2024年11月22日 | コラム
「長期間売りに出しているがまったく買い手がつかない。」「不動産会社に売却の相談をしに行ったら、需要が極めて少なく仲介を引き受けても売却が難しいからと断れた。」「相続した土地が袋地という特殊な土地だった。売却するのが難しいらしいが、住む予定もないのでどうにかして売却したいがどうするのがいいか分からない。」
袋地(ふくろち)の売却を検討している人には、このような悩みや不安を抱えている人がたくさんいます。本記事を読んでいるあなたも、同じような悩みや不安があるかもしれません。
囲繞地はその特性から、仲介で一般の買い手を見つけて売却するのが難しくなります。買い手を見つけられても、売却までに長期間かかったり、法的な制約のため売却価格が低くなりがちです。そのため、不動産会社に直接買い取ってもらう方法がおススメとなります。
なお、袋地と囲繞地の売却については、1つの記事で説明しているものが大半です。しかし、袋地と囲繞地の売却は、まったくと言っていいほど異なりますので、袋地の売却に関する内容だけお伝えします。囲繞地についても参考に知りたい方は、こちらをクリックしてお読みください。
本記事を読むことで、主に次の内容を理解することができます。
袋地とは、上図のように他の土地に囲まれていて公道に出られない土地のことです。
袋地を所有していて、売却を検討している人は知っていることでしょう。しかし、相続した土地が袋地で、自分で住んだことがないためイメージが湧かない人もいると思います。そこで、基本的な内容かもしれませんが、袋地の特性から順番に説明していきます。
袋地というものを初めて知った人は、「道路に面していない土地があるの?」「どうやって道路に出るの?」と思った方は多いのではないでしょうか。一般的な土地のイメージは、道路に面しているはずなので、当然の疑問です。
実は、人口が集中して建物やインフラが密集する地域では、都市計画法で都市計画区域や準都市計画区域が定められています。それらの区域内で建物を建てる場合、建築基準法により接道義務が課されます。
接道義務とは、「幅員4m以上の道路に、道路との間口が2m以上接していないといけない」というものです。これは建築基準法第42条および43条で定められています。
建築基準法第42条および第43条はこちらからご確認ください。
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201#Mp-Ch_3-Se_2
接道義務があるので、都市計画区域や準都市計画区域に住んでいる人には、土地は道路に面しているイメージになるのだと思います。
では、なぜ接道義務が存在するかというと、消防車や救急車といった緊急車両が入れるようにすることで、消火活動や救助活動をスムーズに行えるようにするためです。火災が発生したときに消防車がスムーズに消火活動ができないと、火災による被害が周辺に拡大してしまう危険があります。急病人が出たときに救急車が入れないと、搬送等に時間を要し、最悪命に関わる危険があります。こうした危険を回避するために、接道義務があります。
袋地はというと、公道に出られない土地ですので、接道義務を満たしていない土地になります。
接道義務を満たしていないことが、売却するときに大きなネックになってきます。
接道義務を満たしていないと、再建築不可物件に該当して、建物を建て替えることができないのです。袋地は接道義務を満たしていないため、再建築不可物件とみなされます。再建築不可物件というのが、売却においてもっとも大きな問題になります。
再建築不可物件は接道義務を満たすまで、建物が老朽化しても建て替えができませんし、地震や火災など予期せぬ災害で建物が倒壊しても建て替えができません。築年数が古い物件も多くありますが、建て替えができないことは居住者にとって不安でしかありません。
再建築不可物件でも、リフォームはできます。ただし、建築申請が不要なリフォームだけになります。建築申請が不要なリフォームというのは、建物の構造や用途に大きな変更を及ぼさない軽微なリフォームになります。たとえば、壁紙やフローリングの張替え、トイレやキッチンなどの交換、建物内部の間仕切り壁の変更、屋根の塗装や補修などです。
