2026年5月26日 | コラム
目次
管理物件で退去が発生した際や空室のテコ入れを検討する際、いまだに「和式トイレ」が残っている部屋を見て、頭を悩ませている担当者の方は多いのではないでしょうか。
とはいえ、「すぐに洋式化しましょう」とオーナー様へ提案するのも、実務上は簡単ではないはずです。
下手に工事費をかけて家賃を上げれば、最大の強みである「安さ」が消えて客付けしにくくなるリスクがあります。かといって家賃を据え置けば、投資の回収に何年もかかってしまいます。オーナー様の収支や地域の相場をよく分かっているからこそ、提案に二の足を踏んでしまうのが本音だと思います。
しかし、もしその物件が「周辺相場や立地を見れば本来なら早く決まるはずなのに、和式トイレが原因で候補から外れている」のだとしたら、それは非常にもったいない機会損失です。
この記事では、管理会社様が和式トイレについて管理会社様が交換を検討するときのポイントを、現場目線で詳しくお伝えします。
和式トイレは、築古の賃貸物件において、入居希望者に敬遠されやすい設備です。実際に、全国賃貸住宅新聞の「入居希望者に敬遠される設備ランキング」でも、バランス釜や屋外洗濯機置き場などと並び、常に上位へランクインしています。
賃料の安さを最優先する層を除き、一般的な入居希望者が感じる次のような「拒否感」と「不便さ」は、内見時の致命的な失点につながります。
・見た目と匂いによる「不衛生さへの拒否感」
和式トイレは構造上、便器の周辺が汚れやすく、築古物件特有の「床タイルの目地に染み込んだ匂い」がこもりやすいという弱点があります。賃料が安くても、内見時にトイレを確認した瞬間の匂いや清潔感のなさで、生理的に「この部屋は無理」と判断されるケースは多いはずです。
・毎日の生活における「足腰への身体的負担」
毎回深くしゃがみ込む和式トイレの姿勢は、日常の動作として年齢に関わらず、想像以上に身体的な負担になります。特に、体調が優れない、足腰の痛みがあるときなどはつらいです。そのため、「家賃が安くても、毎日これだと身体的にきつい」という現実的な理由で敬遠されます。
・現代の生活習慣とのギャップ
現代では、職場やコンビニ、商業施設、駅など、日常生活のあらゆる場所で「洋式トイレ」を使うのが当たり前になっています。「毎日の自宅の生活で今さら和式を使うイメージが湧かない」ため、家賃の安さで勝負しようとしても、選択肢から外されてしまう原因になります。
たとえば、屋外洗濯機置き場であれば「洗濯カバーをかける」「コインランドリーを使う」といった入居者側の工夫で防げる面もありますが、トイレにストレスを感じる物件は、検討の土俵に残るのがより難しくなるのは不思議ではありません。
空室対策としては、こうした致命的な失点をゼロに戻すことがスタートラインになります。
和式トイレの改修は、基本的には「退去が発生したタイミング(原状回復)」か「長期空室を解消するためのテコ入れ(空室対策)」のどちらかになります。
すべての物件を一律で洋式化するのではなく、洋式化する判断基準をもって物件ごとに判断することが重要です。
退去が発生した部屋は、全体に手を入れられる機会です。しかしここで考えるべきは、「家賃設定をどうするか」です。
もし、家賃を地域最安値まで下げて、和式トイレやバランス釜、屋外洗濯機置き場といった「不人気設備を割り切って受け入れる層」を狙い続けるなら、あえて和式のまま据え置くのも一つの戦略です。
一方で、周辺相場から見て「本来ならもっと早く決まるはずの物件」なら、通常の原状回復費用の中に洋式化をパッケージとして組み込む提案が有効になります。
例えば、内装が比較的綺麗な状態であれば、壁紙の補修を最低限に抑え、浮いた予算をトイレの洋式化に充てる。このような予算の選択と集中という視点が、オーナー様へ納得感のある提案をするためには欠かせません。
周辺の競合物件のほとんどが洋式トイレを採用している場合は、和式トイレというだけで大手ポータルサイトの検索条件(絞り込み機能)で外されてしまい、内見が入らない可能性が高いです。
