2025年9月26日 | コラム
土地を売ろうとしたときに、思わぬ壁となるのが「越境物」の存在です。
越境物とは、法的な境界線を越えて、他人の土地に侵入している建造物や植栽、配管などを指します。普段の生活では問題にならないような、「隣のブロック塀が境界線をはみ出している…」、「庭の樹木の枝や根が隣地に入り込んでいる…」といった問題が、知らない間に土地の資産価値を下げているかもしれません。
特に地方や古い宅地では、地中に埋設された水道管や下水道管、ガス管など、「目に見えない越境」が隠れているケースも少なくありません。こうした越境問題は、いざ売却しようというときに買主から敬遠されやすく、「売却価格が数百万円も安くなる」「買主が見つからない」といった深刻な事態につながることがあります。
この記事では、「越境物がある土地は本当に売れないのか?」「どうすればスムーズに売却できるのか?」という疑問に答え、安心して売却を進めるための具体策を解説します。
この記事を読むと次のことが分かります。
越境には大きく2つのパターンがあります。
「自分の土地から隣地に越境している場合」と「隣地から自分の土地に越境されている場合」です。
自分の土地から隣地に越境している場合は、「自分の所有物が隣地に侵入している」ことになるため、隣地所有者から是正や撤去を求められるリスクがあります。一方、隣地から自分の土地に越境されている場合は、「隣地の所有物が自分の土地を占有している」ことになるため、売却や建て替えを考えたときに障害となる可能性があります。
どちら側から越境しているかによって、問題の性質や対応の仕方が変わってきます。この基本を押さえたうえで、具体的な越境物の種類やリスクを見ていきましょう。
どちら側から越境しているかに関わらず、土地や建物の売却を検討するときに越境があるとリスクを抱えることになります。では具体的にどのようなものが越境する可能性があるかですが、「地上に見えるもの」と「地中に隠れていて見えないもの」の大きく2種類があります。
越境物について詳しく説明していきますが、それぞれ「自分が越境している場合」と「隣地から越境されている場合」の2パターンがあることを意識しながら確認してください。
境界線上に設置されたブロック塀やフェンスが、「隣地にはみ出しているケース」や「自分の土地に入り込んでいるケース」は珍しくありません。
数センチの違いでも境界が不明瞭だと判断され、買主は「購入後に隣地所有者と揉めるのではないか」と不安を抱きやすくなります。
また、このような境界不明瞭な土地は、金融機関が担保評価を下げたり、融資をためらう原因にもなります。金融機関は万が一ローンの支払いが滞った場合、土地を売却して融資金を回収しますが、境界が曖昧な土地は第三者への売却が難しく、担保価値が低いと判断されるからです。
結果として、買主にとって「ローンが組みにくい土地」となるため、売却が難しくなる要因となります。
庭木の枝や根が、境界線を越えて隣地に侵入しているケースも越境物とみなされます。「自分の土地の庭木が隣地に伸びているケース」と「隣地の庭木が自分の土地に入り込んでいるケース」があります。
「枝が少し出ているくらい、よくあることでは?」と思うかもしれません。しかし、根については自分の土地に伸びてきた部分を切ることができますが、枝については原則として勝手に切ることができません。2023年4月の民法改正により、一定の条件を満たす場合は自分で切れるようになりましたが、トラブルを防ぐには隣地所有者との話し合いが欠かせないのが実際のところです。
売却を考えている場合は事前に越境の有無を確認して、必要に応じて隣地所有者と協力して解決しておくことが大切です。大した問題ではないと放置すると、「隣人トラブルを抱えている土地なのでは?」と見なされ、買主から敬遠されるリスクが高まってしまいます。
建物の屋根や庇(ひさし)、雨樋などが境界線を越えて隣地にはみ出しているケースも「越境物」となります。「自分の建物の一部が隣地に入り込んでいるケース」と「隣地の建物の一部が自分の土地に入り込んでいるケース」があります。
