2025年11月19日 | コラム

最近、「エアコンの2027年問題」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
しかし、問題の詳しい内容までは分からず、「対応が必要なのか?」「実際にどの程度影響があるのか?」と感じている賃貸オーナーの方も多いのではないでしょうか。
エアコンは入居者満足に直結する設備の一つです。そのため、特に、複数物件を所有している賃貸オーナーにとって、故障時のトラブルや空室リスクは避けたいところだと思います。
そんな中、2027年を境にエアコンをめぐる環境が大きく変わります。これまで当たり前だった“故障したら修理、修理ができない故障なら交換”という対応が通用しなくなる可能性が高まります。たとえば、これまで10万円で交換できていたエアコンが12~14万円になる可能性や繁忙期には1~2週間の工事待ちになるリスクがあります。
これらは単なる値上がりではなく、入居者の不満、家賃減額、そして退去という「賃貸経営の損失」に直結します。
でも安心してください。正しく理解し、事前に準備をしておけば、このようなトラブルは防げます。
この記事を読むと以下のことが分かります。
エアコンの「2027年問題」は、「①冷媒ガスの規制強化」と「②省エネ基準の大幅改正」という2つの変化が同じタイミングで重なることで起こります。
どちらか1つだけならまだしも、この2つの変化が重なることで、壊れたときに「修理できない、しかも新品が高い」という深刻な問題が発生する可能性があります。
エアコンが空気を冷やしたり温めたりするために欠かせないのが「冷媒ガス」です。冷媒ガスが漏れたり不足したりすると、冷暖房能力が落ちたり、故障したりします。
家庭用エアコンに使われている代表的な冷媒はR32やR410Aです。これらは「代替フロン(HFC)」の一種であり、2016年のモントリオール議定書改正(キガリ改正)に基づき、地球温暖化対策として生産量が段階的に減らされています。
具体的には、2029年以降は冷媒の生産量が大きく縮小されます。削減の基準年の消費量(2011年から2013年までの3年間の平均値)と比べて2024年以降は40%削減でしたが、2029年以降は70%削減となります。そして、この厳しい削減義務を達成するために、2029年に向けて計画的に生産量・消費量を削減しているのが現在の状況です。
その結果、以下のようなことが起きることが想定されます。
2027年に導入される省エネ基準の引き上げは、 「トップランナー方式」と呼ばれる省エネ制度に基づいています。
トップランナー方式とは、市場に存在する“最も省エネ性能の高い機種”を基準値に設定し、メーカーが数年後までにその基準を達成することを義務付ける制度です。エアコンはこの制度の対象で、2022年に新基準が告示され、約5年の移行期間が設定されました。
壁掛形は2027年度以降、壁掛形以外・マルチタイプは2029年度以降が目標年度として、達成が義務付けられました。この目標年度以降は、新基準を満たさない旧基準のモデルは、メーカーが製造・販売できなくなります。
その結果、以下のようなことが起きることが想定されます。
この2つの大きな変化が重なることで、冷媒規制でガス自体が不足するうえ、省エネ基準の切り替えによって古い機種の交換部品の生産や供給が停止し、古いエアコンが故障した場合、「修理不能」のリスクが格段に高まります。
特に製造から10年以上が経過したエアコンは、故障しても冷媒も部品も手に入らず、修理を諦めて高価な新品に交換するしかないという事態が多発すると予想されます。
2027年問題は、ただ「エアコンが高くなる」という単純な話ではありません。賃貸物件を運営しているオーナーにとっては、経営に直結する深刻なリスクを引き起こす可能性があります。
ここでは、特に問題になりやすい3つの点を整理します。
通常、エアコンが故障した際は、「冷媒補充」や「部品交換」などの修理で数日、新品への交換でも数日~1週間程度の対応で済みました。しかし、2026年から、これが難しくなる可能性があります。
・冷媒ガス不足や部品生産終了により、修理対応が不可能となるケースが増える
・故障が発覚した時点で「交換一択」になるにもかかわらず、高騰した新品エアコンの調達に時間がかかる
・規制切り替えを前に駆け込み交換需要が増加し、夏場の故障時に工事業者のキャパシティを超過し、「次の工事は2週間後」といった事態が起きやすくなる
