大分佐賀関の大規模火災に学ぶ空き家放置の危険性

2025年11月27日 |  コラム

大分市佐賀関で2025年11月18日に、170棟以上が延焼する大規模火災が発生しました。

今回の火災にはいくつかの要因が指摘されており、その一つが過疎化に伴う住宅事情です。佐賀関地区は過疎化が進み、この10年で人口が3割近く減少。2020年度の調査によると、約4,200世帯のうち約16%にあたる561件が空き家だったと言われています。

さらにこの地区は、古い木造住宅が密集し、建物同士の距離も非常に近い地域。道路の道幅も狭く、消防車が現場の近くまで入れなかったようです。また、この道幅が狭いことに起因して空き家の解体が進んでいなかったという背景もあったようです。

他にも強風や地形など複合的な要因もありましたが、今回の火災をきっかけに、「空き家が防災面で抱えるリスク」が改めて注目されています。空き家は火災の延焼を早めるだけでなく、老朽化によって火元そのものになる可能性もあります。

空き家は他にも、倒壊や放火、近隣トラブル、資産価値の低下など、さまざまなリスクを抱えています。

「そのうち対応しよう」と先送りしている空き家にも、思わぬリスクが潜んでいるかもしれません。ぜひ一度、現状と向き合うきっかけにしてみてください。

この記事を読むことで以下のことが分かります。

  • 空き家を放置すると何が起きるのか
  • 火災につながりやすい理由
  • 解体が進まない地域で起きている“構造的な問題”
  • 実際に取れる対策や選択肢

空き家が火災リスクを高める理由

大分の火災には地域特有の要因もありましたが、「空き家が火災を広げる」「空き家が火元になる」という構造そのものは、全国どこでも起こり得る問題です。

空き家が一般の住宅よりも火災リスクを格段に高めてしまう理由には、次の4つがあります。

1.長期放置により「可燃性が極度に高い状態」になる

空き家は長期間手入れがされないと、内部に可燃性の高いものが蓄積されていきます。

  • 木材が乾燥し、一度着火すると一気に燃え広がりやすい
  • 燃えにくい加工がされた内装材が剥がれたり、断熱材が老朽化して火の勢いを抑えにくい
  • 窓ガラスが破損して風が入り込み、建物内部に火の粉が入りやすい

特に築古の木造住宅は、見た目以上に内部が脆くなっていることが多いため、火がつけば短時間で隣家に延焼を始める“燃えやすい状態の建物”になりやすいのです。

2.気づかない場所で「設備が劣化・ショート」する

空き家でも電気やガスを止めずに通電したままの物件は珍しくありません。長期間、点検や管理がされていない配線や設備は使用の有無に関わらず、経年劣化による危険性が高まります。

  • 長期間使われていない配線の被覆(ひふく)が劣化し、漏電やショートの原因になる
  • 小動物(ねずみなど)が天井裏や壁の内部で配線をかじり、ショート火災につながる
  • 特に古い金属製のガス管が腐食・劣化し、ガス漏れや引火のリスクを高める

誰も使っていないからこそ小さな異常が放置され、「誰も住んでいないはずの家」が火元になってしまう可能性があるのです。

3.火災原因で最多!「放火・不審火」のターゲットになりやすい

空き家は人目につかず、管理が行き届いていないため、放火犯にとって格好のターゲットとなりやすいです。

  • 窓や戸の施錠が不完全な場合が多く、侵入や不審物の投棄が容易にできる
  • 夜間は真っ暗で人の出入りがないため、不審な行動が目撃されにくい

総務省消防庁の統計によると、空き家火災の原因で最も多いのは「放火」または「放火の疑い」です。管理されていない建物は「狙われやすい建物」という認識が必要です。

4.発見の遅れが「初期消火の機会」を奪う

空き家は住人がいないため、火災が発生しても誰も警報に気づかず、初期消火の機会を失ってしまいます。

近隣住民が気づいたときには、すでに火の勢いが強まり、窓から炎が噴き出している、または広範囲に煙が充満しているなど、手のつけられない状態になっていることがほとんどです。

この発見の遅れこそが、空き家火災が隣接する建物への延焼リスクを劇的に高める、最も危険な要因の一つです。

なぜ空き家の解体が進まないのか

大分の火災では、「空き家を解体したくても、そもそも解体が進まない」という空き家率が高まる原因がありました。

空き家が増え続ける背景には、単に所有者の問題だけでなく、地域特有の構造的な要因があります。これは佐賀関地区に限らず、全国の古い住宅街や密集地で共通して見られる、深刻な社会問題です。

