共有持分の実家は売却できる?協議難航時のリスクと買取による打開

2025年11月14日 |  コラム

実家を共有持分で相続したものの、価値観の違いや感情の衝突があって遺産分割協議がまとまらない。誰が悪いというわけではないのに、話が前に進まず、売却も賃貸もできないまま誰も住んでいない状態が続いている。

そんな状況に「このまま放っておいていいのだろうか?」と不安を感じている方も多いはずです。

多くの人は、遺産分割協議がまとまらないと「単に時間が過ぎていくだけ」と捉えがちです。しかし、膠着状態がつづくことには、実は思っている以上に大きなリスクが潜んでいます。そのリスクは、静かに、そして確実に積み重なっていきます。

このまま協議を続けるべきか、それとも次の一歩を踏み出すべきなのか判断するためには、「共有持分の状態を放置するとなにが起きるのか」を具体的に知っておく必要があります。

本記事では、協議が難航している人が直面するリスクと、それらを回避するための現実的な選択肢をお伝えします。協議の限界点を見極め、次へ進むタイミングを判断する材料としてご活用ください。

この記事を読むと以下のことが分かります。

  • 不動産の共有持分と法的制約
  • 共有状態を放置した場合の3つのリスク
  • 【チェックリスト】遺産分割協議を継続する限界のサイン
  • 法的手段(調停・審判)のメリット・デメリット
  • 共有持分だけ売却するメリット・デメリット

共有不動産とは何か?知っておくべき法的制約

遺産分割協議が難航する原因は、感情的な対立だけでなく、不動産を共有することでの法的な制約があります。まず、共有持分がどんな権利なのかを正しく理解しておきましょう。

不動産の共有持分とは

一つの不動産を複数人が持分(割合)を決めて所有している状態のことです。ここで注意したいのは、特定の部屋や特定の部分を所有しているということではなく、あくまで不動産全体に対する所有権の割合を意味するという点です。

例えば、兄弟で実家を2分の1ずつ相続している場合、それぞれが不動産全体に対して50%の所有権を持っていることになります。

この持分は、相続人それぞれが独立して持つ「財産権」です。そのため、自分の持分だけであれば、他の共有者の同意なしに自由に第三者に売却することが可能です。

共有不動産の法的制約

ポイントは、自分の持分だけでなく不動産全体に関わる行為になると法的な制約があることです。この法的制約が、遺産分割協議を難航させる最大の原因になります。

共有状態にある不動産の利用・処分については、その行為の性質によって必要な同意のレベルが民法で定められています。

■ 保存行為
建物の修理や不法占拠者への明け渡し請求など、現状維持のための行為です。これは、各共有者が単独で行うことができます。

■ 管理行為
第三者に短期間賃貸する契約の締結または解除、大規模修繕ではないリフォームなど、不動産を利用・改良するための行為です。これは、持分価格の過半数の同意があれば行うことができます。

■ 変更行為
不動産を売却する、建物の大規模な増改築を行う、建物を解体する、第三者に長期間賃貸する契約の締結または解除、金融機関からお金を借りるために担保(抵当権)を設定するなど、不動産の形状や効用を大きく変える行為です。これは、共有者全員の同意がなければ行うことができません

なお、2023年の法改正で、砂利道のアスファルト舗装など軽微な変更は、管理行為に含めて持分価格の過半数の同意があれば行うことができることになりました。

遺産分割協議が難航するケースの多くは、売却・解体・長期賃貸など「共有者全員の同意が必要」となる変更行為が絡んでいます。

共有不動産を放置する3つのリスク

変更行為に該当することで遺産分割協議が難航し、共有不動産の問題を解決できず放置していると、大きく3つのリスクが発生する可能性があります。

(1)経済的・金銭的リスク

誰も住んでいない家でも、将来的に必要になる負担も含めていろいろな費用負担が発生します。

■ 固定資産税の負担
不動産の所有者である限り、固定資産税や都市計画税の納税義務は持分割合に応じて発生します。住んでいないのに毎年この支払いが発生し続けることは、純粋なコストになります。

