境界未確定で相続した実家の仲介での売却を断られた方は買取がおススメ

2025年5月28日 |  コラム

「申し訳ございませんが、当社では仲介できません」

相続した実家の売却で相談した不動産会社から予想外の一言が。

理由を聞くと、“境界が未確定だから仲介では扱えない“とのこと。

「境界?未確定?そんなの田舎の話じゃないの?」と思いましたが、話を聞くうちにだんだん状況が飲み込めてきました。

売却しようとしているのは、都市部にある両親が住んでいた実家。隣家との間にはちゃんとフェンスもあって、まさか境界に問題があるなんて思ってもみなかった土地です。

でも、「登記上の境界線と現地のフェンスや塀が一致しているとは限らない。測量図も古く、隣地との境界が正式に確定していない状態です。」「仲介で売却にするには、境界を確定する必要があります。」と言われたのです。

しかも、境界を確定するには、測量費用として数十万円、手続きに数ヶ月、さらに隣地の所有者の立会いや合意といった手間がかかるとのこと。場合によっては、隣地の協力が得られず、話が進まないケースもあるとか。。

隣地との境界が確定していないのにも驚いたけど、境界を確定するために隣地所有者の協力が得られないこともあるというのも、そんなことあるんだと驚きました。

このような感じで、相続した実家を売却するときに予想していなかった境界問題に直面することが、都市部でも意外とあります。

隣地の所有者に協力をお願いするストレスはあるかもしれませんが、手間や費用をかけて境界を確定すれば仲介で売却できます。とにかく早く売却したい、忙しいので手間をかけずに売却したい、隣地の所有者と調整するストレスは避けたい・・・などの理由で他の方法をお考えの方には、不動産会社による買取を検討してみることをおススメします。

境界問題でお悩みの方、将来実家を相続する可能性がある方は、最後まで読んでください。

境界未確定だと仲介での売却を断られる理由

まず、冒頭のように不動産会社に境界が未確定なことを理由に、仲介を断られる場合の理由から説明していきます。

そもそも、土地を売却するとき、売主は買主に対して隣地との境界を明示する「境界明示義務」があります。購入した後に、買主が「隣地とのトラブルに巻き込まれる」「境界問題で建物が建てられない、確認申請が通らない」などの事態にならないよう、買主保護を目的とした義務です。

ただし、境界明示義務は法律で定められた義務ではありません。そのため、「境界を明示しない=境界が未確定の状態」で売却することが理論上は可能です。その場合、買主が境界未確定であることを理解・了承し、売買契約に境界非明示の特約を明記して売却するのが一般的です。

しかし、買主に様々なリスクやデメリットがあるため、現実的には売却はきわめて難しいです。

境界未確定での売却に潜むリスク・デメリット

1)隣地所有者とのトラブル

購入後に隣地所有者と境界の認識が異なり、たとえば「自分の土地の内側にあると思っていたブロック塀が、実は隣地の所有地側だった」「建物が越境している」といったクレームを受けるなど、境界に関するトラブルが発生する可能性があります。

2)新築やリフォームに支障ができる可能性

どこまでが自分の土地かが分からないと、購入後の新築や増改築、外構工事で役所に提出する建築確認申請が通らないことがあります。その場合、追加で測量や隣地との交渉をしないと工事そのものができなくなってしまう可能性があります。

3)土地の面積や利用範囲が変わる可能性

購入後に確定測量をして境界を確定したら「思ったよりも面積が小さい」「形状が使いにくい」といったことがあります。金銭的に損をすることになったり、想定した利用用途で使えないといった支障が出たりする可能性があります。

4)住宅ローン審査が通りにくくなる

境界が不明確な土地は担保評価が下がるため、金融機関によっては住宅ローンの審査が通らないことも多くあります。そのため、住宅ローンを使わず、現金で購入できる人しか購入できなくなってしまう可能性があります。