ただ、囲繞地通行権を設定している隣地の居住者との調整が必要になったり、部材や機材の搬入の手間がかかるので工事費用が膨らんでしまします。
老朽化しても建て替えられない。リフォームは軽微なものしかできず、しかも工事費用が膨らむ。そのような物件を積極的に購入したい!という人は、そうそういないことは想像できると思います。
さらっと囲繞地通行権という言葉を書きましたが説明します。
袋地は公道に接していません。では、どうやって道路に出るかというと、隣地である囲繞地を通ることになります。袋地の所有者には、道路に出るために囲繞地を通行する囲繞地通行権が法的に認められています。
とはいえ好き勝手に通行できるわけではありません。必要な範囲で、かつ、囲繞地の所有者に与える損害が最も少ない方法を選択しないといけません。そのため、囲繞地の所有者と、通行可能な範囲や時間、通行方法などについて合意をして、償金(通行料)を支払うことで通行することになります。
袋地の所有者としても、いくら法的に認められた権利と言えども、他人の敷地を通行することにストレスを感じる人もいるでしょう。逆もまた然りで、隣地の所有者としても他人が敷地内を通行するのに抵抗感があったり、防犯面で不安を感じるものです。そのため、囲繞地通行権に関してはトラブルになる可能性があります。
再建築不可物件で、老朽化が進んだ後の建て替えができない不安があるだけでなく、日常的に他人の敷地を通って道路に出ないといけないことで精神的な負担も感じるとなると、ますます一般の買い手を見つけるのは難しくなるのはイメージできるのではないでしょうか。
袋地が仲介で一般の買い手を探して売却しようとしても、買い手が見つからず、売却が難しくなる理由はこれだけではありません。他に、次のような理由があげられます。
再建築不可物件は建て替えができないため将来的な資産価値が低くなります。また、借り手が返済不能に陥った場合に、土地を担保にして売却しても資金回収が困難な可能性が高いです。そのため、金融機関にとって袋地はリスクが高く、住宅ローンの審査が通りにくくなります。住宅ローンを利用しない人に買い手が限られるので、仲介での売却は難しくなります。
袋地は周りを囲繞地に囲まれているため、すべてに建物があると日当たりや風通しが悪くなります。また、敷地に余裕がなく密集している場合は建物の距離が近く、騒音も気になるかもしれません。このように住環境が悪くなると、物件の人気が低くなり、買い手がほとんど付かなくなります。
道路に面していれば通行人の目がありますが、袋地は周りを囲繞地に囲まれているため、通常の土地よりも人目につかず、死角が発生しやすくなります。最近では、道路に面していても白昼堂々窃盗が起きているため、空き巣などの被害に遭うリスクを考えると、買い手の不安が大きくなり敬遠されてしまいます。
袋地は周りを囲繞地に囲まれているため、給排水管を引き込むために必ず囲繞地に埋設しなければなりません。給排水管でトラブルがあって工事が必要な場合は、給排水管が埋設されている隣地所有者の許可が必要になります。許可を得るまで工事ができませんし、人間関係によっては許可を得るのにストレスがかかります。
囲繞地通行権のところで少し書きましたが、原則として囲繞地の所有者に対して償金(通行料)を支払う必要があります。固定資産税などの税金ではなく、通行料という形で固定費として支払いが発生することが、買い手にマイナスな印象を与えてしまいます。
仲介での売却が難しい袋地を売却するにはどうしたら良いかですが、売却方法は大きく2つあります。1つは隣地の所有者に売却する方法、もう1つは不動産会社に買い取ってもらう方法です。
もし、囲繞地の所有者に売却を打診できるようであれば、打診するのが一つの手です。囲繞地の所有者としても囲繞地通行権で自分の敷地内を通行されるのはストレスなはずです。袋地を購入することで、通行されるストレスや防犯上のリスクから解放されるなら購入しようと考える人がいるかもしれません。
とはいえ、現実的にはそういった考えの人はあまりいないでしょう。それなりの資金が必要になりますし、むしろ、自分の都合で売り付けて来ようとするなんて失礼だ!と関係が悪化してしまうリスクもありますので、打診する場合は慎重に判断するのが良いです。
