2025年9月11日 | コラム
横浜市港南区の三共住販株式会社です。
先日Yahoo!ニュースに“地価高騰で「相続税が払えない…」 セーラームーン(麻布十番)の土地だと8600万円に?”という記事が掲載されていました。「セーラームーンの土地の相続税」というユニークな切り口だったので、ついつい読んでしまいました(記事はこちらをクリックしてお読みください)。
この記事でも触れられているように、相続税や贈与税の算出に用いられる「相続税路線価」は4年連続で上昇し、2025年度分は前年から2.7%増と、2010年以降で最大の伸び率となりました。
地価が上がること自体は資産価値の向上という面でプラスに思えますが、相続税の評価額も上昇するため、相続税を支払うための資金が足りず、不動産を売却せざるを得ないケースが増えています。
セーラームーンやサザエさん、ちびまる子ちゃんのケースでの相続税額の例など、相続税額計算は税務の専門家の方が作成された元記事に任せることとして、ここでは割愛します。
本記事では、不動産会社の立場から地価高騰した不動産を相続する際に押さえておくべきポイントをお伝えしていきます。
元記事ではリゾート地の路線価が高騰している例が紹介されていましたが、当社がある神奈川県ではどのような状況なのか、最高路線価(各税務署管内で最高の路線価)を確認してみましょう。
※2025年7月1日に国税庁が「令和7年分の路線価図等」を公表しています。詳細なデータを見たい方はこちらをクリックしてご確認ください。
| 所在地 | 最高路線価 (千円) | 前年からの 上昇率 |
| 横浜市鶴見区鶴見中央1丁目 鶴見駅東口広場 | 1,440 | 9.1% |
| 横浜市西区南幸1丁目 横浜駅西口バスターミナル前通り | 17,200 | 1.4% |
| 横浜市旭区二俣川2丁目 二俣川駅南口駅前通り | 840 | 15.1% |
| 横浜市港南区上大岡西1丁目 鎌倉街道 | 1,960 | 12.0% |
| 横浜市神奈川区鶴屋町2丁目 市道高島台107号線(鶴屋橋北側) | 4,400 | 8.9% |
| 横浜市戸塚区戸塚町 戸塚駅西口駅前通り | 1,560 | 6.8% |
| 横浜市青葉区美しが丘1丁目 たまプラーザ駅前通り | 1,710 | 8.9% |
| 川崎市川崎区駅前本町 川崎駅東口広場通り | 6,460 | 6.6% |
| 川崎市高津区溝口1丁目 溝口駅前広場通り | 2,680 | 12.1% |
| 川崎市麻生区上麻生1丁目 リリエンヌ通り | 1,500 | 8.7% |
| 横須賀市若松町2丁目 横須賀中央駅前通り | 820 | 7.9% |
| 平塚市宝町 平塚駅北口広場通り | 860 | 7.5% |
| 鎌倉市小町1丁目 鎌倉駅東口駅前通り | 2,000 | 19.0% |
| 藤沢市南藤沢 藤沢駅南口広場通り | 1,530 | 9.3% |
| 小田原市栄町1丁目 小田原駅東口広場通り | 800 | 6.7% |
| 相模原市南区相模大野3丁目 相模大野駅北口駅前広場通り | 1,140 | 16.3% |
| 厚木市中町2丁目 本厚木駅北口広場通り | 1,250 | 10.6% |
| 海老名市中央1丁目 海老名駅東口駅前通り | 900 | 4.7% |
全国平均では上昇率が2.7%でしたが、神奈川県内の最高路線価地点では、それを大きく上回る上昇率となっている場所が多いことがわかります。これには、駅前の再開発、鉄道の延伸や新駅の開設など、いろいろな要因があります。
また、実家が地方にある方の場合、世界遺産への登録、テーマパークなどのリゾート開発、大規模な工場誘致などによって、思いもよらず地価が急上昇するケースがあります。
地価高騰による相続税への影響をお伝えする前に、まずは相続税の基本的な仕組みを整理しておきましょう。すでにご存じの方は、この章を飛ばして次の「地価高騰による相続税への影響」に進んでいただいて大丈夫です。
相続税の対象となるのは、預貯金や有価証券といった金融資産だけではありません。
土地や建物などの不動産、宝石や美術品などの動産も含め、被相続人が持っていた金銭的価値のあるものすべてが対象になります。
相続税は現金一括納付が原則で、相続人が現金を用意しなければなりません。物納という制度もありますが、条件が厳しく、認められるケースはごく一部になります。
相続の開始があったことを知った日、つまり、通常は被相続人が死亡した日の翌日から10ヶ月以内になります。延納という制度もありますが、物納同様、条件は厳しくなります。
相続税を計算するには、まず財産の価値=相続税評価額を求める必要があります。
