バランス釜は賃貸の空室原因?管理会社が知るべき交換提案のポイント

2026年5月18日 |  コラム

管理物件の浴室にバランス釜がある場合、故障したタイミングでそのまま後継機に交換するべきか、退去後や入居前のタイミングで浴室まわり全体で交換を検討すべきかなど、判断に迷う現場担当者の方も多いのではないでしょうか。

特に、空室が続いている物件や内見時に浴室の古さが気になりやすい物件では、単なる設備交換ではなく、空室対策としてどこまで改善するかを考える必要があります。

もちろん、バランス釜を交換すれば必ず空室が改善する、という単純な話ではありません。

入居中の故障対応であれば、まずはお風呂を使える状態に戻すことが優先されます。一方で、退去後の空室対策として交換を検討する場合は、浴室全体の印象や、キッチン・洗面台・トイレなど他の水まわり設備とのバランスも含めて考える必要があります。

この記事では、古い賃貸物件にあるバランス釜について、管理会社様が交換を検討するときに考えておきたいポイントを、故障対応・退去後の水まわり見直し・空室対策の観点から整理します。

なお、バランス釜の基本的な仕組みやメリット・デメリットについては、別記事「築古の賃貸物件に多いバランス釜とは?メリデメ、故障時の対応」で詳しく解説しています。

バランス釜が賃貸の入居希望者に敬遠される理由

バランス釜は、古い賃貸物件で入居希望者に敬遠されやすい設備のひとつです。

実際に、全国賃貸住宅新聞の「入居希望者に敬遠される設備ランキング」では、バランス釜が和式トイレ、3点ユニットバス、室外洗濯機置き場と並んで上位にランクインしています。

敬遠される理由は、単に「見た目が古い」からだけではありません。実際に使う入居者様が感じる、次のような「心理的な不安」と「実務上の不便」が日々のストレスに直結しているからです。

  • 操作の不安: レバーを回して点火する際の大きな音や、「カチカチ」という火花を飛ばす操作が「怖い」「爆発しそう」と感じてしまう。
  • 温度の不便: キッチンと同時に使うと急に冷たくなる。一度止めると、次に熱いお湯が出るまで時間がかかる(冬場のストレス)。
  • 浴槽の狭さ: 釜が浴室内に場所を取るため浴槽が狭く、足を伸ばして疲れを癒やすことができない。
  • 経験のなさ: そもそも使い方が全く分からないため、内見時に見ただけで候補から外されてしまう。

ただし、バランス釜だからといって、それだけが理由で空室になるわけではありません。立地や家賃帯によっては「バランス釜でも良い」という層も一定数存在します。

しかし、内見時の第一印象に与える影響は非常に大きく、バランス釜であることが「入居の大きな障壁」になっている場合は、まずは内見時の『失点』をなくし、他の物件と比較される土俵に乗せることが空室対策の第一歩です。

【状況別】バランス釜交換の優先順位と管理会社が意識すべき判断基準

バランス釜の交換は、「入居中の故障対応なのか」、「退去後・入居前の水まわり見直しなのか」、「空室対策としての見直しなのか」によって、考えるべきポイントは変わります。

管理会社様がオーナー様へ提案する際も、単に「バランス釜が古いから交換する」という話ではなく、今回の工事で何を優先するのかを整理しておくと、工事内容や提案の方向性を決めやすくなります。

入居中の故障対応:早期復旧と入居者満足度を最優先する

入居中にバランス釜の不具合が起きた場合は、まず入居者様がお風呂を使える状態に戻すことが優先されます。

たとえば、種火がつかない、お湯が出ない、シャワーが使えないといった不具合は、入居者様の生活に直接影響します。

このような入居中の場合は、工事期間や入居者様への負担を考慮して、まずは現在の設備状況を確認し、できるだけ早く安全に使える状態へ戻すことが重要です。そのため、入居中であれば後継機への交換がもっとも現実的な選択肢となります

もちろん壁貫通型などへのグレードアップも可能ですが、工事期間が延びたり、入居者様との日程調整が大変になったりするリスクがあります。入居中は、「お風呂が使えない期間を1日でも短くすること」が、結果として入居者満足度を高め、クレーム防止に直結するからです。

