2024年12月10日 | コラム
「景観は良いし静かで落ち着いた場所だけど、土地の特性的に仲介での売却は難しいと不動産屋に言われた。」「売却するために先に土地を整備しようと思うが、造成費などの開発費が高額で売却を断念しかけている。」「土砂崩れのリスクが心配で早く売却したいが仲介で買い手が見つからない。」「実家を相続したが、遠方ということもあって放置しているが、所有しているとコストがかかるので早く売却したいが、どういう方法が良いのか分からない。」
崖地・傾斜地の売却に関して、このようなお困りごとを多く伺います。
崖地や傾斜地は特性上、平坦な土地と比べて、一般的に売却が難しくなります。そのため、このようなお困りごとがある場合、仲介での売却ではなく、不動産会社による買取がおススメです。
本記事を読むことで、主に次の内容を理解することができます。
崖地・傾斜地の特性を知ることで、仲介での売却が難しくなる理由を理解しやすくなるので、崖地・傾斜地とは何か?から説明します。
「崖」という文字からのイメージのとおり、傾斜が急な土地を指します。
傾斜が急な土地って、ずいぶん曖昧だなと思うかもしれませんが、崖地の定義は各地方自治体によって変わります。通称「がけ条例」と言われるもので、たとえば当社がある神奈川県ですと、神奈川県建築基準条例第2条の3で、「こう配が30度をこえる傾斜地をいう。」と定義されています。
傾斜が急なため、土砂崩れなどの危険性が高く、建築制限がある場合が多くなります。そのため、一般的に、宅地としての利用は難しくなります。
地面が斜めに傾いている土地を指し、崖地ほど急な斜面ではない土地になります。なお、法令等によって「がけ」のように定義はされていません。
宅地として利用される場合もありますが、造成が必要になる場合が多くなります。
崖地・傾斜地ともに、自然に形成された土地と宅地造成などの際の切土や盛土によって人工的に作られた土地があり、高低差があって眺望がよく自然豊かな場所が多いのが特徴です。
崖地の説明で、建築制限がある場合が多くなると書きました。
崖地や傾斜地に家を建てて住んでいる人は、家を建てるときに業者と相談しながら、各種法律に対応したり、地盤調査をして地盤強化をするなど、大変だったのではないでしょうか?いつ家を建てたかによりますが、家を建てたときよりも法改正により規制内容が厳しくなっている法律がある可能性があります。
一方、家を建てて住んだことがなく、更地の土地を売却しようとしている人もいるでしょう。その場合、崖地や傾斜地は、言われてみれば建築するために法的制約があっておかしくないな、と思うのではないでしょうか?
「え?こんなにあるの?」と驚くかもしれませんが、関係する法律が1つ2つではないのが特徴です。代表的なものを5つ紹介しますが、詳細な内容を伝えるには法律ごとに記事が必要になってしまうため、ここでは概要だけ紹介します。押さえて欲しいポイントは、建物を建て替えたり、新しく家を建てるには、「さまざまな法律で建築制限がかかること」、「制限される内容が法改正によって厳しくなっていること」です。
都市計画法は、「土地利用を適正に計画することで、良好な都市環境を維持し、住民の安全や快適性を確保することを目的」とした法律です。
都市計画区域内では用途地域ごとに土地利用のルールが定められています。崖地や傾斜地が市街化調整区域に該当する場合は、原則として新規の建築や開発行為は認められません。宅地化するためには、原則として安全対策をしたうえでの開発許可が必要となります。市街化調整区域以外では、建ぺい率や容積率の制限、地盤や擁壁の強化が求められます。
建築基準法は、「建築物の構造や設置場所に関する基準を定めることで、建築物の安全性を確保し、災害を防止することを目的」とした法律です。
崖地や傾斜地における建築は、地盤の不安定さや土砂災害のリスクを考慮し、安全性を確保するための規制が設けられています。例えば、崖からの距離や高さに応じた構造基準が定められており、建物の基礎や擁壁を強化することが求められる場合があります。また、建築可能な位置や構造に制約がかかる場合もあります。具体的には、各地方自治体のがけ条例で規定されます。
