2024年11月23日 | コラム
「売りに出しているが購入希望者がまったく現れない。」「固定資産税や管理費の負担が大きいので早く売却したいけど、特殊な土地らしく、どうするのが良いか分からない。」「相続したが住む予定がないので売却したい。詳しくは聞いていないけど隣家の権利がどうとかで複雑そうで不安。」
囲繞地(いにょうち)の売却を検討している人には、このような悩みや不安を抱えている人がたくさんいます。本記事を読んでいるあなたも、同じような悩みや不安があるかもしれません。
囲繞地はその特性から、仲介で一般の買い手を見つけて売却するのが難しくなります。買い手を見つけられても、売却までに長期間かかったり、そのうえ利用に制約がない土地と比べて売却価格が低くなりがちです。そのため、不動産会社に直接買い取ってもらう方法がおススメとなります。
なお、囲繞地の売却方法の説明は、袋地(ふくろち)とセットの記事がほとんどです。たしかに、囲繞地の特性は袋地とセットで説明すると分かりやすいです。しかし、売却に関することは、両方が混在すると分かりにくくなります。そのため、本記事では囲繞地に限定して説明します。袋地の売却についても知りたい場合は、こちらをクリックしてお読みください。
本記事を読むことで、主に次の内容を理解することができます。
囲繞地とは、上図のように袋地を囲む土地のことです。
囲繞地に囲まれている袋地は、不動産の専門家でなくても、売却するのが難しそうと思う人が多いと思います。公道に接していないですから。「そんな土地が本当にあるの?」と思う人もいるでしょう。一方囲繞地はというと、「普通の土地に見える。別に問題ないんじゃないの?」と思うのではないでしょうか?
それがそうでもないのです。
囲繞地通行権というものがあって、それが囲繞地の売却を難しくしてしまいます。
売却を難しくするって、いったい囲繞地通行権とは何だろう?と思いますよね。
実際に囲繞地に住んでいて売却を検討している人にとっては、当然知っていることでしょう。しかし、相続した土地が囲繞地で売却を検討している人の中には、被相続人から聞いておらず、何のことかさっぱり分からないという人もいるでしょう。囲繞地通行権のことを理解しないと、最適な売却方法の検討やスムーズな売却が難しくなるので、読み飛ばさずにしっかり読んでください。
上図のとおり袋地は公道に接していません。そのため、袋地の所有者が公道に出るためには、袋地を囲っている囲繞地を通るしかありません。袋地の所有者が、公道に出るために囲繞地を通行する権利を「囲繞地通行権」と言います。
公道に至るための他の土地の通行権として民法第二百十条~第二百十三条で規定されています。民法第二百十条~第二百十三条はこちらからご確認ください。
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
第二百十条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
袋地の所有者は囲繞地の所有者の許可を得ることなく、囲繞地を通行して公道に出ることができます。囲繞地の所有者は通行を拒否したり制限することはできません。
第二百十一条 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
2 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。
囲繞地通行権が認められているとはいえ、さすがにどこでも好き勝手に通行できるということはありません。通行に必要な範囲で、かつ、囲繞地の所有者に与える損害が最も少ない方法を選択しないといけません。また、必要があれば通路を開設することも可能となっています。
必要な範囲や損害が最も少ない方法は、個々のケースによって決まりますが、「徒歩のみ」「通行できるのは幅2m程度」と非常に限定的な内容になるのが通例です。
第二百十二条 第二百十条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。
袋地の所有者は通行する囲繞地の所有者に対して、通行料の支払いが必要になります。厳密には償金なので、通行の対価ではなく補償金の一種になりますが、金銭の支払いが必要で1年ごとに支払うことになります。
金額は協議によって決まりますが、決まらない場合は、裁判所が近隣の相場を参考に決めることもあります。
“第二百十三条 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。“
共有地を分割、土地を分筆・譲渡したことによって袋地ができた場合は、無償で通行できます。これは分割などにより袋地ができることが分かるためです。また、囲繞地通行権は分割・分筆などでできた囲繞地のみになります。関係ない囲繞地に通行権は認められません。
袋地の所有者と囲繞地の所有者でトラブルになりやすいことは、基本的に、囲繞地通行権に関することになります。