当社がご依頼いただく入居中のバランス釜の交換は、その多くが経年劣化により故障したもので、スピード重視で後継機に交換しています。「賃貸アパートのバランス釜交換(お風呂のお湯が出ない)工事」で実際の事例をご紹介していますので、あわせてお読みください。

退去後の水まわり見直し:予算配分と「物件全体のバランス」で考える

退去後や入居前のタイミングであれば、バランス釜だけでなく、浴室の壁や床、浴槽、キッチン、洗面台、トイレなど、他の水まわり設備もあわせて確認しやすいタイミングです。

たとえば、浴室のバランス釜だけを交換しても、キッチンや洗面台の古さが強く残る場合、内見時の印象改善が限定的になることがあります。

もちろん、全ての水まわり設備を一新できれば理想的です。しかし実際には、限られた予算をどこに配分するかという「優先順位の判断」が重要になります

たとえば、キッチンや内装が比較的綺麗な物件であれば、浴室のリフォームに予算を多めに配分し、「壁貫通型+広い浴槽」で成約を高める選択肢があります。他にも修繕箇所が多い場合は、バランス釜はコストを抑えて後継機に交換し、他の目立つ部分の改善に予算を回す選択肢があります。

このようなリフォーム予算の「選択と集中」という視点が、オーナー様へ納得感のある提案をするためには欠かせません。

当社が管理会社様からご依頼いただいた、退去後に浴槽の汚れが落ち切らずバランス釜も故障していたため、浴槽とバランス釜を交換した事例を紹介した「賃貸アパートの退去後浴槽とバランス釜の交換」記事も、あわせてお読みください。

空室対策・内見印象の改善:マイナス評価をゼロにする「守りの投資」

空室が続いている物件では、バランス釜の交換を単なる設備の更新ではなく、内見時の印象を改善する空室対策の一環として検討することもあるでしょう。

入居希望者によっては、バランス釜があるだけで浴室が古く感じたり、そもそも使い方が分からないため、マイナスのイメージを抱いてしまう可能性があります。そのイメージを解消するために、空室対策としては、バランス釜だけではなく、物件全体の見え方を検討する必要もあります。

たとえば、浴室の印象を改善しても、キッチンや洗面台、3点ユニットバス、洗濯機置き場などに古さや使いにくさが残っていると、物件全体の評価が大きく変わらないこともあります。

また、想定する入居者層によっても、優先すべき設備は変わります。単身者向けなのか、ファミリー向けなのか、家賃帯はどのくらいなのか、周辺の競合物件ではどの程度の設備が整っているのかによって、工事の優先順位は変わります。

そのため、空室率改善を目的に検討する場合は、「古いから交換する」というより、「内見時の印象をどこまで改善したいのか」「他の水まわり設備と比べて、浴室の優先度が高いのか」という視点で考えることも大切です

つまり、空室対策としてのバランス釜交換は、どちらかと言えば、内見時に「ここには住めない」と思われてしまう大きなマイナス要因を減らし、比較する他の物件と同じ土俵に立つための「守りの投資」といえます

「プラスアルファの価値」を追う前に、まずは入居のハードルとなっている「失点」を最小限にする。この視点をオーナー様と共有することで、工事の必要性や費用対効果がより具体的に伝わりやすくなります。

賃貸物件におけるバランス釜の主な交換方法

バランス釜の交換方法は、既存の設置状況によって変わりますが、主な交換方法は次のとおりです。

後継機のバランス釜へ交換:スピードとコストを重視する場合

既存のバランス釜の後継機に交換する方法です。

入居中の故障対応など、まずはお風呂を使える状態に戻すことを優先する場合に、最も現実的な選択肢です。

ただし、後継機への交換では、浴室内にバランス釜がある状態は大きく変わらないため、空室対策として浴室の印象を変えたい場合には、後継機への交換でよいか検討する必要があります。

壁貫通型給湯器(ホールインワン)へ交換:浴槽を広くし内見印象を改善する

既存のバランス釜を撤去し、浴室の外壁側に給湯器本体を設置する方法です。

バランス釜を丸ごと撤去して、その分だけ「幅の広い浴槽」へ交換できるため、内見時の印象を改善できます。既存の給排気口の穴をそのまま利用するため、外壁を新しく開口するような大がかりな工事を避けつつ、浴室内のスペースを限界まで広げたい場合に最も適した工法です。

