2026年8月7日 | コラム
今回で6回目となる、港南台駅前で進めているビル建替えプロジェクトの続編です。
前回の記事では、基礎配筋工事の完了後、コンクリートを打設する前に行われた中間検査についてご紹介しました。その後も建替え工事は進み、現在は建物に電気を供給するための工事が行われています。
建物の工事というと、基礎や柱、壁など、建物の形をつくる工程をイメージするのが一般的だと思います。
一方、建物に電気を供給するためのケーブルや、その敷設に必要な設備は、完成後に目にする機会がないため、どのような工事が行われているのかイメージしにくいものです。
しかし、こうした電気設備は建設時の施工だけでなく、完成後の点検や補修、将来の設備更新にも関わります。
その中でも今回は「ハンドホール」を取り上げます。
というのも、ハンドホールは地中に埋設された電力ケーブルを安全かつ効率的に管理するために重要な設備だからです。
オーナー様にとっては聞き慣れない設備かもしれませんが、今回のようなビル建替えプロジェクトに関わらなければ、なかなかお伝えする機会もありません。そこでこの記事では、建物へ電気が届くまでの流れとともに、ハンドホールの役割や建設後の物件管理との関係をご紹介します。
建物内で使用する電気は、電力会社の設備から建物側の電気設備へ引き込まれ、そこから建物内の配線を通じて各住戸や共用部へ供給されます。電気の引き込み方法には、架空の電線を利用する方法と、地中に敷設した電力ケーブルを利用する方法がありますが、今回の建替え工事では、地中に電力ケーブルを敷設するための工事を行っています。
建物が完成すると、敷地内の地中を通る電力ケーブルを見ることはありません。そのため、建物へ電気を供給するための工事が地中でも行われていることは、あまり知られていないかもしれません。
今回設置されたハンドホールは、この地中に敷設される電力ケーブルの配線ルートの途中に設置される設備です。
ハンドホールは、地中に電力ケーブルを通す際に、ケーブルを引き入れたり、引き出したりするための作業スペースとして使われます。

長い距離にわたってケーブルを敷設する場合、一度に引っ張る距離が長くなるほど、ケーブルにかかる張力や管路との摩擦による負担が大きくなります。そこで、配線ルートの途中にハンドホールを一定間隔ごとに設置し、一度にケーブルを引き込む距離を短くすることで、ケーブルへの負担を軽減して敷設作業を進めることができます。
また、配線計画によっては、ケーブル同士を接続したり、複数の方向へ分岐したりする場所としても機能します。
地中に埋設された電力ケーブルは、完成後に外部から直接確認することはできません。そこで、配線ルートの途中に設置したハンドホールを、ケーブルの点検や補修を行うためのアクセスポイントとして利用します。
定期点検や電気設備に故障が発生した際には、ハンドホールからケーブルにアクセスし、必要に応じて測定を行います。これにより、故障が疑われる区間や、詳しい調査が必要な範囲を絞り込みやすくなります。
配線ルートの途中にケーブルへアクセスできる場所があることで、ケーブルが埋設されている周辺を広範囲に掘削することなく、必要な調査や補修の範囲を判断しやすくなります。
また、ケーブルの絶縁劣化や漏電などの異常を確認し、必要な補修を行いやすい環境を構築することは、漏電による火災や感電事故のリスクを低減し、電気設備の安全性を維持することにもつながります。
建物を長く使用していくなかでは、ケーブルの劣化による引き替えや、設備の増設に伴う配線の追加が必要になることもあります。
ハンドホールや地中の管路が適切に設置されていれば、既存のケーブルへアクセスしやすくなります。管路やケーブルの状態によっては、ハンドホールを利用して既存のケーブルを引き抜き、新しいケーブルへ引き替えることもできます。
このように、建設時に必要な電力を供給できるようにするだけでなく、将来の引き替えや増設工事に対応しやすい環境にすることも、建物を長く使用するうえでは重要です。
今回のような規模の建物では、各住戸や共用部へ電気を供給するため、電力ケーブルの配線ルートも複雑になります。
そのため、ハンドホールは単に設置すればよいものではありません。ケーブルを引き込む距離や配線の方向、接続・分岐の位置、点検時の作業性、将来の設備更新などを踏まえて、位置・数・大きさを計画します。
適切な位置にハンドホールを設置することで、建設時のケーブル敷設が進めやすくなるだけでなく、竣工後の点検や補修、設備更新にも対応しやすくなります。
また、設備故障や災害が発生した際にも、地中のケーブルへアクセスできる場所が確保されていることは、状況の確認や復旧作業の進めやすさに関わります。
建設時には目立たない部分ですが、ハンドホールの配置計画は、竣工後の保守性を左右する重要な要素の一つです。
建物が完成した後、ハンドホールを日常的に目にすることはありません。また、管理会社が自ら電力ケーブルの点検や補修を行うわけでもありません。
しかし、将来、電気設備の不具合やケーブルの引き替えが必要になった際には、どこにどのような設備があり、どのような役割を担っているのかを把握していることが、専門業者への依頼やオーナー様への説明を円滑に進めるうえで重要になると考えます。
完成後には確認できなくなる設備だからこそ、建設中の段階で設置状況や役割を確認し、将来の維持管理につながる情報として残しておくことが大切です。
港南台駅前のビル建替えプロジェクトでは、工事が予定どおり進んでいるかを確認するだけでなく、完成後に物件を管理していく立場から、建物を支える設備についても理解を深めながら進捗を確認しています。
第1回:港南台駅前の当社管理物件のビル建替え工事プロジェクト
第2回:港南台駅前のビル建替えプロジェクト~杭工事~
第3回:港南台駅前のビル建替えプロジェクト~安全と品質を支える現場の準備~
第4回:港南台駅前のビル建替えプロジェクト~配筋工事の準備~
第5回:港南台駅前のビル建替えプロジェクト~基礎配筋後の中間検査~