不動産会社が背負うリスク・デメリット

上記の通り、買主にはさまざまなリスクやデメリットがあります。その結果、仲介で売却することで不動産会社にもリスクやデメリットが生まれるため、不動産会社が仲介を断ることになります。

1)買主が見つかりにくい

そもそも購入を希望する買主が見つかりにくい傾向にあります。買主が見つかっても、リスクをもとに売却価格が下がる可能性があります。仲介手数料を得るまでに時間がかかる、売却価格が下がることで仲介手数料が少なくなる、といったデメリットがあります。

2)買主からのクレーム

契約後に買主と売主の間でトラブルが発生すると、仲介をした不動産会社も境界に関する説明が不十分だったとクレームになったり、説明不足による損害として民法上の損害賠償責任を問われるリスクがあります。

ここまで読んで、境界を確定してから仲介で売却すれば問題ないと思いますよね?

しかし、境界を確定するために確定測量してから仲介で売却する場合、確定測量には数ヶ月かかるため、やはり仲介手数料を得るまでに時間がかかることになります。最悪、測量に隣地所有者の協力が得られない場合、測量が完了しないことがあります(確定測量については、後で説明します)。

そのため不動産会社としては、やはり積極的に仲介したい物件にはならないのです。

そもそも「境界」とは?

ここまで、境界が未確定だと仲介が難しいとお伝えしてきましたが、そもそも境界とは何なのか?どうやって決まっているのか?を説明していきます。

不動産における境界とは、簡単に言うと、「自分の土地と他人の土地を区切る線」です。

境界には、筆界(ひっかい)と所有権界(しょゆうけんかい)の2つがあります。なんだか難しそうな用語ですがイメージをつかめれば十分ですので、なるべく簡単に説明します。

筆界とは

筆界は、公的な意味での境界です。

なぜ公的かと言うと、法務局に登記されている不動産登記簿上の区画の境界線だからです。公的な境界線ですので、筆界は土地の所有者同士が話し合いで自由に変更することはできません。

筆界は登記簿に添付されている公図や地積測量図などで確認できます。

所有権界とは

一方、所有権界は、私的な意味での境界です。

なぜ私的かと言うと、土地の所有者同士で認識して決めている境界線だからです。公的な境界の筆界と異なり、土地の所有者同士の話し合いで自由に変更することができます。

一般的にブロック塀やフェンスなどで物理的に区切られていることが多いです。しかし、ブロック塀やフェンスが設置されていても、そこが筆界と一致しているとは限りません

筆界と所有権界のズレ

筆界と所有権界の2つは、本来、一致していることが望ましいです。しかし、古い塀の位置や口約束による土地利用など、さまざまな理由でズレてしまうことがあります。一致していないと、どこからどこまでが自分の土地か不明確になり、状況によっては、境界が未確定とみなされることがあります。

その結果、境界の認識の違いによって隣地所有者とのトラブルにつながるリスクが出てきます。

境界を確定するには?

筆界と所有権界のズレによる原因以外に、境界が未確定になる原因は、たとえば次のようなものがあります。

  • 相続で土地を分筆している
  • 境界標が見当たらない、消失している
  • 工事などで境界標が勝手に動かされている
  • 古い測量図しかなく、現況と一致していない
  • 隣地所有者と境界確認がされていない

こうした境界が未確定な状態を確定するには、境界確定の手続きが必要です。

具体的には土地家屋調査士に依頼して確定測量をすることになります。

隣地の所有者が不明で連絡が取れない場合や妥協点が見つからず話し合いがまとまらない場合は、筆界特定制度を利用したり、それでもダメな場合は最終的には裁判となります。

ここでは、確定測量による境界確定についてのみ説明します。

なお、境界確定は裁判で確定することを意味し、所有者間で確定する場合は筆界確認というのが正確ですが、ここでは分かりやすく境界確定のまま説明を続けます。

境界確定のための確定測量とは?