空室対策としての洋式化は、家賃を上げるための付加価値アップではなく、内見時に「ここは住めない」と思われる大きなマイナス要因を減らし、他の物件と同じ土俵に立つための「守りの投資」と言えます。
付加価値のためのリフォームを提案する前に、まずは検討対象から除外されている「穴」を塞ぐ視点をオーナー様と共有することで、工事の必要性がより具体的に伝わりやすくなります。
洋式トイレへの改修方法は、トイレ室内の構造や予算によっていくつかの選択肢に分かれます。
既存の和式トイレを完全に解体・撤去し、床を平らに作り直した上で、一般的な洋式トイレを設置する方法です。
内見時の印象は「普通の洋式トイレ」になるため、空室対策として確実で効果が高い標準的な工法です。コンセントを新設して温水洗浄便座にすれば、物件の競争力はさらに高まります。
ただし、床のタイル解体や給排水管の立ち上げ直しが必要になるため、しっかりとした施工計画と現地調査が不可欠です。
既存の和式トイレを解体・撤去せず、便器の上から陶器製の擬似的な洋式便座(TOTOのスワレットなど)をボルトと給水管の分岐で固定する方法です。
床を解体しないため、改修工事に比べてコストを大きく抑えられ、工期も短時間で済みます。また、陶器製のためプラスチック製のカバーに比べて安っぽさがなく、上から通常の温水洗浄便座(ウォシュレット)を組み合わせられるのが最大の強みです。
温水洗浄便座を組み合わせると、ポータルサイトの検索条件で『温水洗浄便座あり』にすることができ、床を解体するほどの予算は出せない場合、費用対効果に優れた選択肢となります。
トイレの交換と同時に、床のタイル貼りをクッションフロア(CF)へ変更し、壁のクロスも全面的に張り替える、トイレの空間全体を刷新する方法です。
トイレに入った瞬間の印象が大きく改善するため、長期空室を解消するためのリノベーションの側面が強くなります。
今後10年、15年と長期で物件を運用し続ける方針のオーナー様や周辺物件に対して少しでも差別化を図りたい場合に向いています。
ここまでご紹介した主な改修方法について、目的・費用感・工期目安・空室対策効果を一覧にまとめました。
| 交換方法 | 目的 | 費用感 | 工期目安 | 空室対策効果 |
| 標準的な洋式化 | 退去後の印象改善・成約率向上 | 中 | 1~2日 | ◎ |
| 簡易洋式便器設置 | コストを抑えた印象改善 | 低~中 | 半日 | 〇 |
| トイレ全体の刷新 | 物件価値の刷新・長期空室解消 | 高 | 2~3日 | ★ |
トイレの改修では、室内特有の「物理的制約」や「既存の構造」によって、希望の工事がそもそもできなかったり、工事費が大きく跳ね上がったりするケースがあります。
■便座の先端から正面の壁(ドア)までの距離
標準的な洋式トイレを設置する場合、座ったり立ち上がったりすることを考慮して、便器の先端から前の壁までに最低でも40~50cmのスペースが必要です。和式トイレはコンパクトな空間に作られていることが多く、奥行きが狭い室内に標準の洋式トイレを設置すると、「ドアが閉まらない」「座った時に正面の壁に膝がぶつかる」という事態が起こり得ます。
この場合、オーナー様がいくら「床を壊して完全な洋式にしたい」と希望されても、物理的に「標準的な洋式化は諦めて、和式トイレのサイズ感を活かせるスワレット(簡易洋式化)で対応せざるを得ない」といった判断が必要になります。
■床に段差がある「汽車便(きしゃべん)」か
和式トイレには、床が完全にフラットなタイプと便器の部分が一段高くなっているタイプ(汽車便)があります。段差があるタイプを標準的な洋式にする場合、その高くなっているコンクリートやタイルを解体する必要があります。これにより人件費や廃材の処分費が膨らむため、フラットな床に比べて費用がブレやすくなります。
「どうしても床を解体する予算が出ない」場合は、段差を残してスワレットにするのが唯一の選択肢になることもあります。