宅地造成及び特定盛土等規制法は、「宅地造成工事によって生じる災害を防止し、安全な生活環境を確保することを目的」とした法律です。2021年7月に熱海市で、盛土が崩落して大規模な土砂災害が発生したことを踏まえて、宅地造成等規制法を抜本的に改正し、2023年5月26日から施行されています。
土地の用途に関わらず、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制しています。盛土等により人家等に被害を及ぼしうる区域を規制区域として指定し、盛土等は都道府県知事の許可が必要となります。宅地造成や新規の建築は、土砂災害や盛土による崖崩れなどの災害を防ぐために、切土や盛土の高さや範囲が規制され、擁壁の設置や排水施設の整備、地盤の強化が必須とされる場合があります。
土砂災害防止法は、「土砂災害から人命や財産を守ることを目的」とした法律です。
崖地や傾斜地のような土砂災害のリスクが高い場所での利用や開発を制限しています。土砂災害による人的被害のリスクが特に高い区域は、土砂災害特別計画区域(レッドゾーン)に指定され、居住を目的にした建築物の新築、増改築は建築基準法に基づく許可が必要になります。また、安全性を確保するために擁壁や土砂流入を防ぐ排水設備、土留など防災設備の設置、避難経路の確保などの対策を施す必要があります。
急傾斜地の崩壊による災害防止に関する法律は、「土砂災害の危険がある急傾斜地を規制・管理することで、人命や財産の保護を目的」とした法律です。
崩壊の危険のある傾斜地を、傾斜の角度や高さ、周辺土地の利用状況などから、当道府県知事が「急傾斜地崩壊危険区域」に指定し、災害発生リスクを減らすために規制します。新たな建築物の建築には知事の許可が必要となり、崩落防止のための擁壁設置や排水設備の設置、地盤改良など十分な安全対策が求められます。また、地盤を変形させるような開発行為は禁止されます。
各種法律による建築制限の話は、詳しいことは分からなくても、「崖地や傾斜地は土砂災害などの発生リスクがあるような建築はできない。」「建築をするためには、必要な許可を都道府県知事から得て、十分な安全対策をしないといけない。」このあたりが分かれば十分です。
このように、いろいろな法律で建築が制限されるとなると、なかなか買いたい人はいなさそうだな、と思った方が多いのではないでしょうか?
平坦な土地ではなくて、あえて崖地や傾斜地を買いたい人は、たしかに少ないです。特に家を建てるための土地を探している人は、平坦で安全な土地の方が魅力的ですから。ただ、まったくニーズがないかというと、特定の人たちにはニーズがあります。どんなニーズか、一部をご紹介します。
崖地や傾斜地は周囲より高い位置にあるため、景観や眺望を楽しめる絶景の場所が多く、景観や眺望を重視する人にとって魅力があります。そのため、自然や風景を楽しめる土地を求めて、別荘やリゾート施設として利用するために購入するケースがあります。
崖地や傾斜地は、平坦な土地に比べて人通りや交通量が少ない場所が多く、静かな環境を求める人にとって魅力があります。アーティストやクリエイターなど、自然に囲まれた静かな場所で作業や創作活動をしたい人にも適しています。
一部の傾斜地では、果樹や特定の農作物の栽培に適した条件が整っていることがあり、小規模な農地として利用されることがあります。傾斜のある土地で果樹園やガーデニングを楽しみたい人にとっては、手頃な価格で購入できる傾向があるため、趣味としてニーズがあります。
自然の地形がそのまま残されていることが多い崖地や傾斜地は、自然環境を保護したいと考える人にもニーズがあります。森林の保全や野生生物の保護を目的として、土地の開発をせずにそのまま保全地として活用する個人や団体もあります。
建築制限があっても、特定のニーズのある人がいるなら、もしかしたら仲介でも買い手を見つけて売却できるのでは?と思った人もいるでしょう。 それでもやはり、崖地や傾斜地は仲介での売却は難しいです。その理由は、次のとおりです。
いくら特定のニーズがある人にとっては魅力があると言っても、特定のニーズがある人自体が少ないです。仲介で売却しようと思っても、そうそう買い手が見つかるものではありません。
建築制限があることで、購入しても思ったような建物を建てたり、開発ができない可能性があります。そういったリスクを考えて、購入を躊躇する人が多くなります。