通行権に関する内容を明確に記載した書面を作成して双方で合意していれば良いですが、曖昧にしていると、通行可能な範囲や時間、通行方法で意見が食い違ってトラブルになることがあります。また、通行料の支払いの有無や時期についてトラブルになることもあります。
これらは、今現在問題が起きていなくても、売却後に囲繞地の新しい所有者との間で問題になる可能性があります。
この囲繞地通行権があるため、買い手から敬遠されやすくなります。
自分が買い手側だったらと想像してみてください。もし、購入した敷地内を知らない人が日常的に通ることになると思ったらどう思いますか?多くの人は抵抗感があるはずです。そして、いくら隣人とは言え防犯面でも不安を感じる人も多いでしょう。
また、上記のようなトラブルが起きるかもしれないと思うと、購入を躊躇する人もいるでしょう。
先ほども書きましたが、囲繞地の所有者は通行を拒否できませんので、どうしようもありません。
中には、前の所有者と袋地の所有者との間で合意した内容なので、囲繞地を購入した購入者との間では有効ではないのでは?と思う人もいるかもしれません。
しかし、一般的には、前の所有者と袋地の所有者との間で合意した囲繞地通行権は有効とみなされます。不動産には、土地そのものだけでなく、付随する権利や義務が伴います。囲繞地通行権は土地に付随する権利の一つなので、土地の所有者が変更になっても権利自体が消滅することはないのです。
仲介で売却するのが難しいとなると、どうやって売却するのが良いかですが、大きく2つあります。1つは袋地の所有者に売却する方法、もう1つは不動産会社に買い取ってもらう方法です。
もし、袋地の所有者に売却を打診できるようであれば、打診してみると良いです。袋地の最大の問題点のひとつは、「再建築不可物件」に該当することです。囲繞地を購入することで、接道義務を満たすことでき、再建築不可物件に該当しなくなります。そうなれば、建て替えや増築、改築の制限がなくなります。これは袋地の所有者にとっては大きなメリットになります。
また売主にとっても、袋地の所有者への売却であれば通行権の問題で頭を悩ませる必要がなくなるのはメリットになります。
もちろん、囲繞地を購入するにはそれなりの費用が必要になるため、袋地の所有者に購入してもらうのは簡単なことではありません。しかし、可能性としてゼロではないなら打診してみる価値はあります。
もう1つが、不動産会社による買取です。
買取という言葉を初めて見る人がいるかもしれませんが、一般の買主を探して売却するのが不動産仲介で、不動産会社が買主となって売却するのが不動産買取です。
仲介で売却したくても、買い手が見つからず売れなければ現金化できません。不動産買取であれば、査定額に納得できれば売買契約を締結して確実に売却することができ、すぐに現金化できます。
また、仲介と比べて買取にはさまざまなメリットがあるため、囲繞地通行権がネックとなって買い手が見つからない、売却する精神的負担を避けたい、といった方におススメの売却方法になります。
囲繞地を不動産買取で売却するメリットは、次のとおりです。
囲繞地を仲介で売却する場合、相当な時間がかかることが予想されます。買取であれば、不動産会社や買取業者が直接買い取るため、スピーディーに売却手続きを進められます。現金での購入が可能なため、スピーディーに現金化できます。
仲介の場合、売却活動にあたって住居の掃除や不用品の処理をしたり、内覧の対応が必要になります。しかし買取は不動産会社や買取業者が買主になるため、内覧対応が必要ありません。また、買取後のリフォームを前提に買い取ってくれるため、売却前の修繕なども必要ありません。
不動産会社や買取業者が買主になるため、宅建業法40条の規定により、売買契約書に明記しない限り売主は建物に欠陥などの瑕疵があっても責任を負わない、契約不適合責任を免責されます。
不動産会社や買取業者は、物件を調査して瑕疵の有無を確認して買い取ります。しかし、故意または重大な過失で瑕疵を隠蔽している場合などは、契約不適合責任を負う可能性がありますので注意が必要です。
仲介で売却する場合、ただでさえ買主を探すのが難しい囲繞地では、残置物があることでさらに買主を探すのが難しくなったり、売却価格が下がる可能性があります。売主で処分するにしても、処分する物によって処理方法が異なるなど、処分にかかる労力が意外と大きくなります。
買取であれば、買取後に残置物を処分する形で買い取ってくれることが多く、残置物処分費用が買取費用から相殺されて減額又は不要になる可能性があります。
囲繞地通行権の設定状況や利用方法が曖昧な場合、不動産会社が提携する経験豊富な弁護士のサポートにより、通行権に関する同意や条件の明確化を図ることができ、売却後のトラブルを回避しやすくなります。
売却後の通行権のことは関係ないと思うかもしれません。しかし、隣接した土地に住んでいる方との関係性ですので、売却するから関係ないということではなく、立つ鳥跡を濁さずではないですが、トラブルが起きないよう問題を解決することも大切だと思います。