■ 修繕費や維持管理費のトラブル
建物が古くなれば、突発的な修繕が必要になります。その費用負担や工事内容について、他の共有者との話し合いが難航しやすく、結果的に代表者が費用を立て替えるなど、新たな金銭トラブルに発展することがあります。

■ 回収不能リスク
立て替えた固定資産税や修繕費用などの他の共有者への請求分が、時間の経過とともに連絡不通などで回収できなくなるリスクがあります。

(2)処分・活用リスク

「そのうち解決できるだろう」と思っていても、時間が経つほど売却や活用が難しくなっていきます。

■ 売却の困難化
自分の持分だけでなく実家全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。そのため、共有者のうち一人でも反対していると売却できない状態がずっと続いてしまうことになります。

■ 資産価値の目減り
実家が空き家となって放置されると建物の劣化が急速に進み、建物の資産価値が大きく下落することになります。共有者全員の同意が取れたときには、売却が実現したとしても、放置前の価格よりも安くなる可能性が高くなります。

■ 特定空き家によるペナルティ
管理不全の状態が続き、行政から「特定空き家」に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が解除されます。結果として、税金が最大で6倍に跳ね上がる可能性があり、経済的な負担が大きくなることがあります。

(3)権利関係の「複雑化」リスク

これが共有不動産を放置する中で最も深刻な問題です。

■ 相続による持分の細分化
現在の共有者の誰かが亡くなると、その人の持分は、さらにその相続人(配偶者、子供など)に相続され、持分がどんどん細かく分割されていきます。

■ 交渉相手の増加と関係性の希薄化
自分の代で解決できず次の世代に持ち越してしまうと、共有者の人数は増え、面識のない人同士で交渉することになります。こうなると、話し合いの場を持つこと自体が難しくなり、解決が極めて困難な状況になってしまいます。

■ 訴訟による解決の長期化
最終的に裁判(共有物分割請求訴訟)に頼るとしても、関係者が多すぎると書類の送達や手続きに膨大な時間がかかり、解決までに何年も要することもあります。

これらのリスクを踏まえて、このまま協議を続けるべきか、それとも次の一歩を踏み出すべきか、早めに判断することが大切です。

協議を続けるべきか?やめるべきか?判断の考え方

ここまで見てきたように、共有不動産を放置すると、時間の経過とともに状況は悪化していきます。とはいえ、「協議をやめて他の手段に進む」と決断するのも簡単ではありません。まずは、協議を続けるメリットとデメリットを整理し、自分の状況を客観的に整理してみましょう。

協議を続けるメリット

  • 家族、親族間で円満に解決できる可能性がある
  • 売却や賃貸などの方向性を全員で決められれば、最も高い価格で処分できる
  • 調停や訴訟に比べ、費用や時間の負担が少ない
  • 家族の関係を大きく損なわずに済む可能性がある

協議が比較的穏やかに進んでいる場合、まずは一定期間を区切って再協議を試みる価値があります。ただし、「話し合うこと自体がストレス」になっている場合は、長引かせるほど関係が悪化しやすくなります。

協議を続けるデメリット

  • 合意が得られないまま時間だけが過ぎる
  • 一部の共有者が非協力的だと、他の共有者の負担が増える
  • 高齢化、体調悪化、認知症などで、いずれ話し合いそのものが不可能になる
  • 感情的な対立が深まり、関係が壊れるリスクがある

協議を長く続けるほど、「誰のための相続なのか」が見えにくくなり、結果として問題を次世代に持ち越してしまうケースも少なくありません。

協議継続の「限界サイン」チェックリスト

これらのメリット・デメリットを踏まえ、協議が「もう限界に近いか」、それとも「まだ続けるべきか」を判断するためのチェックリストです。次の項目に、3つ以上当てはまる場合は、協議を続けること自体がリスク化している可能性が高く、次のステップを具体的に検討すべきサインです。