仮に購入しても、擁壁や排水設備の設置、地盤改良工事などの必要な安全対策をするためのコストが必要となり、平坦な土地と比べて建築や造成にかかるコストが高くなります。家を建てるだけでも大きな費用が動きますので、追加のコスト負担が高いことはネックとなります。
仮に購入しても、将来的に売却する可能性がある場合、今後も各種法律が改正され制限が厳しくなる可能性があります。そうなると、購入時よりも資産価値が低くみなされ、売却価格が低くなる可能性があります。買い手が将来的なリスクを考慮することで、購入に至りにくくなります。
近年の豪雨に伴う各種災害のニュースを見聞きすることで、いくら安全対策をしっかりして家を建てても、土砂災害にあってしまうかもしれないという心理的な不安が購入意欲を低めることになります。
仲介で売却するのは大変なのは分かった。でも、時間がかかっても売れる可能性もあるし、しばらく所有したまま検討しようと思う人もいるかもしれません。しかし、崖地や傾斜地は土砂崩れや地滑りなどの災害リスクが高いため、所有しつづけていると次のようなデメリットがあります。
安全対策として実施した擁壁や排水設備、土留めなどの維持・メンテナンスが必要となるため、管理費用がかかってきます。また、災害防止のための定期的な点検や補修工事が求められることもあるため、長期的にも管理負担が大きくなる可能性があります。
万が一、所有する崖地や傾斜地で土砂崩れなどが発生し、周囲の土地や他人の財産に被害を与えた場合、所有者が賠償責任を負うことがあります。災害時に周囲に被害が及ばないように管理・対策を行っていくための費用負担もかかります。
たしかに土砂災害のリスクがあるまま所有しつづけることはリスクでしかない。では、仲介で売却する以外でどうすれば良いのか?ということになります。それは、不動産会社による買取です。
崖地や傾斜地を仲介で売却する場合、売却できても相当な時間がかかります。買取であれば、不動産会社や買取業者が直接買い取るため、迅速に売却手続きを進められます。現金での購入が可能なため、すばやく現金化できます。
仲介の場合、建物があれば売却活動にあたって住居の掃除や不用品の処理をしたり、内覧の対応が必要になります。しかし買取は不動産会社や買取業者が買主になるため、内覧対応が必要ありません。また、買取後のリフォームを前提に買い取ってくれるため、売却前の修繕なども必要ありません。
不動産会社や買取業者が買主になるため、宅建業法40条の規定により、売買契約書に明記しない限り売主は建物に欠陥などの瑕疵があっても責任を負わない、契約不適合責任を免責されます。
不動産会社や買取業者は、物件を調査して瑕疵の有無を確認して買い取ります。しかし、故意または重大な過失で瑕疵を隠蔽している場合などは、契約不適合責任を負う可能性がありますので注意が必要です。
仲介で売却する場合、建物に残置物があることでさらに買い手を探すのが難しくなったり、売却価格が下がる可能性があります。売り手で処分するにしても、処分する物によって処分方法が異なるなど、労力が意外と大きくなります。
買取であれば、買取後に残置物を処分する形で買い取ってくれることが多く、残置物処分費用が買取費用から相殺されて減額又は不要になる可能性があります。
買取のメリットをお伝えしましたが、買取にもデメリットはあります。
不動産会社に買い取ってもらう場合のデメリットは、売却価格が相場より低くなりがちな点です。これは、不動産会社が買取後にリフォームや解体、宅地造成、災害対策をして再販する際の費用やリスクを見越して価格設定するためです。
不動産会社や買取業者の中には、不当に低い価格で買い叩こうとする会社があります。また、高価買取を謳って高い査定額を提示した後に、さまざまな費用を差し引いて最終的な売却価格を低くする、契約解除に高額な違約金を請求する会社もあります。
買取のデメリットとして書いたような悪質な業者を避けるために、買取を依頼する会社を選ぶときには、次のような選び方やポイントを意識すると良いです。
まず、査定は複数の会社に依頼しましょう。複数社に査定を依頼することで相場観が分かり、適正価格を見極めやすくなります。単純に一番査定価格が高い会社を選ぶと、悪質な業者にあたる可能性もあるため、他のポイントもあわせて選ぶようにしましょう。ちなみに、一括査定は便利ですが、一括査定サイトに登録していない会社もたくさんあるため、一括査定サイトだけでなく、検索して気になる会社をピックアップして査定依頼することも大切です。
