2025年10月23日 | コラム
横浜市港南区の三共住販株式会社です。
不動産を売却する時に不動産会社から言われて、「確定測量」という言葉を初めて知る人も多いと思います。
不動産の売却において、確定測量は法的には義務ではありません。そのため、「境界が不明確な土地」「都市部の地価が高い土地」「分筆登記をする土地」では確定測量が必要という説明の仕方をしている記事もあります。
確定測量をするには土地家屋調査士に依頼して、数十万円の費用がかかり、完了までに1~数ヶ月かかります。「そんなにお金と時間をかけてやる必要があるの?」、「確定測量をしなくても売れるんじゃないの?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、確定測量をせずに境界が確定していない場合、売却後にトラブルが発生すると契約不適合責任が発生する可能性があります。一方で、確定測量を行うことで、少しでも高く、そしてスムーズに不動産を売却できます。
そのため、費用と時間はかかりますが、当社では取引の安全を考慮して、確定測量を行ってから不動産売却を行っています。売却後のトラブルを防止し、少しでも高く売却したい方は、本記事を参考に確定測量の必要性をご理解いただけると嬉しいです。
この記事を読むことで、次のことが分かります。
確定測量とは、土地家屋調査士が隣地所有者立ち会いのもと、関係者全員の合意を得て境界点を決定し、土地の正確な面積を測り、境界を確定させる測量のことを言います。
確定測量の意味を読んで、「そもそも隣接する土地との境界を確定させるってことは、境界が明確になっていない土地があるということ?普通、境界って明確になっているものじゃないの?」という疑問をもった方もいるのではないでしょうか?
たしかに一般的なイメージでは、隣地との境界は明確なはずです。しかし、「隣地との境界を示す境界標や境界杭が、代々土地を引き継ぐ中でいつの間にか無くなっている」、「隣地との間のフェンスや塀の位置が、昔作成した実測図とずれている」といった感じで、境界が曖昧になっていたり、ズレてしまっていることがあるのです。
「確定というからには確定ではない測量もあるの?」と思った方もいるかもしれません。
土地の測量には、大まかな土地の形状や面積を把握するための「現況測量」と言われるものがあります。これは確定測量と違って、今ある境界標や境界杭、フェンス、塀といった現場で確認できる境界点をもとに行われる測量のことで、仮測量とも言います。現況測量では、隣地所有者の立ち会いは不要です。
確定測量と現況測量の最大の違いは、隣地所有者立ち会いのもと、関係者全員が合意して境界点を決定する点にあります。現況測量だけでも不動産の売却は可能ですが、問題が起きるリスクが高くなります。確定測量を行うことで、売却時に「合意された明確な境界」「正確な土地面積」であることを証明でき、問題が起きるリスクを低くできます。
ただ測量して土地面積を把握すれば良いのではなく、隣地所有者立会いのもと境界点を合意しなければならないことから、「なかなか確定測量は大変そう・・・」、「費用や期間はどのくらいかかるのか?」と心配になる方もいると思います。
土地の広さや形状、隣接する土地の数、官民境界(自治体や国が保有する土地と隣接している土地)の有無などによって、費用や期間は異なります。ここでは、おおよその費用と期間をお伝えします。
官民境界がない土地の場合は30~80万円程度、官民境界がある場合はプラス10~30万円程度が目安になります(地域によっても変わりますのであくまで目安です)。「現地作業や立会い・調整の手間が増える」、「役所との調整・行政手続きが必要になる」場合に、費用が高くなります。
特に、以下のような土地では費用が高くなりやすい傾向があります。
確定測量は1ヶ月で完了することもあれば、3ヶ月以上かかる場合もあります。「立会いを調整するための関係者が多くなる」、「役所との調整・行政手続きが必要になる」場合に、長くなる傾向があります。
たとえば、次のような場合は完了までの期間が長くなります。