ただし、壁の開口サイズや給排気の条件、周囲の離隔距離など、設置基準をクリアしている必要があります。建物の構造や外壁側の状況によっては物理的に設置できないケースもあるため、現地確認の上での判断が不可欠です。

屋外設置型給湯器へ交換:浴室外に給湯器を設置して水まわり全体を見直す場合

ベランダや共用廊下側の壁面、パイプスペース(PS)など、浴室外のスペースに給湯器を設置する方法です。

バランス釜を撤去して浴槽を広げられるだけでなく、給湯器の号数や配管計画を見直すことで、浴室以外の水まわりへの給湯もあわせて検討できます。そのため、浴室だけでなく、キッチンや洗面台など他の水まわりへの給湯もあわせて見直したい場合に、最も有力な選択肢となります。

ただし、配管の引き直しが必要になるため、建物の構造上、配管経路が確保できるかどうかの現地確認が不可欠です。

浴室全体のユニットバス化:物件価値を刷新し長期空室を解消する

他の方法が「既存の浴室を活かす」ものであるのに対し、ユニットバス化は「浴室を丸ごと作り変える」抜本的な刷新方法です。

退去後や入居前のタイミングで、浴室全体の印象を刷新したい場合は、ユニットバス化が有力な選択肢となります。

バランス釜だけでなく、浴槽、床、壁、排水まわりを一新できるため、内見時の印象を大きく改善し、築古物件の浴室にありがちな古さを払拭できます。単なる設備の更新ではなく、物件の競争力をアップさせる「リノベーション」としての側面が強いと言えます。

ただし、ユニットバス化は費用や工期が膨らみやすく、古い賃貸物件では玄関や階段などの搬入経路が狭く、物理的に部材が運べないといった制約も考慮しなければなりません。そのため、ユニットバス化を検討する場合は、浴室の広さだけでなく、建物内の搬入経路や設置条件も含めて確認する必要があります。

空室対策として検討する場合でも、家賃帯や募集計画、オーナー様の予算とのバランスを見ながら、費用対効果に見合った現実的な工事範囲を判断することが大切です。

一目でわかる!バランス釜交換方法の比較まとめと注意点

ここまでご紹介した主な交換方法について、目的・費用感・工期目安・空室対策効果を一覧にまとめました。

管理物件の現在の状況(入居中か空室か)や、今回の修繕で「どこまで改善を目指すのか」といったオーナー様への提案方針に合わせて、最適な交換方法を比較・検討する際の参考にしてください。

交換方法目的費用感工期目安空室対策効果
後継機への交換入居中の故障・早期復旧半日~1日
壁貫通型+浴槽交換退去後の印象改善1~2日
屋外給湯器+浴槽交換退去後の印象改善・給湯箇所追加中~高2日~
ユニットバス化物件価値の刷新4日~〇~◎

費用や工期を左右する「工事範囲」の考え方

上記の費用や工期はあくまで目安であり、実際には「どこまで手を入れるか」という工事範囲によって変動します。

たとえば、給湯器の交換に合わせて浴槽を新しくする場合は、既存浴槽の撤去処分費や新しい浴槽の据え付け費用、さらに周辺タイルの補修などが必要になります。また、屋外設置型へ変更する際に、キッチンや洗面所への給湯配管も新設・引き直しを行う場合は、その分工期と費用が膨らみます。

「給湯器単体の交換」なのか「浴室全体の印象改善」なのか、工事範囲を明確にすることが、オーナー様への正確な見積提出と、追加費用のトラブルを防ぐための第一歩となります。

「物理的に設置不可」という最悪の事態を防ぐために

ここまでご紹介したとおり、バランス釜には複数の交換方法があります。しかし、物件の構造(壁の材質や厚み)、給排気口の形状、ガスメーターの号数(容量)などの条件によっては、ご希望の交換方法が採用できないケースも少なからず存在します。

たとえば、給湯器の号数を上げる場合、既存のガスメーター容量では対応できず、ガスメーターの変更やガス会社との調整が必要になることがあります。

費用の問題だけで「どの方法でも選べる」わけではないため、オーナー様へ具体的なプランを提示される前に、まずは現地調査で「物理的にどの工法が可能か」を特定することをお勧めします。

「提案した後に工法が変更になり、オーナー様への説明をやり直す」といった手間を防ぐためにも、まずは現状の設置状況を確認した上で、実現可能な選択肢を整理することが大切です。