初めて相談するときは不安が付きものです。相談に丁寧に対応してくれるか、要望をじっくり聞いてくれるか、疑問に思ったことを何でも聞ける雰囲気かなど、担当者の対応は大切な要素です。信頼性や誠実さを感じられる担当者であれば、不安や疑問を解消しながら安心して取引を進められます。
査定価格の根拠が明確で、費用の内訳などを具体的に説明してくれる会社は信頼性が高く、納得感のある取引ができます。特に、法的な制約に対応するための造成費用や安全対策費用は、法規制を理解したうえでの明確な内訳や根拠の説明があると安心できます。査定価格が高くても、根拠が不明確、あいまいな説明の場合は、後から追加費用を請求されたり、売却価格が大きく変わる場合がありますので注意が必要です。
崖地や傾斜地の買取実績が豊富で評判が良ければ安心です。しかし、実績は公開できるものばかりではありませんし、クチコミは真偽が怪しいものがたくさんあります。そのため、公開されている情報がああっても参考程度にし、その他の要素を自分自身で確認して納得感をもって進めることが重要です。
崖地や傾斜地の買取の流れは、大きく次のような流れで進みます。
① 不動産会社を探す
崖地や傾斜地の買取を相談する不動産会社を探します。
② 不動産会社に買取査定を依頼する
不動産会社に崖地や傾斜地の買取の査定を依頼します。
査定には、机上査定と訪問査定があります。机上査定は該当する法規制の確認、(建物があれば)建物の情報、過去の取引事例などを基に、おおよその査定額を算出します。訪問査定は地形・地盤や周辺環境、(建物があれば)建物の調査、法規制と現地の実際の状況の照合など、詳細に調査した上で、査定額を算出します。
何社かに机上査定を依頼して概算の査定額を把握した後、気になる会社に訪問査定を依頼すると安心です。
③ 買取金額を交渉する
買取金額が提示されたら、実際の買取金額を交渉します。他社の査定金額などを参考にして、納得して依頼できるよう交渉します。
④ 売買契約を締結する
崖地や傾斜地の買取を依頼する不動産会社を決定して、売買契約を締結します。買取金額や決済日、引き渡し日など、売買条件を具体的に定めた契約書を作成します。売買契約が成立すると、不動産会社から買取金額の5~10%が手付金として支払われます。
⑤ 不動産を引き渡して代金を受け取る
不動産を引き渡して、不動産会社から残金が支払われます。
売却時に一般的に売主が負担する費用は次のものがあります。
① 印紙税
売買契約書の作成にあたり、売買代金に応じて収入印紙を貼付する必要があります。
② 登記費用
所有権移転登記を行うために、登録免許税が必要になります。
③ 譲渡所得税・住民税
売却益が出たときは、譲渡所得税と住民税を支払う必要があります。ただし、譲渡所得が特別控除の範囲内であれば税金がかからない場合もあります。
その他、売却する崖地や傾斜地に住宅ローンなどの抵当権が設定されている場合、売却前に抵当権を抹消する必要があるため抵当権抹消費用がかかります。また、土地の境界が不明確な場合や正確な面積を確認するために測量が必要な場合は、測量費がかかります。
仲介での売却が難しい物件は崖地や傾斜地以外にも、袋地、再建築不可物件、旗竿地、共有持分などいろいろあります。売却が難しい理由は物件によって変わってきますが、法規制が厳しく、災害リスクが高く、造成費用が高いなどの理由から、崖地や傾斜地の仲介での売却は、非常に難しいと言えます。
売却価格の観点では、仲介で売却できるに越したことはありません。しかし、売却できたとしても、一般的には相当な期間が必要となり収益化が遅くなったり、価格交渉で買い手が造成費用や災害リスクを考慮して強く出てくることで収益が低くなったりする可能性があります。そのため、不動産会社によって断られることもあるでしょうし、引き受けても熱心に取り組んでもらえない可能性があります。
もし、「思ったように仲介での売却が進まない」、「時間をかけずに迅速に売却して現金化したい」といったことがあれば、不動産会社に一度買取の相談をしてみることをおススメします。
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