不動産の評価は金融資産などと比べて複雑で、国税庁が定めた評価方式をもとに算出されます。詳しい内容は国税庁や税理士のホームページで確認してください。
不動産の中でも土地の評価には、次の2つの方式があります。
・路線価方式:路線価が設定されている地域では、国税庁が公表する路線価を利用して算出する
・倍率方式:路線価が設定されていない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて算出する
どちらの方式でも共通するのは、不動産を取得した時点の金額ではなく、「相続が開始した時点での価値」で評価されるという点です。
この基本を押さえておくと、次の「地価高騰による相続税への影響」が理解しやすくなります。
繰り返しになりますが、相続税は「相続が発生した時点の評価額」で計算されます。
そのため、地価が高騰している地域に不動産を持っていると、購入した時よりも評価額が大きく上がり、相続税が大幅に高くなる可能性があります。
地価が上昇すれば不動産の価値が高くなって、高値で売却できる可能性が高くなります。そのため、地価の上昇は一般的には喜ぶべきことですよね。
ただし同時に、相続税の負担も増えるため、「せっかく不動産の価値が上がったのに、税金で大きく持っていかれる」という状況になりやすいのです。
想定外に相続税が高額になっても、金融資産を十分に保有していれば相続税の支払いに支障を来すこともなく、地価の高騰による不動産価値の上昇を手放しで喜べるでしょう。
しかし金融資産が少なく、相続財産の大部分が不動産の場合は、資産はあるのに現金がない状況になります。そうなると、現金を用意できず納税できないリスクが生じます。
とはいえ、「地価が高騰しているようなエリアの不動産ならすぐに売却して現金化できるはず。売却して納税すればいいだけでは?」と思った方も多いのではないでしょうか。
これは、相続人の人数や相続の内容によって変わってきます。
たとえば、相続人が一人だけなら、再建築不可など条件面に問題がある不動産でなければ、すぐに売却できるでしょう。また、相続人が複数いても、相続人ごとに不動産と金融資産をきれいに分けて相続していれば問題ないケースもあるでしょう。しかし、複数人で不動産を相続すると簡単ではありません。
複数人で不動産を相続する場合は、「売るのか残すのか」「売却後の代金をどう分けるのか」といった話し合いに時間がかかることが往々にあります。合意ができても、相続登記~売却活動~売買契約から引渡・決済といった手続きを進める必要があります。
これらの一連の流れは、半年から1年程度は見ておく必要があり、相続税の納付期限である10ヶ月はかなりタイトと言えます。そのため、納税資金を不動産売却で充当する場合、納税期限に間に合わないリスクがあります。
納税期限に間に合わせるために早く売却しようとすると、希望の条件から売却価格を下げて募集したり、買い手からの値下げ交渉に応じることになり、結果として安く売却せざるを得なくなるリスクがあります。
本来であれば地価高騰による不動産価値のアップは喜ぶべきことです。しかし結果的に、相続税を支払うために不利な条件で売却せざるを得ないという皮肉な状況に陥ることがあるのです。
つまり地価の高騰は、資産価値が増えるというプラス面がある一方で、「相続税の増加」「納税資金不足」「不利な売却」というマイナス面を同時に抱える」点に注意が必要です。
地価の高騰で想定外に相続税が増えてしまうと、本当に納税で困ることになりそうと不安に感じる方もいると思いますが、相続税の負担を軽減できる制度として「小規模宅地等の特例」というものがあります。
これは、被相続人が住んでいた自宅や事業に使っていた土地について、一定の条件を満たせば評価額を最大80%減額できる制度です。
適用を受けられれば、納税額が大幅に下がるので、資金不足のリスクを避けられる可能性が高くなります。ただし、利用できるかどうかは同居状況や相続人の居住要件など細かい条件によって異なるため、早めに税理士など専門家に相談して確認しておくことが重要です。
上記のとおり、相続税の納付期限10ヶ月というのは、余裕がありそうに見えてそんなに余裕はありません。実際に相続があってから慌てて動くと間に合わない可能性があります。だからこそ、親が健在なうちに家族で話し合っておくことがとても大切です。
不動産は誰か一人が相続し、他の相続人は預貯金など金融資産を相続する形にすれば、売却や納税の判断がスムーズになります。
住まいの問題がなければ生前に不動産を売却して、現金や預貯金の形で残しておくことで、納税資金に困るリスクを減らせます。