【物理的な制約】道が狭く重機が入らない地域が多い

古い住宅街では、幅1~2m程度の狭い道路(狭隘道路)しかないことも珍しくありません。

  • 重機や解体車両、廃材トラックが現場まで物理的に入れない
  • 足場を組むスペースがない

こうした物理的な制約が、解体作業を根本的に困難にしています。

【費用的な制約】「手運び」でコストが高騰する

重機が入らない現場では、作業は人力に頼らざるを得ません。木材、瓦、壁材といった大量の廃材を人が手作業で運び出すため、作業効率が悪く、どうしても人件費が大幅に高騰します。

場合によっては、通常の解体費用よりも1.5~2倍近くに高くなることもあります。

自治体は解体費用の一部を支援する補助金制度を設けていますが、狭小地や密集地では解体費用の高さから、補助金が出ても自己負担が重くのしかかります。

この費用負担が「解体したいけどできない」という所有者の判断を遅らせる最大の原因となっています。

【法的な制約】所有者不明で「手がつけられない」

空き家が放置される大きな原因の一つに、所有権の問題があります。

  • 相続が繰り返され、登記が更新されていない(未登記・共有状態)
  • 行政が調査しても、現在の所有者が誰なのか特定できない
  • 管理者が高齢で対応できない、相続人が遠方に住んでいて関心がない

特に相続未登記の状態では、法律上、解体工事の契約や売却手続きを進めることができません

【制度的な壁】「固定資産税の特例」が解体をためらわせる

空き家を解体してしまうと固定資産税が上がるのではないかという話はよく聞かれますが、これは「住宅用地の特例」という制度が関係しています。

この特例は、住宅が建っている土地の固定資産税を最大で6分の1に軽減するもので、家を解体して更地にしてしまうと、この軽減措置が外れて税金が上がります。

老朽化して危険な空き家は「特定空き家」に指定されれば特例から外れます。しかし、「特定空き家」に指定されるまでは特例が維持されるため、「税金が上がるのが嫌だから壊さないでおこう」と所有者に判断させてしまう“制度的な足かせ”となっている側面も指摘されています。

火災以外に空き家を放置するリスク

火災のほかにも、空き家を長期間放置することで起こる問題は、いろいろあります。「今は特に問題ないから大丈夫」と思っても、建物は時間とともに劣化し、やがて誰かに迷惑をかけ、最悪、所有者に高額な請求が来てしまう可能性があります。

空き家放置がもたらす5つの主要なリスクを見ていきましょう。

リスク1)命の危険に関わる「倒壊リスク」と所有者の賠償責任

空き家は通気性が悪く湿気がこもりやすい環境のため、通常の住宅よりも急速に劣化が進みます。

  • 湿気による柱や梁の腐食、シロアリ被害による建物の耐久性の低下
  • 屋根や外壁の破損、そこから雨水が侵入し、建物の傷みを加速

台風や大雨、地震、積雪などにより、倒壊や外壁・屋根材の剥落につながるリスクがあります。もし、倒壊によって通行人や隣家に被害が出た場合、所有者は民法717条の工作物責任などに基づき、損害賠償責任を負うことになります

リスク2)地域の環境と安全を脅かす「犯罪・治安悪化」のリスク

管理されていない空き家は、地域の治安を乱す犯罪の温床になりやすいと言われています。

  • 特に人目につかない夜間などに放火のターゲットとして狙われやすい
  • 子どもの遊び場、ホームレスの寝床など、不特定多数の不法侵入を招く
  • 家具、家電、産業廃棄物などの不法投棄場所となり、環境を悪化させる

こうしたトラブルが発生すると、近隣住民の生活環境と安全性が脅かされ、地域コミュニティ全体から苦情や行政指導につながります

リスク3)生活環境を悪化させる「害獣・害虫の発生」

手入れがされない空き家は、庭木や雑草が伸び放題になり、害獣や害虫の格好の棲み処となります。

  • ハチ、蚊、ムカデなど害虫の大量発生
  • ネズミ、アライグマ、ハクビシンなど害獣が侵入し、糞尿や騒音被害を隣家に与える
  • 隣地へ枝葉が越境したり、落ち葉が雨樋を詰まらせたりするなど、物理的なトラブルに発展する

これが近隣住民の生活環境を著しく悪化させ、所有者と近隣住民との関係悪化を決定づける原因になります。

リスク4)見過ごせない「資産価値の急速な低下」

放置期間が長くなるほど、建物は加速度的に劣化し、将来の売却や活用の道が閉ざされてしまいます。

  • 建物の傷みやゴミの放置が現地の印象を悪くし、買い手がつかなくなる
  • 老朽化が進むほど解体費が高くなり、売却前に多額の出費が必要になる
  • 放置された境界問題や登記のトラブルが解消されず、取引が難航する