■壁や床の「給水管(フラッシュバルブなど)」の位置
和式トイレ特有のハイタンク(高い位置にあるタンク)やレバーを押して勢いよく水を流す「フラッシュバルブ」は、通常の洋式用とは水道の配管位置や水圧の仕組みが異なります。
洋式化にあたって、古い配管をどこまで活かせるか、あるいは壁を一部壊して配管を移設しなければならないかによって、水道工事の手間と部材代が大きく変わります。また、温水洗浄便座(ウォシュレット等)を新設する場合は、近くから電気の分岐コンセントが引っ張ってこれるかも重要な確認要素です。
オーナー様に提案した後に「実は寸法が足りなくてスワレットしか無理でした」「解体してみたら配管の移設が必要で、追加費用がかかります」となるようなことを防ぐためにも、現状の寸法や構造をプロに見てもらう現地調査を強くお勧めします。
和式トイレがネックで空室が続いている場合、オーナー様への提案で、単に「古いから直しましょう」と伝えるだけではなかなか首を縦に振ってもらえないのではないでしょうか。特に家賃帯が低い物件ほど、オーナー様は費用対効果にシビアだと考えられるからです。
そこで大切になるのが、「工事にかかる費用」と「空室のまま部屋を放置することによる損失(機会損失)」を天秤にかけた、収益性の視点です。
仮に、和式トイレがネックとなって成約が3ヶ月遅れてしまった場合、家賃が3.5万円の物件であれば「10.5万円の家賃収入」を永遠に失うことになります。もし空室期間が半年、それ以上と長引けば、損失額は工事費を上回っていきます。
「空室のまま家賃収入が消えていくリスク」と「早期成約のために設備に投資する費用」を比較し、『あと何ヶ月空室が続くと、工事費を上回る損失になるか』という経営的な数字でお伝えされることで、オーナー様も「それなら今すぐ直して早く入居を入れた方が得だ」と判断しやすくなります。
「家賃を上げて投資を回収する」のではなく、「家賃据え置きでも、空室期間を短縮することで損失を防ぐ」という軸をもつことがポイントだと考えます。
和式トイレの洋式化をご相談いただく際、以下のポイントを事前に業者と共有すると、現地確認や正確なお見積りが、よりスムーズに進みます。
□ 現在の床・壁の材質(タイル貼りか、クロス仕上げか)
床が段差のあるタイル貼りか、フラットな床かによって解体費用が変わります。
□ コンセント(電気製品用)の有無
温水洗浄便座(ウォシュレット等)を新設したい場合、室内に既存のコンセントがあるか、または近くから分岐できそうかを確認します。
□ トイレ室内の大まかな内寸(広さ)
便器が収まるスペースや、ドアの開閉時に干渉しないかを確認するための目安となります。
□ ご希望の納期
「次のシーズンまでに間に合わせたい」「まずはオーナー様へ提示するための概算見積が欲しい」といった段階が分かれば、管理会社様のスケジュールに合わせた提案が可能になります。
和式トイレは、内見時における最大とも言える「弱点」になりやすい設備ですが、裏を返せば「ここを改善すれば、内見の印象が劇的に変わり、成約率が上がる伸びしろ」とも言えます。
家賃の「安さ」で勝負する物件なら据え置きの判断となるでしょうが、周辺相場から見て「本来ならもっと早く決まるはずの物件」にも関わらず和式トイレが原因で苦戦しているなら、それは今すぐ改善した方がよい機会損失です。
しかしトイレの洋室化には、室内寸法の制約や解体・内装・水道が絡む施工体制など、実務的な確認事項が多いのも事実です。「オーナー様に説明した後に工法が変わる」といった二度手間を防ぐためにも、まずは現状を正しく把握することから始めませんか。
当社は、水まわり工事とリフォームの両方を手がけているため、解体から配管、内装仕上げまで、ワンストップで効率的な施工が可能です。そのため、短工期かつコストを抑えたご提案をいたします。
既存の協力業者様で対応が難しい場合やオーナー様への提案前に改修方法を整理したい場合など、和式トイレ物件の空室対策にお悩みの際は、お気軽にご相談ください。