2026年9月29日 | コラム

今回で7回目となる、港南台駅前で進めているビル建替えプロジェクトの続編です。
現在、工事はいよいよ地上階へと進んでいます。
今回取り上げるのは、いずれも完成後には見えなくなる“隠れた工程”である、「型枠」「配筋」「コンクリート打設」です。
鉄筋コンクリート造の建物において、1階は上部構造のすべての重さを受け止めて基礎や地盤へ伝える「要」の階となります。1階の精度と品質が、その後の建物上階の施工精度や品質につながるため、1階部分の施工は非常に重要となります。
そのため、当社も完成後の物件管理を担当する立場から、工程会議での確認にとどまらず、施工会社との密なコミュニケーションを通じて、進捗を注視してきました。
今回は、この要となる1階の施工において、それぞれの工程がどのような役割を持ち、どのように精度と品質を確保しているのか、そして、当社がどのような点を大切に確認しているのかをお伝えします。


鉄筋コンクリート造の建物は、鉄筋を組み上げた周囲に「型枠」を組み立て、そこにコンクリートを流し込んで、柱や梁、壁などをつくっていきます。
型枠という言葉から、単なる「コンクリートを流し込む型(容器)」をイメージするかもしれません。しかし実際には、建物の形状や寸法はもちろん、垂直・水平の精度など、仕上がりの精度にも関わる重要な工程です。
型枠工事の最初に行われるのが「墨出し(すみだし)」です。
墨出しとは、設計図をもとに「柱や壁などをつくる位置の基準線」を、実際の現場に実物大で書き出す作業のことです。この基準線の設定がズレてしまうと、その後どれだけ丁寧に作業をしても建物の形状や寸法に影響してしまいます。
特に1階は、建物全体の基準となる大切な工程です。そのため、建物の位置を決める「通り芯(位置の基準)」や、高さの基準となる「レベル」の確認は重要なポイントとなります。
型枠の中にコンクリートを打設する(流し込む)と、内側から大きな圧力がかかります。
その圧力によって、型枠が膨らんだり変形したりしないよう、「セパレーター」と呼ばれる金具を配置することで、型枠同士の間隔を保ちます。特に、階高が高い場合やコンクリートを打設する速度が速い場合には大きな圧力がかかるため、施工条件を考慮した配置が必要になります。
型枠は一度「組んだら終わり」ではありません。
柱や壁が傾いていないか、高さが正しいかを専用の測定器具である下げ振りやレベルを使って確認します。そして、コンクリートを打設する直前まで、繰り返し垂直・水平の精度を確認し、打設直前の最終チェックこそがポイントとなります。
コンクリートを打設する前に、型枠内部の清掃をします。また、剥離剤を使用して、コンクリートが固まったあとに型枠をきれいに取り外せるようにします。
木くずやゴミ、鉄筋を固定するときに使った結束線の切れ端などが残っていると、コンクリートの内部に空洞や隙間ができる「ジャンカ」と呼ばれる施工不良の原因になります。そのため、コンクリートを打設する前の清掃確認は、省略できない大切な工程となります。
型枠工事で決められる位置や高さ、垂直・水平の精度は、この後つづく上階の施工品質につながるということで、完成後に物件管理を担当する当社にとっても、建物全体の基準となる1階がどのような精度で施工されているかは重要なポイントです。
そのため、進捗会議や施工会社との打ち合わせでの確認を通じて、こうした建物の基準となる部分がどのように作られているのか把握しながら工事を見ています。


配筋は、建物を支える鉄筋を設計図に沿って組んでいく工程です。
鉄筋はコンクリートに覆われて見えなくなるため、施工中に位置や間隔、固定状態などを確認しておくことが重要になります。
鉄筋は、コンクリートの表面ぎりぎりに配置されるわけではありません。
コンクリートの表面から内部の鉄筋まで一定の距離を確保する必要があり、この距離を「かぶり厚さ」と言います。かぶり厚さを適切に確保することで、火災時の熱から鉄筋を守るとともに、コンクリートの中性化などによる鉄筋の腐食を防ぎ、建物の耐久性を保ちます。
現場では「スペーサー」と呼ばれる部材を使って必要な距離を確保し、設置数や配置間隔を確認するとともに、コンクリートを打設しても鉄筋の位置がずれないよう注意して施工します。
柱や梁などでは、鉄筋同士をつないだり、鉄筋にかかる力を建物へ確実に伝えるため、鉄筋を必要な長さコンクリート内部に定着させます。
鉄筋同士を重ねてつなぐ「重ね継手」や、鉄筋同士を接合するガス圧接については、位置や長さが図面通りになっているか確認します。特に柱と梁が交わり、大きな力がかかる部分(パネルゾーン)では、継手を設ける位置に細心の注意が必要です。
また、鉄筋がコンクリートから抜け出さないために必要な埋め込み長さである「定着長さ」も、構造上重要な確認項目となります。
鉄筋同士は、結束線を使って固定します。
この固定が緩いと、コンクリートを打設したときの振動や圧力によって、鉄筋の位置がずれてしまう可能性があります。そのため、必要な箇所が確実に結束されているか、結束忘れがないかを配筋検査で重点的に確認します。
配筋が終わると、コンクリートを打設する前に、工事監理者による確認および建築基準法上の特定工程に該当する第三者機関による中間検査(「第5回:港南台駅前のビル建替えプロジェクト~基礎配筋後の中間検査~」に記載の2回目の中間検査)を行います。
検査では、鉄筋の位置や間隔だけでなく、給排水管や電気配線などの埋設物と鉄筋が干渉していないか、必要な間隔が確保されているか確認します。
一度コンクリートを打設すると鉄筋が隠れてしまいます。そして、万が一打設後に問題があっても修正が困難なため、コンクリート打設の直前に配筋検査を行います。
鉄筋はコンクリートを打設すると見えなくなり、建物完成後に簡単に状態を確認したり、手を加えたりできる部分ではありません。だからこそ、配筋の段階で、かぶり厚さや継手、定着、鉄筋の固定などを確認し、必要な検査を経てから次の工程に進むことが重要だと考えます。
当社も完成後に長く物件を管理していく立場から、後になって確認することが難しい構造部分について、施工中にどのような確認が行われているかを把握しておくことを大切にしています。