空き家の放置は、将来の売却チャンスと価格を自ら下げてしまうという経済的なダブルパンチを所有者に与えます。

リスク5)最大のリスクは「行政代執行による高額請求」

危険性が極めて高い空き家と認定された場合、自治体は所有者に改善を命じます。それでも改善されない場合、「特定空き家」に指定された上で、行政代執行(強制的な解体)が行われるケースがあります。

行政代執行で解体された費用は、すべて所有者に請求されます。解体費用は市場価格より高くなる傾向があり、数百万円~一千万円近くになることもあります。

空き家の放置は、火災・倒壊・犯罪・近隣トラブル・資産価値の低下、そして行政代執行という「所有者の財産を脅かす最大のリスク」を抱えています。「いつか何とかしよう」で済む話ではなく、放置期間が長いほど、これらの状況は確実に悪化していく問題なのです。

空き家をどうすればいいのか?実際の選択肢

空き家問題は、「いつか何とかする」という考え方は危険です。リスクをこれ以上拡大させないためにも、現状に応じた具体的な一歩を選ぶことが大切です。

リスクと対策の土台となる「現状把握」からはじめる

具体的な対策を決める前に、空き家がどの程度のリスクを抱えているかを正確に把握することが、最適な選択肢を見つける最短ルートです。

・建物の老朽度:屋根、外壁、基礎の劣化、雨漏り、シロアリ被害の有無
・土地の状況:隣地との境界、越境トラブルの有無
・権利関係:相続登記が完了しているか、共有名義は話がまとまっているか
・行政リスク:特定空き家予備軍として行政指導が入る可能性の有無

自分一人で判断できない場合は、不動産会社や建築士に現地調査を依頼すると確実です。現状を把握することで、「修繕して活用できるか?」「解体は必須か?」「現状のままで売却できるか?」といった方向性が明確になります。

売却する

空き家を手放し、さまざまなリスクから解放される最も現実的な解決策が売却です。建物の状態やスピード感などの優先度に応じて、以下の3つのパターンが選べます。

● 古家付き土地として仲介売却

買主が解体費用を負担するため、所有者は解体費用が必要ありません。また、周辺相場に近い価格での売却が期待できます。建物は古いが高額な解体費用を避けたい、売却を急いでおらず時間に余裕がある場合に適しています。

● 現状のまま「不動産会社」に直接売却(買取)

「とにかく早く処分したい」場合に最適です。買い取った不動産会社が、解体から残置物の撤去、手続きまで丸ごと引け受けてくれることが多いです。価格は仲介より下がりますが、建物が著しく老朽化している、売却までのスピード感を優先したい、確実にトラブルなく売却したい場合に適しています。

● リフォーム・リノベーションして売却

費用対効果が合えば高値で売却できる可能性があります。ただし、築古物件では修繕費が売却額を上回るリスクがあります。築年数が比較的浅い、構造がしっかりしている物件の場合は検討する価値があります。

「更地化」して売却・活用への道を拓く

老朽化が著しく、倒壊や放火のリスクが非常に高い空き家は、解体して更地にすることがベストなケースもあります。

解体費用の高騰リスクがある(大分の事例のように重機が入らない)地域では、解体費をかけてでも更地にするメリットがあるかを慎重に見極める必要があります。

・【解体する判断】解体費以上の高額売却が期待できる、土地活用(駐車場など)が明確に見込める、何よりリスクから一刻も早く解放されたい。
・【解体しない判断】解体費が高すぎて売却益が出ない、土地の活用方法がない、固定資産税の優遇措置が外れる。

この判断は、不動産会社と解体業者の両方から見積もりを取り、売却価格との比較を行うことで精度が上がります。なお、不動産会社と解体業者が別の場合は、外注のマージン分高くなるため、解体事業を行っている不動産会社に見積り依頼するのがベストです。