囲繞地の売却に限りませんが、不動産会社に買い取ってもらう場合のデメリットは、売却価格が相場より低くなりがちな点です。これは、不動産会社が買取後にリフォームや解体をして再販する際の費用やリスクを見越して価格設定するためです。
不動産会社や買取業者の中には、不当に低い価格で買い叩こうとする会社があります。また、高価買取を謳って高い査定額を提示した後に、さまざまな費用を差し引いて最終的な売却価格を低くする、契約解除に高額な違約金を請求する会社もあります。
買取のデメリットとして書いたような悪質な業者を避けるために、買取を依頼する会社を選ぶときには、次のような選び方やポイントを意識すると良いです。
まず、査定は複数の会社に依頼しましょう。複数社に査定を依頼することで相場観が分かり、適正価格を見極めやすくなります。単純に一番査定価格が高い会社を選ぶと、悪質な業者にあたる可能性もあるため、他のポイントもあわせて選ぶようにしましょう。ちなみに、一括査定は便利ですが、一括査定サイトに登録していない会社もたくさんあるため、一括査定サイトだけでなく、検索して気になる会社をピックアップして査定依頼することも大切です。
初めて相談するときは不安が付きものです。相談に丁寧に対応してくれるか、要望をじっくり聞いてくれるか、疑問に思ったことを何でも聞ける雰囲気かなど、担当者の対応は大切な要素です。信頼性や誠実さを感じられる担当者であれば、不安や疑問を解消しながら安心して取引を進められます。
査定価格の根拠が明確で、費用の内訳などを具体的に説明してくれる会社は信頼性が高く、納得感のある取引ができます。査定価格が高くても、根拠が不明確、あいまいな説明の場合は、後から追加費用を請求されたり、売却価格が大きく変わる場合がありますので注意が必要です。
囲繞地の売却は、囲繞地通行権や場合によっては接道義務など法的な確認が必要になります。また、売却にあたって袋地の所有者とトラブルになる可能性があります。通行権の調整など法的な問題が生じたときに解決できる、専門性のある弁護士等と提携するなど体制がしっかり構築できていると安心です。
囲繞地の買取実績が豊富で評判が良ければ安心です。しかし、実績は公開できるものばかりではありませんし、クチコミは真偽が怪しいものがたくさんあります。そのため、過度に信用するのではなく、その他の要素を自分自身で確認して納得感をもって進めることが重要になります。
囲繞地買取の流れは、大きく次のような流れで進みます。
① 不動産会社を探す
囲繞地の買取を相談する不動産会社を探します。
② 不動産会社に買取査定を依頼する
不動産会社に囲繞地買取の査定を依頼します。
査定には、机上査定と訪問査定があります。机上査定は物件の情報や過去の取引事例などを基に、おおよその査定額を算出します。訪問査定は現地を訪れて通行権の状況、隣接地との関係、土地や建物の状況、周辺環境など詳細に調査した上で、査定額を算出します。
何社かに机上査定を依頼して概算の査定額を把握した後、気になる会社に訪問査定を依頼すると安心です。
③ 買取金額を交渉する
買取金額が提示されたら、実際の買取金額を交渉します。他社の査定金額などを参考にして、納得して依頼できるよう交渉します。
④ 売買契約を締結する
囲繞地の買取を依頼する不動産会社を決定して、売買契約を締結します。買取金額や決済日、引き渡し日など、売買条件を具体的に定めた契約書を作成します。売買契約が成立すると、不動産会社から買取金額の5~10%が手付金として支払われます。
⑤ 不動産を引き渡して代金を受け取る
不動産を引き渡して、不動産会社から残金が支払われます。
囲繞地の売却時に一般的に売主が負担する費用は次のものがあります。
① 印紙税
売買契約書の作成にあたり、売買代金に応じて収入印紙を貼付する必要があります。
② 登記費用
所有権移転登記を行うために、登録免許税が必要になります。
③ 譲渡所得税・住民税
売却益が出たときは、譲渡所得税と住民税を支払う必要があります。ただし、譲渡所得が特別控除の範囲内であれば税金がかからない場合もあります。
その他、売却する囲繞地に住宅ローンなどの抵当権が設定されている場合、売却前に抵当権を抹消する必要があるため抵当権抹消費用がかかります。囲繞地の境界が不明確な場合や正確な面積を確認するために測量が必要な場合は、測量費がかかります。
囲繞地は、囲繞地通行権が原因で仲介での売却は難しく、不動産会社による買取がおススメとなる理由を説明してきました。
買取は仲介で売却するよりも、売却価格が低くなる傾向にありますが、いつまでも買い手が見つからず売却できない状況がつづき、固定資産税と管理費の負担だけかかるのは一番避けたい状況だと思います。
もし、囲繞地通行権がネックとなって売却が思うように進んでいないようであれば、一度、囲繞地の買取をしている不動産会社に相談をしてみると良いです。相談をしてみて、買取で売却することにするなら、複数社に査定を依頼して、親身になって相談に乗ってくれる会社を探してみてください。
本記事が囲繞地の売却で悩む方の参考になれば嬉しいです。
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