「自分の建物の一部が隣地に入り込んでいるケース」では、買主が購入後に建物を解体して新築する場合、境界内で建て直すことで問題は解消できます。しかし、既存の建物のまま住む予定の場合、隣地所有者から「撤去や是正を求められるのではないか」と不安を感じることになります。
一方、「隣地の建物の一部が自分の土地に入り込んでいるケース」では、その部分を自由に使えず、建て替えの際に制約が生じる可能性があります。さらに、買主が購入後に隣地とのトラブルを引き継いでしまうリスクもあり、金融機関からも担保価値が低い土地と判断されやすくなります。
敷地の上空を電線や通信ケーブルが通っているケースも「越境物」に含まれます。「自分の土地の上空を隣地の電線等が通っている場合」と「自分の建物が引き込んでいる電線が隣地の上空を通っている場合」があります。
電線自体は電力会社や通信事業者の所有物であり、個人が勝手に撤去や移設を行うことはできません。自分の土地の上空を隣地の電線が横切っている場合、建て替えや増築の際に制約となる可能性があります。一方、自分の建物が引き込んでいる電線が隣地の上空を通っているケースでは、隣地所有者から是正を求められるリスクがあります。
いずれの場合も、まずは電力会社や通信事業者に相談し、必要に応じて移設やルート変更を依頼するのが基本対応です。ただし、移設費用が所有者負担となる場合もあり、売却を考える際には買主にとって不安要素になりやすいため、事前に状況を確認しておくことが大切です。
最も発見が難しいのが、「目に見えない地中の越境」です。地方や古い宅地では、インフラが十分に整備されていなかった時代の名残で、「水道管や下水管、ガス管の引込管が隣地を経由して敷設されているケース」と「隣地の管が自分の土地を通っているケース」が少なくありません。
引込管や枝管は、基本的に個人の所有・管理責任に属する部分です。自分の管が隣地を通っている場合は、将来修繕や交換が必要になった際に隣地を掘削しなければならず、工事の合意形成が難航するリスクがあります。一方、隣地の管が自分の土地に入り込んでいる場合は、その部分を自由に使えない、建て替えに制限がかかるといったリスクを買主が負うことになります。
こうした地中インフラの越境は、専門家による確定測量で確認しなければ発覚しないことがほとんどです。もし売却契約直前に発覚すれば、買主から契約を白紙に戻される可能性が高まります。
越境物は撤去・移設できるのが理想ですが、現実的には費用や工事の難しさから「そのままにする」ケースも多くあります。その場合は、隣地所有者と「越境を承諾する覚書」を取り交わすことが一般的な解決策です。
覚書があれば、「将来の是正や修繕の取り扱い」「管理責任の所在」が明確になり、トラブル防止という点では安心材料になります。ただし、覚書を交わしても越境そのものは残るため、土地の自由な利用が制限されたり、将来の売却価格に影響したりするリスクは消えません。つまり、覚書は「リスクをゼロにするものではなく、最小限に抑えるための手段」と理解しておくことが大切です。
ここまでで、越境物には目に見えるものと見えないものがあり、どちらも土地売却の障害になることをご理解いただけたと思います。次に、「なぜ越境土地は売却が難しいのか?」を、より具体的に解説していきます。
越境物がある土地は、絶対に売れないわけではありません。しかし、多くの買主が購入をためらい、結果的に売却が難航してしまうのは事実です。その主な理由を3つに分けて解説します。
買主にとって一番の不安は、購入後に「隣人との間でトラブルが発生すること」です。
たとえ数センチのブロック塀や屋根の越境でも、購入後に隣地所有者から「塀を正しく直してほしい」、「越境している部分を撤去してほしい」と主張されれば、対応費用や責任の所在を巡って揉める可能性があります。最悪の場合は裁判にまで発展するリスクもゼロではありません。
逆に、隣地の建物や樹木、電線、配管などが自分の土地に入り込んでいる場合は、買主はその土地を自由に使えない制約を負うことになります。建て替えや増築などの際に思うように計画できなかったり、将来にわたって隣地と協議を続けなければならない可能性もあるため、安心して購入できません。