「相続手続き・名義整理」を最優先に進める

空き家問題の放置を難しくしている大きな要因は、権利関係の問題です。

相続未登記や共有名義の状態では、法律上、解体の契約も、補助金の申請も、売却も、すべて物理的に進めることができません

2024年4月1日から相続登記が義務化されました。放置し続けると、過料(罰金)が科される可能性があるほか、行政による管理命令が発動されるリスクも生じます。

まずは、誰が所有者か、相続登記が完了しているか、未登記状態であれば一刻も早く司法書士に相談し、名義整理を最優先に進めてください。

費用負担を軽減する自治体の補助金を活用する

空き家対策は自治体も積極的に取り組んでおり、空き家解体補助金、危険空き家除却補助金、リフォーム補助金などが用意されています。

補助金を活用すれば数十万円~最大100万円以上の支援を受けられる可能性がありますが、以下の点に注意が必要です。

・条件の確認:補助金の対象や金額、申請の条件は自治体ごとに大きく異なる
・時間の管理:申請手続きに数か月かかるため、解体や売却のスケジュール管理が重要となる

一人で悩まない、専門家に相談すると最短で解決できる

空き家は「建物×土地×相続×行政」が複雑に絡む問題です。「何から手をつければいいか分からない…」という方こそ、専門家(不動産会社、司法書士など)に早めに相談することで、最適な解決の最短ルートが見つかります。

築古・密集地・狭小地の空き家は「時間との戦い」

空き家問題はどの地域にも存在しますが、その中でも 「築古×密集地×狭小地」が重なるケースは、放置すればするほど状況が悪化し、リスクとコストが一気に増えていきます。

これは「様子を見てから」「数年後に考える」という先延ばしが、最も致命的な結果を招きやすいタイプの空き家です。

老朽化は「加速度的」に進み、近隣トラブルへ直結する

建物の劣化は、「直線」ではなく、「加速度的」な速度で進行します。一つの破損が、次々と新たな問題を引き起こします。

たとえば、

・雨漏り・腐食の連鎖:屋根や外壁の破損→雨水侵入→土台や柱の腐食→建物の傾きや倒壊リスク増。
・近隣迷惑の連鎖:外壁の剥離や窓の破損→小動物や害虫の侵入→糞尿や騒音→近隣住民からの苦情が絶えない状況へ。

結果として、「1年前は50万円の補修で済んだはずの箇所が、今年は150万円かかる」という現象が普通に起こり、放置の代償が年々高額になっていくのです。

近年の解体費高騰と負のループ

解体費は資材や人件費の高騰により年々上昇しています。特に密集地・狭小地では、その値上がり幅が大きくなります。

・狭隘地コストの増幅:重機が入らないため人力解体となり、人件費が跳ね上がります。また、隣家が近いため、足場や防護ネットといった養生費も高額になります。

・「普通の解体費×1.5~2倍」になることも珍しくなく、大分の火災地域と同様、「解体したくても高くてできない→放置→さらに劣化して解体費がもっと高くなる」という負のループに陥りやすいのです。

近年の異常気象などによる災害リスクの増加

近年、台風、豪雨、地震などの大規模災害の頻度が増しています。

築古の空き家は、災害に対して非常に脆弱です。強風で屋根が飛散したり、地震で倒壊したりするリスクは年々高まっています。

もし放置したまま被災した場合、「建物が一部損壊し売ることもできなくなる」だけでなく、倒壊や飛散物によって「隣家に被害を出し、所有者が高額な損害賠償を請求される」という、予測不能な負債を抱える可能性もあります。

最も危険なのは「動かないうちに選択肢が減る」こと

築古・狭小・密集地の空き家は、状態が悪化するほど選択肢がどんどん狭まります

・早い段階 → 「現状販売」「古家付き」「買取」「解体売却」など複数の選択肢
・劣化が進む → 「買取のみ」あるいは「解体前提」でないと売却できない
・さらに放置 → 行政代執行 or 事実上売却不可

「もっと早く動いていれば、解体費を払わずに済んだ」「売却益が出た」という後悔を避けるためにも、現状把握と専門家への相談を、最も危険な空き家から一刻も早く始める必要があります。

まとめ

今回の大分県佐賀関の大規模火災は、「特殊な地域の出来事」に見えるかもしれません。

しかし実際には、空き家が増えている地域は、同じような危険の構造を抱えており、こうした状況は地方だけでなく、都市部の古い住宅地でも同じように起きています

空き家問題は、放置しても自然に解決することはありません。

むしろ、

・老朽化が加速度的に進む
・解体費は毎年上がる
・火災や倒壊のリスクは膨らむ
・行政代執行という“最悪のケース”もある
・売却できるタイミングを逃す

など、時間が経つほどリスクとコストだけが増えていきます

「あとで考えよう」「来年にしよう」と後回しにして放置すればするほど危険が増え、採れる選択肢はどんどん狭まっていきます。もし相続した実家が空き家になっているなら、まずは一度専門家に相談し、現状を整理するところから始めてみてください。

当社は不動産の仲介、買取だけでなく、建設業許可業者として解体も行っています。空き家の場合はお客様のご要望を伺って、古家付きでの仲介、買取、リフォームについて最適なご提案をさせていただきます。まずはお気軽にご相談ください。ご相談は無料です。

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