オーナー様への提案をスムーズにする「空室損失」と「投資回収」の考え方

バランス釜が空室の原因のひとつになっていると考えられる場合、管理会社様としてはオーナー様に改善策を提案する必要があります。

その際に大切なのは、単に「バランス釜を交換しましょう」と伝えるのではなく、どの程度の改善を狙うのかを整理して提案することです。

たとえば、浴室の古さは気になるものの、家賃帯や物件全体の状態を考えると大きな投資が難しい場合は、後継機への交換や必要な範囲の補修にとどめる判断もあります。

一方で、内見時に浴室の印象が明らかに弱点になっている場合は、バランス釜の撤去に加えて、浴槽交換や浴室まわりの補修まで含めて提案した方が、改善策として伝わりやすくなります。

さらに、浴室全体の古さが空室対策上の大きな課題になっている場合は、ユニットバス化まで含めて検討する必要があります。

つまり、提案時には次のように整理すると判断しやすくなります。

【復旧優先】 故障した設備を「使える状態」に戻す。コスト最小。
【印象改善】 バランス釜を撤去し、内見時の「失点」をなくす。費用対効果が高い。
【浴室刷新】 ユニットバス化などで「物件の強み」に変える。長期運用・リブランディング向け。

空室対策として考える場合、重要なのは「工事費を抑えること」だけではありません。

費用を抑えても、内見時の印象が変わらなければ、空室対策としての効果は限定的になるからです。反対に、物件の家賃帯や今後の運用方針に対して過大な工事になれば、オーナー様に提案しても通りにくくなります。

そこで大切になるのが、単なる「設備の交換費用」としてだけでなく、「空室期間にかかるコスト(機会損失)」と対比させた視点です。

仮に、バランス釜がネックで成約が3ヶ月遅れてしまうと、家賃が5万円の物件であれば「15万円の家賃収入」を失うことになります。

「空室のまま数ヶ月分の家賃収入がゼロになるリスク」と「早期成約のために設備に投資する費用」を天秤にかけ、収益性の視点で整理してお伝えするとオーナー様も判断がしやすくなります。

スムーズな現地調査・お見積作成のためにご確認いただきたいポイント

バランス釜交換のご相談をされる際は、以下のポイントを事前に業者と共有すると、現地確認や正確な見積りがよりスムーズに進みます。

空室か入居中か

入居中であれば、入居者様との日程調整や「お風呂が使えない期間」への配慮が必要です。空室であれば、他の原状回復工事と合わせた一括調査も可能になります。

今回の目的(故障対応か、空室対策か)

「至急直したい」のか「内見時の印象を上げたい」のかにより、ご提案の方向性が変わります。

浴室全体、または他の水まわりの修繕予定

バランス釜単体か、浴槽・壁・床まで含めたリニューアルか、あるいはキッチン等の他の水まわりも一新するか。全体の予算配分を考慮したご提案がしやすくなります。

ご希望の納期

すでに募集開始が決まっている、あるいは「まずはオーナー様への提案用に概算が欲しい」といった段階が分かれば、管理会社様のスケジュールに合わせた提案が可能になります。

まとめ

バランス釜は、築古賃貸において入居希望者に敬遠されやすい設備の上位ですが、見方を変えれば「改善の余地があり、効果が見えやすいポイント」でもあります。

空室対策としてバランス釜の交換を検討する際、大切なのは単に工事費を抑えることではありません。

・入居者様の不便や不安を解消し、内見時の「致命的な失点」をなくすこと
・「空室が続くことによる家賃収入の損失」と「早期成約のための設備投資」を天秤にかけること

この2つの視点を持って工事範囲を整理し、オーナー様が「経営判断」しやすく提案することがポイントです。

しかし、物件の構造や配管、ガスメーターの号数などにより、物理的に不可能な工法があるのも事実です。「オーナー様に提案した後に、工事ができないことが発覚した」という事態を防ぐためにも、まずは現地の状況を正確に把握することが大切です。

当社では、バランス釜の後継機交換だけでなく、壁貫通型給湯器への交換、浴槽交換、浴室全体の見直しまで、物件の状況に応じた対応を行っています。既存の協力業者様で対応が難しい場合や、オーナー様への提案前に工事範囲を整理したい場合も、お気軽にご相談ください。

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