そのため、売却を急いでいる場合は、確定測量の実施時期を早めに計画しておくことが大切です。売り出す前に確定測量を完了しておくと売却がスムーズに進みます。
このように確定測量をするためには、数十万円程度の費用と1~3ヵ月程度(場合によってはさらに長期)の期間が必要になります。そして、隣地所有者との合意が必要ということで、それらが大きなハードルになって義務でないなら確定測量をせずに売却できないかと思う人もいるのだと思いますが、お薦めできません。
不動産の売却において確定測量は法的な義務ではないとお伝えしましたが、売却にあたって売主には買主に対して境界明示義務があります。とはいえ、境界明示義務もまた法的な義務ではありません。
しかし、買主保護の観点から境界を明示して売却することが求められ、境界が不明確な場合はさまざまなトラブルの要因となってしまいます。
地価の高い都心部などでは、少しの面積の違いが大きな資産価値の違いに繋がることがあります。正確な土地面積や形状が分からなければ建物の設計にも支障が出ることもあります。
また、境界にズレがあったり、隣地所有者との境界トラブルが後から明らかになる場合など、「売主がきちんと確認していなかった」と判断されれば、契約不適合責任を問われ、損害賠償や契約解除を求められることがあります。
確定測量をして確定測量図を添付して売買契約を行うことで、売主・買主の双方が境界の共通認識を持てます。結果として、契約不適合責任を問われるリスクが大幅に減り、売却後の安心感が格段に高まります。
隣地との境界が曖昧だと、隣地所有者と「フェンスや塀の位置のトラブル」、「建て替えや増築時のトラブル」、「越境物によるトラブル」が起こる可能性があると考え、買主が将来的なトラブルを避けるため購入をためらう要因になります。
また、「境界標や境界杭がなく境界が不明確」、「登記簿の面積と実測の面積が異なる」、「古い土地」などの場合、担保評価を出すために金融機関から確定測量図の提出を求められることが多いです。
境界が不明確な土地は担保価値の判断が難しく、結果としてローン審査に通らない、または融資額が減額されることもあります。住宅ローンが使えないと、買主が購入を敬遠する可能性が高くなります。
リスクやデメリットの裏返しになりますが、より詳しくメリットについてお伝えしていきます。
確定測量をしないと契約時点では登記簿上の面積(公簿面積)しか分かりません。登記簿上の面積は、昔の測量技術や図面をもとに作られたもので、実測面積と数十センチ~数メートル単位で違っていることがあります。
正確な面積が分かると、実測面積から算出された売買金額で精算できるため、売主・買主どちらも損得が出ず、安心して契約することができます。
実際の面積、形状、境界線の位置が正確に分かるため、建ぺい率・容積率などの計算を正しくできます。面積や境界線に誤差があると、買主は「思っていたような家が建てられない」など計画変更や追加費用が発生するリスクがあります。
「土地を購入して家を建てる」、「戸建て付きの土地を購入して建て替えする」前提で購入を検討する場合、プランを正確に検討できため、購入するかしないかの判断をしやすくなります。
「売却する土地から隣地」または「隣地から売却する土地」に、建物の屋根やブロック塀、庭木などが越境していないかを正確に確認できます。売却後に越境が判明すると、買主との間で責任の所在をめぐるトラブルになったり、買主が隣地所有者とトラブルになる可能性があります。
確定測量をすることで隣地との境界を法的に明確にし、越境の有無を確認できるため、将来起こり得るトラブルを事前に防ぐことができます。
「売却する土地から隣地」または「隣地から売却する土地」に、上下水道管などのインフラ設備が地中で越境している場合があります。将来の建て替え時に隣地の掘削が必要になると工事の調整が難航したり、隣地からの越境があると建て替え計画に制限が出るリスクがあります。
確定測量をすることで地中のインフラ設備の越境を確認できるため、将来的なトラブルや余計な工事費用を防ぐことができます。
前面道路が私道の場合、共有名義になっている所有者全員の立会いを調整しますが、時間がかかることがあります。将来、建て替えの際に上下水道管の入れ替えや引き直し工事を行う場合、再び所有者全員から掘削承諾書の取得をするのは大変です。