こうしたリスクを避けるため、買主は越境物のある土地を敬遠しがちです。また、「越境を解決するための工事費用を考慮してほしい」と強気な価格交渉となり、100万円単位での大幅な値引きを要求されるケースも少なくありません。結果として、売主は不利な条件での売却を強いられることになります。
銀行などの金融機関は、土地の境界や権利関係が不明確な物件への融資を嫌います。万が一ローンが滞った場合、その土地を売却して資金を回収しますが、越境物があると担保としての価値が低く、売却が難航すると判断するためです。
その結果、買主が住宅ローンを申し込んでも融資が下りなかったり、希望していた借入額が減額されたりするケースがあります。特に、修繕や移設に高額な費用がかかる越境トラブルは、金融機関が強く懸念しやすいポイントです。
買主が予定していたローンが組めなければ、資金計画が根底から崩れてしまいます。そうなれば、契約が成立しないまま白紙に戻ることになり、結果的に「越境土地は売れない」と言われる大きな理由となってしまいます。
売主が土地を売却する際に最も注意すべき点は、売却後の「契約不適合責任」です。
これは売主が越境物の存在を知っていたか否かに関わらず、売却した土地が契約内容に適合しない場合に責任を負うというものです。自分の土地から隣地に越境物がある場合、売主は越境物の撤去や是正にかかる費用を負担したり、損害賠償を請求されるリスクがあります。逆に、隣地からの越境物がある場合は、「契約時に説明がなかった」として責任を問われるリスクがあります。
契約不適合責任を避けるためにも、売主は事前に土地の状況を徹底的に調査し、越境物の有無を確認したうえで、必要に応じて解消や説明を行っておくことが非常に重要です。
このように「買主が敬遠するリスク」「ローンが組めないリスク」「売主自身が責任を問われるリスク」が重なることで、越境物のある土地は売却が難しくなり、結果として売れないケースも多くなるのです。
次に、こうした越境物をどう解決し、売却につなげるのかを具体的に見ていきましょう。
ここまで読んで、「越境物があるから売却は難しいかな・・・」と諦めていませんか?安心してください。越境問題は適切に解決すれば、スムーズな売却が十分に可能です。ここでは、越境物を処理して売却につなげるための具体的な方法を紹介します。
最も一般的で費用も抑えられる解決策が「覚書(合意書)」の作成です。
隣地所有者と話し合いのうえ、越境の事実と今後の取り扱いを文書に残しておくことで、買主や金融機関に「トラブルの芽はすでに処理済み」という安心感を与えられます。
覚書は自分の土地から隣地に越境しているケースだけでなく、隣地から自分の土地に越境があるケースでも有効です。どちらの場合も、権利関係や将来の対応ルールを明文化しておくことが、売却をスムーズに進めるカギになります。
ただし、覚書を交わしたからといって、将来的なトラブルの可能性が完全になくなるわけではありません。隣地所有者が代替わりしたり、新しい買主が承諾内容に納得しないケースも考えられるため、「トラブルを減らせるがリスクをゼロにはできない」ことも理解しておくことが重要です。
【覚書に含めるべき項目】
※公正証書にしておくことで、法的効力を高められます。
ブロック塀やフェンス、樹木の枝・根など、物理的に移動や撤去が可能な越境物は、根本的な解決が最も確実です。費用はかかりますが、問題を完全に解消できるため、売却価格の下落を防ぎやすいメリットがあります。
自分の土地から隣地に越境している場合はもちろん、隣地から自分の土地に越境している場合でも、協議のうえで移設・撤去できればトラブルの不安を取り除けます。隣地所有者との協議が円滑に進む場合は、この方法を検討しましょう。
地中の水道管や下水管、ガス管などが隣地を通っているケースは、ブロック塀や樹木のように簡単に移設できるものではなく、売却時に最も対応に困る越境物のひとつです。