これらが重なると、「修理を依頼してもすぐに直せない」という状況になり、特に夏場の冷房故障は、入居者の不満・減額交渉・早期退去といった賃貸経営で最も避けたいトラブルに直結します。
省エネ基準の引き上げにより新品価格が底上げされるため、交換費用は確実に上がります。しかし、本当の問題は「壊れたタイミングで緊急交換する費用」です。
・安いモデルがなくなり、本体価格が上がる
・材料費や人件費の高騰に加え、緊急対応費(割増料金)が発生しやすい
・一棟アパートや複数戸所有の賃貸オーナーは、同じ年に複数台の交換が重なるリスクがあり、キャッシュフローへの影響が大きくなる
「壊れてから対応」することで、計画していた費用よりも高い、予期せぬ緊急出費が発生しやすくなります。
冷媒不足と省エネ基準切り替えにより、2027年前後はエアコンの需要が急増し、工事業者への依頼が集中する可能性があります。
・入居中の部屋でエアコンが止まっても、工事の順番待ちで対応が遅れる
・内見時に古いエアコンが目立つと、新基準のモデルの物件に対し、印象ダウンにつながる
・対応の遅れや設備の古さが原因で、空室期間が長引く
「修理が遅れる」「古い設備が残る」という対応の遅れは、物件の印象悪化や退去リスクを高め、最終的に収益の低下につながります。
これら3つの問題を総合すると、2027年問題とは「修理できない」「新品が高い」「工事が遅れる」という、賃貸経営にとって最も困る状況が重なることを意味します。
だからこそ、壊れてから対応する“後手の設備管理”ではなく、計画的に備える“先手の設備更新”が重要になってくるのです。
2027年問題は、すべての物件に一律で影響するわけではありません。しかし、以下のチェックリストに当てはまる項目が多いほど、壊れてからでは「修理不能」や「費用高騰」になるケースが増えます。2026年頃までの計画的な交換を進めるための判断材料にしてください。
□ 製造から10年以上が経過している
メーカーの部品保有期間が終了している、または終了に近づいており、交換部品が見つからないリスクが高い。
□ 使用冷媒がR32やR410Aなどの旧型である
冷媒規制の影響をダイレクトに受けるため、2029年以降は冷媒ガス不足で修理が困難になる可能性が非常に高い。
□ 過去に冷媒補充を伴う修理歴がある
冷媒(R32やR410A)が漏れる故障は再発しやすく、2029年以降は冷媒ガス不足で修理が困難になる。
□ 夏場の冷えが悪い、冬場の暖まりが遅い
冷媒不足やコンプレッサーの能力劣化のサインです。故障の「予兆」と捉え、早めに交換を検討すると安心です。
□ 動作音が異常に大きくなってきた
モーターやコンプレッサーの劣化が進行しており、いつ故障してもおかしくない状態です。
□ 一棟アパートや複数戸を所有している
同時期に複数台が故障するリスクが高く、計画外の費用負担や対応遅れによるクレームが集中しやすくなります。
□ 築20~30年以上の物件である
古い設備は入居率に直結しやすく、内見時の印象ダウンにつながるため、競合物件より選ばれるためにも設備更新が必須です。
□ 都市部・駅近など、競合が多いエリアにある
設備の古さが入居決定の足かせになりやすく、設備の新しさが入居者募集で重要な訴求ポイントになります。
□ 物件が地方や郊外で、工事業者をすぐ確保できない
夏場の故障時に工事が長期間手配できず、空室リスクに繋がりやすいです。早めの計画的な交換が安全です。
以下のいずれかに該当する賃貸オーナーは、壊れるのを待つのではなく、2026年の余裕があるうちに交換計画を立てることが、結果的にトラブル防止やコスト節約につながります。
2027年問題への対策で最も重要なのは、“壊れてから動く”のではなく、“壊れる前に計画的に動く”ことです。ここでは、賃貸オーナーが取れる現実的な費用対策と、損をしない更新タイミングについて整理していきます。
前倒し交換というと、「まだ動くのはもったいない」と感じるかもしれません。しかし、2027年以降は、「壊れてから交換したほうが結果的に高くつく」可能性が極めて高くなります。
前倒し交換で避けられる、「緊急時の割増コスト」は以下の通りです。