「誰が住み続けるのか」「住まずに賃貸するのか」「将来的に売却するのか」を話し合っておけば、相続後に揉めることを防げます。
家族と相談して、実家を相続したら売却すると決めた場合、相続が起きる前に少しでも高く売却するためにできることがあります。それは、確定測量です。
隣地との境界が曖昧な状態で不動産を売却すると、後になって買主が隣地所有者と境界がどこかでトラブルになってしまう可能性があります。そのため、境界が確定していないと条件交渉で値下げ要求されることになります。
また、地価が高騰している場合、面積が少し違うだけで売却価格に大きな影響があります。買主も損はしたくないので境界が確定していることが望ましいですし、確定測量をして隣地との境界を明確にすることで、買主が安心して購入でき、希望する価格で売却できる可能性が高くなります。
確定測量には数ヶ月はかかるため、ただでさえ売却までのスケジュールに余裕がない状況では、相続が起きてからでは実施が極めて難しくなります。
なお確定測量のときに、相続する土地と隣地での越境の有無を確認し、越境がある場合は相続後の売却でトラブルを避けるために、隣地所有者との間で覚書を取り交わしましょう。その際あわせて、水道と下水道の越境の有無も専門業者に確認すると良いです。
(境界未確定の不動産の売却や確定測量について知りたい方は別記事で解説していますのでこちらをクリックしてください。)
相続税の納付のため、やはり不動産を売却しなければならない場合は、早めに不動産会社に相談して情報収集することをおススメします。
いくら地価が高騰している地域であっても、不動産は一般的に流動性が低いものなので、売却のための広告を出しても、すぐに買い手が見つかるとは限りません。
地域や物件の条件によって売却までの期間や売却価格は異なりますが、不動産会社に相談すれば「平均してどのくらいで売れるのか」「いくらくらいが相場なのか」を事前に知ることができ、納税資金のシミュレーションがしやすくなります。
不動産には、専門知識がないと見た目だけでは分からない問題が潜んでいることがあります。たとえば、再建築不可の土地、接道条件に難のある土地、老朽化した建物付きの土地、借地権や共有持分など権利関係が複雑なケースです。
早めに不動産会社に確認してもらえば、売却の妨げになる要因を早めに整理し、必要な対策を考えることができます。
相続が始まってから売却の準備をすると、納税期限までに納税資金を用意できないリスクがあります。
事前に相談しておけば「もし相続が発生したら、この流れで売却を進める」という準備ができ、納税期限に追われて慌てて売却することを避けられます。
多くの不動産会社は、税理士や司法書士、土地家屋調査士などの専門家と連携しています。「小規模宅地等の特例」などの制度が自分のケースで使えるかどうか、納税資金の計画、相続登記の手続き、確定測量などをワンストップで相談できる環境を整えておくと、いざという時に安心です。
相続は「まだ先の話」と思っていても、突然訪れるものです。不動産会社に早めに相談して、相場や売却の流れを把握しておくことが、相続税で慌てないための一番の備えになります。
令和7年の最高路線価が示すように、地価は全国的に高騰傾向にあります。
不動産の資産価値が上がること自体は喜ばしい一面もありますが、相続の場面では大きな落とし穴になりかねません。
地価の上昇はそのまま相続税の増加につながり、金融資産が少ない場合は「納税資金が足りない」という深刻な問題に直面します。相続税の納付期限は10ヶ月しかなく、慌てて不動産を売却しようとしても思うような条件で進められないことも少なくありません。
こうしたリスクを避けるためには、親が健在なうちに家族で相談し、方向性を決めておくことが大切です。不動産と金融資産を分けて相続するのか、不動産を事前に売却して現金化するのか、あるいは残すなら誰がどう使うのか、事前に話し合っておくことで相続後の混乱を防げます。
さらに、不動産会社へ早めに相談しておくことで、売却にかかる期間や相場、不動産の潜在的な問題を把握できます。準備ができていれば、相続が起きても慌てる必要はありません。
地価高騰は「資産価値が上がる」一方で、「相続税が払えない」という現実を生み出す可能性があります。だからこそ、今のうちから家族で話し合い、不動産会社に相談して備えておくことが、将来の安心につながります。
そう言えば、「実家のある地域の地価が高騰している」というニュースを見聞きしたことがある場合は、一度お気軽にご相談ください。もちろん、地価の高騰に関わらず不動産の相続に関して不安や悩みがあればご相談ください。