確定測量の立会いのときに同時に掘削承諾書を取得することで、工事をスムーズにストレスなく進めることができ、買主にとって安心して活用できる土地と評価されやすくなります。
売却後に買主が初対面の状態で隣地所有者に立会いを依頼すると、隣地所有者の警戒心が強く、立会いの調整ができるまで時間がかかることがあります。
売主がまだその土地に住んでいる、近所付き合いがあるうちに依頼する方が、顔見知りとして立会いに快く応じてもらえ、調整がスムーズに進む可能性が高いです。近隣関係を活かして確定測量をすることで、売買を安心して進めることができます。
不動産会社は土地を購入する際に、分譲住宅を多く建てられると買取価格が高くなります。
正確な面積や形状、境界の位置が明確になっていれば、土地をどのように区割りして何件分譲住宅が建てられるか正確に判断できます。
実は、確定測量をしたくても困難なケースがあります。ここではよくあるケースと、その際に取るべき対応策を紹介します。
隣地が長期間空き家で、所有者が相続未登記のままだったり、登記簿上の住所に連絡しても連絡が取れないケースがあります。このような場合、隣地所有者に立会いをしてもらえないため確定測量は進められません。
対応策
・司法書士など専門家に依頼して所有者を特定する
・所有者が不明な場合は筆界特定制度(法務局が境界位置を公的に判断する制度)を利用する
とりあえず現況測量図だけでも作成し、売却時には「境界未確定である」ことを明示し、価格や条件で調整するという対応もありますが、基本的には、筆界特定制度を併用して公的な判断として確定するのが現実的です。
隣地の所有者が境界に不満を持っていて立会いを拒否するケースもあります。基本的には話し合いで解決することになりますが、簡単に解決できないことが多く対応が難しくなります。
対応策
・土地家屋測量士が書面で立会い依頼を行い、記録を残す
・話し合いで解決しない場合は、筆界特定制度を利用する
・筆界特定制度を利用しても解決しない場合は、境界確定訴訟を行う
ここでは筆界特定制度は、土地所有者の申請により、筆界特定登記官が外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、筆界の位置を特定する制度です。公的な判断として筆界を明確にできますが、不動産登記簿上の区画の境界線である筆界であって、土地の所有者同士で認識して決める境界線である所有権界ではないことに注意が必要です。
境界確定訴訟まで行くと、判決によって境界線が確定するので解決策としては一番確実ですが、必ずしも自分の主張が認められるとは限りませんし、費用と労力も相当かかることになります。
確定測量は義務ではありません。
売主・買主ともに安心して契約できることが、土地を少しでも高く、スムーズに売却するために重要です。そのためには、義務ではありませんが、売主が確定測量をしてから売却するのが一番です。
土地によっては、国や市町村が所有する公道や水路に接していて、その境界が明確ではない場合があったり、普段は地中にあって意識することがない上下水道管が隣地との間で越境している場合など、確定測量をしていないと売却が難しくなったり、将来的なトラブルにつながってしまうこともあります。
確定測量をして境界を明確にし、越境の有無や正確な土地面積を把握することで、将来起こり得るトラブルを事前に防止できるので、土地売却の際は、確定測量を是非行ってください。
しかし、隣地所有者が立会いを拒否して確定測量ができないケースもあるとお伝えしました。筆界特定制度や境界確定訴訟には時間がかかりますし、隣地所有者との関係が悪化して心的ストレスを抱える場合もあるでしょう。
そのような場合は、不動産会社に買取の相談をするのも一つの選択です。
当社では、土地家屋調査士と連携し、お客様の不動産売却をスムーズに、そして少しでも高く売却できるよう取り組んでいます。不動産の売却をご検討されている方、相続した土地で境界のことがよく分からず不安な方は、お問い合わせください。ご相談は無料です。