耐久性を支えるうえで、コンクリートの品質はとても重要です。
生コンクリートは、セメント、水、砂、砂利、混和剤などの材料で構成されますが、単に材料を混ぜ合わせるだけではありません。材料の分量を数グラム間違えるだけでも建物の品質に直結してしまいます。そのため、コンクリートの設計図をもとに数グラムの調整をした適切な配合をすることで、安全で長寿命の建物を作ることができます。

コンクリートの配合で特に重要になるのが、水とセメントの比率です。水が多ければ混ぜやすく作業は楽になりますが、乾燥後に内部に隙間(空隙)ができて強度が低下するだけでなく、雨水や塩分が侵入して鉄筋が錆びる原因となります。水とセメントの比率が適切だと密度が高く、締まった強固なコンクリートとなり、高い耐久性が生まれます。
一方で、施工するうえでは、強度だけを優先すればよいわけでもありません。コンクリートは、柔らかすぎても硬すぎてもいけません。柔らかすぎれば強度不足になり、硬すぎれば型枠の隅々までうまく行き渡らず、表面に空洞ができるなど仕上がりに影響があります。そのため、必要な強度を確保しながら、“ちょうどよい流動性”を確保することで、仕上がりと品質を両立できます。
さらに、コンクリートはその日の気温や湿度、現場までの運搬時間によって状態が変わります。夏場と冬場では求められる調整も異なり、同じ配合でも季節が違えば別物になるほどコンクリートは繊細なため、季節や環境に応じた考え方が求められます。
こうした条件を踏まえながら、必要な品質が確保できるかを事前に確認するのが試験練りです。試験練りでは、実際の施工で使う配合や材料をもとに、少量のコンクリートを事前に練り混ぜ、必要な強度や施工性がきちんと確保できるかを確認します。本番の打設に入る前に、設計で求められる性能を満たせるかを見極めるための大切な工程です。

物件管理を担当する当社としても、この試験練りは非常に大切な確認だと考えています。完成した後の建物を見ただけでは分かりにくい部分ですが、建物の寿命や長く安心して使えるかどうかは、こうした打設前の準備や確認の積み重ねに支えられています。オーナー様にとって、細かなコンクリートの配合を理解する必要はないと思います。しかし、建物を形づくる材料についても、現場では条件に応じて緻密に計算したうえできちんと確認しながら進めているこが、完成後の安心につながる大切なポイントだと、私たちは考えています。
今回取り上げた敷き鉄板、山留、コンクリートの試験練りは、それぞれ役割の異なる工程です。
しかし、物件管理を担当する当社の立場から見ると、どれも共通しているのは、工事を安全に進めること、周辺環境に配慮すること、完成後も安心して運用できる建物につなげることに関わっている点です。
敷き鉄板は、重機や車両が安全に動けるインフラを整備し、近隣への泥の持ち出しや地盤への負担を抑えるためのものです。山留は、掘削中の安全を守るだけでなく、周辺地盤や近隣建物への影響を抑えながら工事を進めるために欠かせません。そして試験練りは、完成後には見えにくいコンクリートの品質を、事前に確認しながら進めるための大切な工程です。
私たちは設計や施工を担う立場ではありません。
しかし、完成後に建物を預かり、オーナー様と長く関わっていく立場だからこそ、こうした一つひとつの工程を「工事中の話」として切り離して考えることはできないと思っています。
建物の品質は、完成した外観や設備だけで決まるものではありません。現場でどれだけ安全に配慮しているか、周辺への影響を抑えながら進めているか、目に見えにくい部分もきちんと確認しながら施工しているか。そうした積み重ねがあってこそ、完成後の安心につながっていくと考えています。
専門的な工程の細かな内容を、オーナー様がすべて理解する必要はありません。
ただ、現場では建設会社がこうした準備や確認を丁寧に進めており、私たちもまた、物件管理を担う立場として、その意味を理解しながら状況を確認していることを、少しでも感じていただければと思います。
建物が立ち上がってくると、工事の進み具合は外からも分かりやすくなってきます。
一方で、その前の段階では、今回ご紹介したように、安全や品質を支えるための準備や確認が数多く積み重ねられています。
こうした工程は完成後には見えなりますが、建物を安全に作り、長く安心して使っていくためには欠かせないものです。
今後も、建物が形になっていく過程だけでなく、その前後でどのような準備や確認が行われているのかも含めて、このプロジェクトの進捗をお伝えしてまいります。