10年以上経過したエアコンは、動いていても「いつ故障が顕在化するか」というリスクを抱えています。壊れる前に交換することは、将来の大きな損失を防ぐための「保険」と考えるべきです。特に複数戸所有者は、「1年のうちに3~5台が連続故障する」という最悪パターンを避けられるだけでも、前倒しの効果は非常に大きいと言えます。
賃貸経営では、「空室時の交換」がもっとも安く・早く済むタイミングです。以下のタイミングを逃さずに計画的に交換しましょう。
① 入退去時の空室期間
在宅調整や追加費用が不要。室内クリーニングと同時に作業でき、最も効率的。次の入居者へ「新品設備」を訴求できる。
② 春の閑散期(3月〜5月頃)
夏の繁忙期(6月〜8月)を避けることで、工事の予約が取りやすく、費用も安く抑えられる。地方・郊外物件では特に必須。
③ 一棟物件の「まとめ交換」時
複数台をまとめて発注することで、業者と値引き交渉がしやすくなります。本体の一括仕入れや工事日の集約でコストダウンが可能。
■ 地域や物件の状況によっては“早めの依頼”が必須
地方・郊外エリアや工事業者が少ない地域の物件では、夏場に工事が全く取れない状況が毎年発生しています。
2026年は駆け込み需要でさらに工事が集中すると予想されるため、交換を決めたら春(3〜5月)の閑散期に依頼を確定させることが、最も確実で安く済ませる方法です。
■助成金や省エネ家電の補助制度もチェック
自治体によっては、省エネ家電(エアコン)への交換に対し、補助金やポイント還元を行っているケースがあります。
・省エネ性能が高い機種ほど対象になる可能性が高い。
・申請は先着順のことが多いため、早期の情報収集が重要。
2027年以降は省エネ基準が変わるため、この補助制度が拡大・変更される可能性もあります。交換機種の選定と同時に、地方自治体や国の情報を確認しましょう。
新しい省エネ基準を満たしたエアコンは価格が上がりますが、その分、古いエアコンよりも格段に電気効率が向上しています。これは賃貸オーナーと入居者の双方にメリットをもたらします。
入居者のメリットは、電気代の負担が減ることです。そのため、入居者満足度が向上します。特に電気料金が高騰する昨今、入居者にとって大きな魅力となります。
賃貸オーナーメリットは、「新基準対応の高性能エアコン完備」と内見時や募集サイトで伝えることで、競合物件よりも早く入居者を決める、家賃を維持するための武器になることです。
新しい基準に対応したエアコン代は単なる出費ではなく、「入居率と満足度を高めるランニングコスト改善の投資」であると捉え直すことができます。
エアコンが故障した際、入居者からの連絡は管理会社に入ります。しかし、「冷媒ガス不足で修理ができない」という事態は、一般的な修理対応ではありません。緊急時の対応遅れを防ぐため、事前にルールを決めておきましょう。
・機種・年式情報の共有
管理会社に全ての部屋のエアコンの年式・型番を共有しておく。
・「交換ライン」の定義
「製造から10年以上」「使用冷媒がR32」「修理歴あり」など、オーナーとして修理ではなく交換を許可する明確なラインを事前に決めておく。
・緊急時の連絡ルール
夏場などの繁忙期に故障が発生し、修理業者の手配が困難な場合の代替策(応急処置、高額交換の見積もり取得など)をどこまで許可するか決めておく。
この準備をしておくだけで、オーナー不在時や緊急時でも、管理会社が迅速に動けるようになり、入居者への対応遅れを防ぐことができます。
2027年問題は、「修理できない」冷媒規制と「新品が高くなる」省エネ基準強化が重なることによって起きる、賃貸経営に直結する深刻な問題です。
エアコン故障がそのままクレーム・空室・急な高額費用負担につながるため、“壊れてから対応”ではリスクが大きくなります。しかし、計画的に動けば、この問題を「ランニングコストを改善し、物件競争力を高めるチャンス」に変えることができます。
だからこそ、まずは次の3つだけ押さえておけば十分です。
この3つを進めるだけで、2027年以降のトラブルの多くは回避できます。
2027年以降どうなるかよりも、“その前に何を準備しておくか”が、賃貸経営の安定を左右します。今すぐチェックリストを確認し、計画的な設備更新を始めましょう。
当社は賃貸物件の各種設備修理・交換、原状回復工事を行っております。また賃貸管理事業も行っていることから工事品質だけでなく入居者様対応もスムーズに行うことができます。エアコンの2027年問題について不安がある、管理会社から情報提供がない場合、お気軽にお問い合わせください。ご相談は無料です。