袋地の売却方法としては不動産会社による買取がおススメになります。一般の買主を探して売却するのを不動産仲介、不動産会社が買主となって売却するのを不動産買取と言います。
袋地はここまで見てきたように様々な問題点やリスクがあるため、仲介で売却するのは相当困難です。そのため、早く確実に売却したいなら買取一択と言っても良いでしょう。査定額に納得できれば売買契約を締結して、すぐに現金化できます。
袋地を「売却せずに住み続ける」または「売却しやすくする」ために、接道義務を満たすようにする選択肢もあります。「再建築不可物件でなくなれば住み続けたい」、「将来的な売却を考えて少しでも高く売れるようにしておきたい」などの場合は、旗竿地にすることで接道義務を満たすことができます。そのためには2つ方法があります。
囲繞地の所有者と交渉して、囲繞地の土地の一部を購入します。
自分の土地の囲繞地の土地を同等面積交換します。
いずれの場合も、道路との間口を2m以上にすることで、接道義務を満たすことになり、建て替えや増改築が可能となります。ただ、囲繞地の所有者と交渉が必要になりますので、日頃からの良好な人間関係ができていないと、相談することも難しいかもしれません。
袋地を不動産買取で売却するメリットは、次のとおりです。
袋地を仲介で売却する場合、相当な時間がかかることが予想されます。買取であれば、不動産会社や買取業者が直接買い取るため、スピーディーに売却手続きを進められます。現金での購入が可能なため、スピーディーに現金化できます。
仲介の場合、売却活動にあたって住居の掃除や不用品の処理をしたり、内覧の対応が必要になります。しかし買取は不動産会社や買取業者が買主になるため、内覧対応が必要ありません。また、買取後のリフォームを前提に買い取ってくれるため、売却前の修繕なども必要ありません。
不動産会社や買取業者が買主になるため、宅建業法40条の規定により、売買契約書に明記しない限り売主は建物に欠陥などの瑕疵があっても責任を負わない、契約不適合責任を免責されます。
不動産会社や買取業者は、物件を調査して瑕疵の有無を確認して買い取ります。しかし、故意または重大な過失で瑕疵を隠蔽している場合などは、契約不適合責任を負う可能性がありますので注意が必要です。
仲介で売却する場合、ただでさえ買主を探すのが難しい袋地では、残置物があるとさらに買主を探すのが難しくなったり、売却価格が下がる可能性があります。売主で処分するにしても、処分する物によって処理方法が異なるなど、処分にかかる労力が意外と大きくなります。
買取であれば、買取後に残置物を処分する形で買い取ってくれることが多く、残置物処分費用が買取費用から相殺されて減額又は不要になる可能性があります。
仲介の場合、広告などで売却を知った囲繞地所有者が新しい所有者との間に通行権のトラブルが起きないか懸念を抱いて売却に反対することがあります。また、通行権の明確化が不十分だと、新しい所有者との間でトラブルになる可能性があります。買取であれば、経験豊富な不動産会社や提携する弁護士などが交渉することでトラブルを未然に防ぐことができます。
袋地の売却に限りませんが、不動産会社に買い取ってもらう場合のデメリットは、売却価格が相場より低くなりがちな点です。これは、不動産会社が袋地を買取後にリフォームをして再販する際の費用やリスクを見越して価格設定するためです。
不動産会社や買取業者の中には、不当に低い価格で買い叩こうとする会社があります。また、高価買取を謳って高い査定額を提示した後に、さまざまな費用を差し引いて最終的な売却価格を低くする、契約解除に高額な違約金を請求する会社もあります。
買取のデメリットとして書いたような悪質な業者を避けるために、買取を依頼する会社を選ぶときには、次のような選び方やポイントを意識すると良いです。
査定は複数の会社に依頼しましょう。そうすることで相場観が分かり、適正価格を見極めやすくなります。単純に一番査定価格が高い会社を選ぶと、悪質な業者にあたる可能性もあるため、他のポイントもあわせて選びましょう。ちなみに、一括査定は便利ですが、一括査定サイトに登録していない会社もたくさんあるため、一括査定サイトだけでなく、検索して気になる会社をピックアップして査定依頼することも大切です。