確定測量の詳しい流れや内容は土地家屋調査士のホームページで確認してください。

基本的に、依頼すれば土地家屋調査士がやってくれる内容になるため、ここでは知っておくと良いことに絞ってお伝えします。

1)隣地所有者への挨拶、立ち会い依頼

土地家屋調査士が隣地の所有者に境界を確認するために測量する旨の挨拶と立ち会いの依頼をします。土地家屋調査士にお任せではなく、ご自身でも挨拶をして協力してもらえるように丁寧に説明することをおススメします。

2)確定測量図の作成

隣地の所有者を含む全員が合意したら、合意した境界位置を示した確定測量図を作成します。

3)境界確認書の取り交わし

間違いなく確認したことを境界確認書(確定測量図を添付)で取り交わします。署名・押印をもって境界を法的に証明できることになります。

4)境界標の設置

確定した境界点に、コンクリート杭や金属標、プラスチック杭などの永続性のある境界標を設置します。

確定測量で知っておくべきポイント

境界を確定させるには「確定測量」という手続きが必要であることをお伝えしましたが、次のポイントを理解したうえで行うようにしてください。

1)費用と期間がかかる

確定測量の費用は、土地の形状や接道状況、隣地の数などによって異なりますが、数十万円はかかります。また、現地調査から隣地の立会い、図面作成まで含めると、完了まで数ヶ月かかります。

2)隣地所有者の立会いと合意が必要不可欠

境界を正式に確定するためには、隣地所有者に立ち会い、位置に合意してもらうことが必須です。この合意がなければ、境界確認書を取り交わすことができず、確定測量も完了できません。

3)確定測量がスムーズにいかない可能性

隣地所有者に立ち会いを拒否されたり、非協力的で合意形成が困難なケースがあります。また、隣地が空き家であったり、相続未登記のまま放置されていると、所有者が分からず連絡が取れない場合もあります。このような状況になると、確定測量が長期化したり、最悪の場合は裁判にまでもつれこむ可能性があります。

境界未確定のままでも売却できる不動産買取

ここまで読んで、

・境界未確定のままでは不動産会社に仲介を断られる可能性が高い
・確定測量をして境界確定するにしても費用と時間がかかる
・隣地の所有者が非協力的で、確定測量がスムーズに進まず長期化する可能性がある

ということを理解できたと思います。

それでも、境界確定してから売却するのも、もちろんありです。土地家屋調査士との連携体制が確立されていない、確定測量を含むことで仲介手数料が入るまでの期間が長くなるのを好ましくないと考える不動産会社には断られる可能性がありますが、引き受ける不動産会社もあるので大丈夫です。

とはいえ、できるだけ早く、確実に土地を売却したいという方もいると思います。

そういう方は、不動産会社による買取がおススメです。

買取は、不動産会社が直接買主になる売却方法です。そのため、仲介と異なり次のようなメリットがあります。

不動産買取のメリット

1)境界未確定でも売却できる

不動産会社は、境界が未確定な土地でも、そのリスクを織り込んだうえで問題ないと判断すれば、買取してくれます。不動産会社は、買取後に確定測量をして境界を確定してから再販します。

2)売却までが早い・手間が少ない

仲介であれば買い手探し、内覧対応、価格交渉、契約など複数のステップが必要ですが、買取なら不動産会社が直接買取るため、迅速に売却できます。会社によっては最短で即日現金化できます。

3)売却後のトラブルリスクがない

仲介では、引き渡し後に「境界が違う」「トラブルが起きた」と買主からクレームを受ける可能性がありますが、買取では不動産会社が内容を把握したうえで購入すること、不動産会社が買主になることで契約不適合責任が免責されることから、売却後のトラブルやリスクを避けることができます。