まずは専門家に依頼して確定測量や役所調査を行い、どの部分が個人の管理か、どこまでが公共管理かを明らかにしましょう。自分の管が隣地を通っている場合は、将来の修繕時に隣地を掘削する可能性があるため、隣地所有者との協議が不可欠です。逆に、隣地の管が自分の土地を通っている場合には、建て替えなどの制約になり得るため、買主が不安を抱きやすくなります。
多くの場合は個人所有の引込管・枝管であるため、隣地所有者との間で覚書を交わすことが現実的な解決策になります。覚書で「将来の修繕時の対応方法」や「費用負担の取り決め」を明記しておけば、買主の不安をやわらげられます。
なお、古い宅地で複数世帯が共用している管など、特殊なケースでは自治体や水道局が関与して移設・更新工事を行うこともあります。そのような場合でも解決には時間がかかるため、売却を視野に入れるなら早めの調査と相談が欠かせません。
「隣地との関係が悪く覚書が取れない」「移設に高額な費用がかかる」「覚書をどうしても取り交わせない」といった事情で解決が難しい場合は、不動産会社や買取業者に直接売却するという選択肢があります。
越境物がある土地でも、問題を織り込み済みで買い取ってくれるため、仲介では見つからない買主を待つ必要がありません。価格は仲介よりも安くなりますが、「売却できない」状態から抜け出し、スピーディに現金化できる大きなメリットがあります。
このように状況に応じた売却方法を知っておくことで、越境物があっても売却の道が開けます。
越境問題がある土地でも、正しく準備すればトラブルや価格交渉のリスクを大幅に減らせます。ここでは、適正価格で売却するための重要なポイントを3つご紹介します。
越境物の有無を明らかにし、売主と買主双方の安心材料となるのが確定測量です。
「自分の土地から隣地への越境だけでなく、隣地から自分の土地への越境」も、「地上のブロック塀や樹木、屋根だけでなく、地中に埋まった水道管や下水道管などの越境」も、この調査で判明することがあります。
確定測量によって境界が明確になれば、買主は安心して購入を決断できます。これにより、「越境土地は売れない」というリスクを大幅に減らし、適正な価格での売却を目指すことが可能になります。
越境問題は個人だけで解決しようとすると難航しがちです。
専門家の力を借りることで、複雑な手続きや交渉のストレスを減らし、スムーズな売却を実現できます。
越境問題を放置したまま売却に出すと、買主からの指摘で大幅な値引き交渉を強いられる可能性があります。
一方、売却を考えた時点でできるだけ早く、覚書の作成や撤去工事といった対応を済ませておけば、それが買主にとって大きな安心材料となり、売却価格を守ることにつながります。解決には時間がかかることも多いため、越境が疑われる場合は、すぐに専門家に相談することが賢明な判断です。
この記事では、越境物が土地売却の大きな障害になること、そしてその問題を解決するための具体的な方法を解説しました。
越境物がある土地は、「買主からの敬遠」「住宅ローンへの影響」「売却後の契約不適合リスク」という3つの理由から売却が難航しがちです。しかも、自分の土地が隣地に越境している場合だけでなく、隣地から自分の土地に越境している場合でも同じリスクが生じるため、いずれのケースでも事前対応が欠かせません。
しかし、越境物があるからといって「売れない」と諦める必要はありません。
売却成功のカギは「事前準備」にあります。
これらの対応を事前に済ませておけば、買主に安心感を与え、適正価格での売却を実現できる可能性が高まります。
越境問題を放置したまま売却に出すと、大幅な値引き交渉を強いられたり、最悪の場合は契約が白紙に戻ったりするリスクを抱えることになります。「もしかして自分の土地も・・・?」と少しでも不安に感じたら、売却活動を始める前に、まずは信頼できる専門家へ相談してみましょう。
当社では越境物のある土地の買取を行っています。土地家屋調査士とも連携して、スムーズに確定測量を進めることができます。ご相談は無料ですので、「越境物がある土地の売却を考えている」、「隣地への越境があるか?隣地からの越境があるか?分からなくて不安を感じている」方は、お気軽にご相談ください。