□ 協議が半年以上進んでおらず、具体的な結論が見えない
 これ以上の継続は、前述のリスクが顕在化する可能性が高くなります。

□ 一部の共有者と連絡が取れない、または返信が極端に遅い
 話ができない限り、協議は進みません。法的手段や持分売却などの別の手段が必要です。

□ 税金や管理費の支払いを自分だけが負担している
 公平な負担がなされていない時点で、協議への協力関係が崩壊しています。

□ 空き家の管理や近隣対応を自分一人で行っている
 一人が責任を負う状況は、いずれ破綻します。

□ 協議のたびに感情的な口論になってしまう
 関係が壊れる前に、中立的な第三者(調停委員や専門家)の介入が必要です。

□ 相続人の中に高齢者・病気・認知症の兆候がある人がいる
 認知能力が失われると、法的行為能力を失い、協議はほぼ不可能になります。

「もう疲れた」「関わりたくない」という気持ちが強くなっている
 協議が解決ではなく新たなストレスを生み出す原因になってしまっています。

□ 相続からすでに数年が経過しているのに、状況が変わっていない
 このままではねずみ算式に権利複雑化が現実味を帯びます。

チェックリストで当てはまる項目が多いほど、「話し合いで円満に解決する可能性」は低くなります。無理に協議を続けることは、解決への道ではなく、さまざまなリスクを加速させることに他なりません。限界を超えたと感じたときは、次の手段である「調停・訴訟による解決」や「持分売却」といった選択肢を検討すべきタイミングです。

共有物分割調停・訴訟による解決

不動産の共有状態を解消して分割する共有物分割請求という方法があります。協議の中で話し合いで分割に合意できない場合は、共有物分割調停や共有物分割訴訟という法的手続きがあります。ここでは、法的手段の概要とメリット・デメリットを整理しておきましょう。

共有物分割調停とは

共有者同士の話し合いで解決できない場合は裁判所に調停を申し立てることで、裁判所の調停委員が間に入って話し合いを行い、合意を目指すための手続きです。

調停委員が間に入ることで、共有者同士の感情的な衝突をさけやすくなります。しかし、最終的に合意を成立するには共有者全員の合意が必要となるため、一人でも反対する共有者がいれば解決できません。

共有物分割訴訟とは

調停で合意に至らなかった場合や最初から調停での合意は難しいと思われる場合は、裁判所が適切な共有物の分割方法を判断・決定する共有物分割訴訟を提起できます。裁判所の判決には強制力があるため、反対する共有者がいても共有不動産の分割方法を決定できます。もし共有者全員の合意が得られるようであれば、裁判所が和解を勧めることもあります。

分割方法としては、不動産を物理的にそのまま分割する「現物分割」、競売や任意売却による「換価分割」、共有者の一人が不動産すべてを取得して他の共有者に持ち分に応じた代償金を支払う「全面的価格賠償」があります。

法的手段のメリット

まず、第三者の介入によって公平性が確保される点は大きなメリットです。感情的な対立が強い場合でも、調停委員や裁判官という中立的な立場の専門家が入ることで、当事者だけでは進まなかった話が整理されることがあります。

また、法的手段では書面や証拠に基づいて判断が下されるため、「言った・言わない」というあいまいな状況を解消し、法的に最終的な決着をつけられる点も安心材料のひとつです。

さらに、弁護士などの専門家に依頼すれば、手続きや書類作成をサポートしてもらえるため、自分で全てを抱え込まずに済むという利点もあります。

法的手段のデメリット

一方で、現実的な負担は小さくありません。申立て費用や訴訟費用、弁護士費用がかかります。また、解決までに長期間を要することがあり、調停・訴訟となると申立てから結論まで半年1年、長いと2年かかることもあります。

裁判所の判断で「換価分割」となれば競売で安く売却されることが多くなりますし、裁判所の判断が自分の希望する分割方法とはならないこともあります。さらに、裁判で争うことになると、解決はしたけれど共有者間の関係が決定的に壊れる可能性があります。

調停や訴訟は、確かに行き詰まった状況を打開する手段のひとつです。しかし、「問題を円満に解決する手段ではない」、「全員が納得する結果になるわけでもない」といった現実を理解した上で、冷静に選択することが大切です。

持分売却という選択肢

協議が進まない。しかし、家族との関係を悪化させるような法的手段は避けたい。そんなときに検討できる現実的な選択肢のひとつが、「自分の持分だけを売却する」という方法です。