不動産買取のデメリット

境界未確定のままで売却できることは大きなメリットですが、そのリスクや手間を買主である不動産会社が引き受ける分、買取価格は仲介に比べて低くなるのが一般的です。

とはいえ、測量費用や時間的コスト、精神的な負担を考えると、「確実に売れる」「早く現金化できる」「あとで揉めない」という安心感は、大きいのではないでしょうか。

買取を依頼する不動産会社選びのポイント

境界が未確定な土地でも、不動産会社による買取であれば売却できる可能性があることをご紹介しました。ただし、すべての不動産会社が買取をしているわけではありません。

また、不動産会社によっては高額買取を謳いながら、さまざまな費用がかかって最終的な売却価格が安くなるような悪質な会社もあります。

売却後に後悔することがないよう、買取を依頼する不動産会社選びのポイントをお伝えします。

1)境界未確定の土地の買取実績があるか

境界未確定の土地は、確定測量のところでも書いたとおり、土地家屋調査士との連携体制が確立している会社の方が良いです。そういう会社でないと、境界未確定の買取はしていない可能性もあります。ホームぺージで買取の対象として境界未確定の記載があるか、また相談時に実績を確認してみましょう。

2)担当者の対応は丁寧で信頼できるか

相談に丁寧に対応してくれるか、質問に真摯に向き合ってくれるかなど、担当者の対応は大切な要素です。境界未確定の場合、ただでさえ予想しない境界問題で悩んでいると思いますので、一方的に説明するのではなく、不安が解消されるじっくり話を聞いて提案してくれると安心できるでしょう。

3)査定額は根拠が明確か

買取の場合、査定額と実際の買取額に大きな乖離がある会社があります。そういう悪質な会社は、査定額の根拠が明確でないことが大半です。根拠を明確にして査定額を説明してくれる会社で、その説明内容に納得できるようであれば依頼するくらいのスタンスで、焦らずにしっかり査定額を精査しましょう。

不動産会社による買取の流れ

買取を依頼する場合の一般的な流れを説明します。

①不動産会社を探す

境界未確定の土地の買取を相談する不動産会社を探します。

②不動産会社に買取査定を依頼する

不動産会社に境界未確定の買取の査定を依頼します。

査定には、机上査定と訪問査定があります。机上査定は物件の情報や過去の取引事例などを基に、おおよその査定額を算出します。訪問査定は境界標の有無や隣地との状態、越境物の有無、接道状況などを詳細に調査した上で、査定額を算出します。

③ 買取金額を交渉する

買取金額が提示されたら、買取金額を交渉します。他社の査定金額などを参考にして、納得して依頼できるよう交渉します。

④ 売買契約を締結する

買取を依頼する不動産会社を決めて、売買契約を締結します。買取金額や決済日、引き渡し日など、売買条件を具体的に定めた契約書を作成します。売買契約が成立すると、不動産会社から買取金額の5~10%が手付金として支払われます。

⑤ 不動産を引き渡して代金を受け取る

不動産を引き渡して、不動産会社から残金が支払われます。

さいごに

相続した実家を売却しようとして、不動産会社から仲介での売却をできないと断られたら、本当に驚くと思います。なにより、都市部で暮らしているとお隣さんとの境界があいまいになっている状態なんて、まったく想像さえしていないと思います。

確定測量して境界を確定すればいいんだと分かっても、費用も時間もかかるし、もしお隣さんが協力してくれなかったらどうしよう・・・という不安に駆られると思います。もともとお隣さんと良好な関係で、自分自身もよく知っているという状況なら良いかもしれませんが、それでも確定測量の協力を依頼するのは心理的に負担になるかもしれません。

「できるだけ早く売却したい」、「費用や時間の負担を減らしたい」、「心理的な負担を抱えたくない」という場合は、不動産会社による買取という形で、手間やトラブルを回避しながら売却することをご検討ください。

もし、確定測量を自分で進めるべきか、それとも買取で進めるべきか、どちらが良いか迷われている方は、不動産会社に一度相談してみることをおすすめします。

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