配筋検査に合格したら、いよいよコンクリートを打設します。

コンクリート打設は、一度始めるとやり直しがきかない「一発勝負」の大切な工程です。品質を確保していきます。
コンクリートは、気温や天候の影響を受ける材料です。
真夏の高温時や真冬の低温時は、コンクリートの固まり方など品質に影響するため、天候や気温を考慮した打設計画が必要です。
また、打設するコンクリートの量や順番、作業時間の配分を緻密に計画します。作業の途中で時間が空きすぎると、先に打設した部分と後から打設した部分がきれいに混ざり合わず、コールドジョイント(打ち継ぎ不良)ができてしまうからです。
そのため、休憩の取り方も含め、作業を途切れさせない打設計画を事前にしっかり検討することが大切です。
現場にミキサー車で届いた生コンクリートは、そのまま打設するわけではありません。打設する前に、規定された品質を満たしているか受入検査を行います。
コンクリートの柔らかさを測定する「スランプ試験」や、内部に含まれる空気量を測定する「空気量試験」、塩化物イオンの量を測定する「塩化物試験」などを行います。さらに、打設したコンクリートが設計どおり所定の強度が出ているか将来的に確認するため、圧縮強度試験に使用する供試体も採取します。
完成後はコンクリート内部の状態を直接確認できないため、実際に使用するコンクリートの品質を打設前に受入検査で確認しておくことが重要となります。
コンクリートは、ただ型枠の中に流し込めば終わりではありません。
内部の空気を抜きながら型枠の隅々まで行き渡らせるため、細かな振動を与える「バイブレーター」という振動器具で締固めをします。
特に鉄筋が密集している場所や角の部分はコンクリートが十分に行き渡りにくく、ジャンカができやすいため、丁寧な作業が求められます。また、高い位置からコンクリートを落とすと、コンクリートを構成する材料が分離する原因となるため、落とす高さにも注意が必要です。
コンクリート工事は、打設が終わった時点で完了ではありません。
コンクリートは打設後、時間をかけて硬化しながら強度を増していきます。この過程で急激に乾燥すると、ひび割れが発生する原因になるため、気温や季節に応じて適切な養生を行います。
打設後のコンクリートを適切な状態に保ち、必要な強度が発現する環境を整えることも、重要な工程です。
コンクリートは、建物完成後も躯体として長期間に渡って建物を支え続けます。打設時の品質やその後の養生は、将来のひび割れや劣化などに関わるため、完成後の維持管理と切り離して考えることはできません。
当社は施工を行う立場ではありませんが、完成後には建物の状態を継続して確認して、必要に応じて修繕を提案していく立場になります。そのため、完成してから建物を見るだけでなく、どのような品質管理のもとで作られているかも把握しながら、工事の進捗を確認しています。
当社は設計や施工を担う立場ではありません。
しかし、完成後に物件の管理を担当し、オーナー様とともに建物を長く見ていく立場だからこそ、建設中の工程と完成後の管理を切り離して考えることはできません。
建物が完成すれば、日常の管理では外装や内装、設備など、目に見える部分の状態を確認することが中心になります。一方で、その建物がどのように作られ、施工時にどのような確認や品質管理が行われてきたかは、完成後の建物を見ていくうえで大切な背景情報になります。
将来、建物に変化が生じたときや修繕を検討するときにも、建設時の状況を把握しておくことは、建物の状態を考えるうえで役立つはずです。
今回ご紹介した型枠、配筋、コンクリート打設は、完成後には目にすることがない工程です。しかし、こうした目に見えなくなる部分での丁寧な施工と確実な確認の積み重ねが、この先何十年にもわたって建物を支える力になっていきます。
その一つひとつを丁寧に進め、確認を重ねながら施工していただいている施工会社の皆様にも、改めて感謝しています。
引き続き、建設中から施工会社とコミュニケーションを取り、工事の進捗や確認内容を把握しながら、完成後の管理へつなげていきたいと考えています。
港南台駅前のビル建替え工事は、地下や基礎を中心とした工事から地上階へと進み、これから少しずつ建物の姿が見えるようになっていきます。
今後も、単に「どこまで建物ができたか」だけではなく、完成後に物件管理を担当する立場から、どのような考え方で工事が進められているのかも含めて、このプロジェクトの進捗をお伝えしていきます。
■これまでの港南台駅前ビル建替えプロジェクト記事
第1回:港南台駅前の当社管理物件のビル建替え工事プロジェクト
第2回:港南台駅前のビル建替えプロジェクト~杭工事~
第3回:港南台駅前のビル建替えプロジェクト~安全と品質を支える現場の準備~
第4回:港南台駅前のビル建替えプロジェクト~配筋工事の準備~
第5回:港南台駅前のビル建替えプロジェクト~基礎配筋後の中間検査~
第6回:港南台駅前のビル建替えプロジェクト~地中で進む電気設備工事~