持分売却とは

持分売却とは、共有している不動産のうち、自分の所有している割合(持分)だけを第三者に売却することです。先述のとおり、自分の持分は他の共有者の同意がなくても自由に売却できます

たとえば、兄弟2人で実家を2分の1ずつ共有している場合、あなたの2分の1の権利を、共有者以外の第三者に売却することが可能です。

持分売却のメリット

最大のメリットは「他の共有者が同意しなくても進められる」ことです。遺産分割協議が止まっていても自分の判断だけで動けるため、長期間の膠着状態から抜け出すことができます。

また、税金や管理の負担から解放されるメリットもあります。空き家の固定資産税、修繕費、庭木の手入れ、近隣対応といった負担を背負い続ける必要がなくなります。

持分売却のデメリットと注意点

一般の個人には買い手がつきにくいという現実があります。なぜなら、他人と共有した状態の不動産は利用や売却に制限があり、買主にとってリスクが高いからです。そのため、実際に買い取るのは、共有不動産の買取を行っている不動産会社や投資家のケースがほとんどです。この場合、通常の相場よりも安い価格での売却になることが一般的です。

また、共有者間の関係性が悪化していると、売却後に「知らない第三者が共有者として入ってきた」とトラブルになることもあります。売却を検討する際は、できる限り事前に他の共有者へ説明をしておくことが望ましいです。

不動産会社による買取のメリット

持分売却では、一般の買い手がつきにくいは先述のとおりです。そのため、不動産会社に買取を相談するのが現実的な選択肢となります。

① 法務・登記・共有関係の専門知識に詳しい

共有不動産は、登記や契約の手続きが一般の取引よりも複雑です。不動産会社であれば、こうした法務面の知識をもとに、安全かつスムーズに売却するサポートをしてくれます。特に、他の共有者が行方不明、高齢(認知症のリスク)、あるいは非協力的といった困難なケースでも、現実的な解決策を提案してくれるのが心強い点です。

② 感情的にならず冷静に判断できる環境を作れる

家族間で話し合うのに疲れたという方も多いでしょう。裁判所の調停や訴訟のような法的手段ではなく、不動産会社に相談することでも感情的な対立から距離を置き、冷静に判断できる環境を作ることができます。会社によっては、弁護士や司法書士と連携しており、相続全体の整理や今後の手続きまで見据えたアドバイスを受けられる場合もあります。

③ 早期の現金化ができ負担から解放される

誰も住まない共有不動産は、維持するだけでも固定資産税・管理費・修繕費などがかかります。持分買取を利用すれば短期間で現金化できるうえ、今後の費用負担や近隣対応からも解放されます。この先の負担を抱え続けるよりも、今整理しておきたいという方にとって、実務的な解決策になり得ます。

まとめ

遺産分割協議がまとまらない背景には、感情の対立だけでなく、「共有不動産」という仕組みそのものの難しさがあります。そして、多くの人が誤解しているのは、「話し合いを続けていれば、いつかは解決する」という考えです。

現実には、時間が経つほど
・共有者が増える
・不動産が老朽化する
・感情の溝が深まる
といった問題が静かに進行し、協議の難易度は上がる一方です。

協議が難航しているときに大切なのは、すぐに「売る」「裁判する」と結論を出すことではありません。

まずは、

  • 今どんなリスクが進行しているのか
  • このままの状態が続くと何が起きるのか
  • どの段階で次の一手を打つべきなのか

この3つを冷静に整理することから始めてください。それが、家族の関係を壊さずに問題を終わらせるための第一歩になります。

協議を進めるか、法的手段を取るか、持分売却を検討するか。どの選択にも正解はありません。ひとつ言えるのは、動くことでしか状況は変わらないということです。

まずは、現状を整理するための相談から始めてみましょう。相談することで、取ることができる選択肢が明確になり、「もうどうすることもできない」と思っていた状況にも、必ず出口が見えてきます。

当社では共有不動産の持分の買取を行っています。遺産分割協議がうまく進まず、持分の売却を選択肢の一つとして検討している場合はご相談ください。相談は無料です。

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