初めて相談するときは不安が付きものです。相談に丁寧に対応してくれるか、要望をじっくり聞いてくれるか、疑問に思ったことを何でも聞ける雰囲気かなど、担当者の対応は大切な要素です。信頼性や誠実さを感じられる担当者であれば、不安や疑問を解消しながら安心して取引を進められます。
査定価格の根拠が明確で、費用の内訳などを具体的に説明してくれる会社は信頼性が高く、納得感のある取引ができます。査定価格が高くても、根拠が不明確、あいまいな説明の場合は、後から追加費用を請求されたり、売却価格が大きく変わる場合がありますので注意が必要です。
袋地の売却は、囲繞地通行権や場合によっては接道義務など法的な確認が必要になります。また、売却にあたって囲繞地の所有者とトラブルになる可能性があります。通行権の調整など法的な問題が生じたときに解決できる、専門性のある弁護士等と提携するなど体制がしっかり構築できていると安心です。
袋地の買取実績が豊富で評判が良ければ安心です。しかし、実績は公開できるものばかりではありませんし、クチコミは真偽が怪しいものがたくさんあります。そのため、過度に信用するのではなく、その他の要素を自分自身で確認して納得感をもって進めることが重要になります。
袋地買取の流れは、大きく次のような流れで進みます。
① 不動産会社を探す
袋地の買取を相談する不動産会社を探します。
② 不動産会社に買取査定を依頼する
不動産会社に袋地買取の査定を依頼します。
査定には、机上査定と訪問査定があります。机上査定は物件の情報や過去の取引事例などを基に、おおよその査定額を算出します。訪問査定は現地を訪れて通行権の状況、隣接地との関係、土地や建物の状況、周辺環境など詳細に調査した上で、査定額を算出します。
何社かに机上査定を依頼して概算の査定額を把握した後、気になる会社に訪問査定を依頼すると安心です。
③ 買取金額を交渉する
買取金額が提示されたら、実際の買取金額を交渉します。他社の査定金額などを参考にして、納得して依頼できるよう交渉します。
④ 売買契約を締結する
袋地の買取を依頼する不動産会社を決定して、売買契約を締結します。買取金額や決済日、引き渡し日など、売買条件を具体的に定めた契約書を作成します。売買契約が成立すると、不動産会社から買取金額の5~10%が手付金として支払われます。
⑤ 不動産を引き渡して代金を受け取る
不動産を引き渡して、不動産会社から残金が支払われます。
袋地の売却時に一般的に売主が負担する費用は次のものがあります。
① 印紙税
売買契約書の作成にあたり、売買代金に応じて収入印紙を貼付する必要があります。
② 登記費用
所有権移転登記を行うために、登録免許税が必要になります。
③ 譲渡所得税・住民税
売却益が出たときは、譲渡所得税と住民税を支払う必要があります。ただし、譲渡所得が特別控除の範囲内であれば税金がかからない場合もあります。
その他、売却する袋地に住宅ローンなどの抵当権が設定されている場合、売却前に抵当権を抹消する必要があるため抵当権抹消費用がかかります。袋地の境界が不明確な場合や正確な面積を確認するために測量が必要な場合は、測量費がかかります。
袋地は、再建築不可物件とみなされること、隣地を通って道路に出る囲繞地通行権の2つをはじめ様々な理由から、仲介での売却は難しく不動産会社による買取がおススメとなる理由を説明してきました。
買取は仲介で売却するよりも、売却価格が低くなる傾向にありますが、袋地の売却は非常に難しいため、迅速に確実に売却して現金化できる買取は優先して検討すべき選択肢となります。
もし、袋地の売却を不動産会社に相談して断れた方やどうするのが一番良いか考えあぐねている方は、一度、袋地の買取をしている不動産会社に相談をしてみると良いです。相談をしてみて、買取で売却することにするなら、複数社に査定を依頼して、親身になって相談に乗ってくれる会社を探してみてください。
本記事が袋地の売却で悩む方の参考になれば嬉しいです。
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